【第十六話】過去の真相と、レイの存在。
【シンside】
一旦頭の中で情報を整理してみる。
父さんは出産直後に母さんを殺したんじゃなく
母さんがいつかフォルテ家の者に殺されることが分かっていたから
母さんの体と魂を、俺に作り変えた。
そして、死人の魂を自らのエネルギーに変え続けるためにホワイトローズ郷を作り出したのではなく
俺を長く生かすために、死人の魂をエネルギーに変えていた。
レイが魂を俺の命として繋げられたのは、俺がフォルテ家だった母さんの魂を継いでいるから。
記憶が曖昧なのは、俺の記憶処理能力がキャパオーバーを繰り返して弱くなっているから。
...だいたい理解はしたが、情報量が多すぎる。
俺は普通の人間として育てられたし、ルカに拾われからもそうやって育ったから尚更だ。
...待て。
父さんが反逆者なら、どうして子どもである俺がアステルタの国王に?
「ルカ、フォルテ家から見たら俺は反逆者の子どもってことになるだろ。
なんで俺が国王になれたんだ?」
「私はグエンを堕天させた後、フォルテ家の者に
遭った出来事を全て報告した。
だがアステルタは元々フォルテ家と国王で政治が成り立っていた国だ。
それに、フォルテ家は神が全てだと崇拝していた。
...国王のいないアステルタなど微塵も興味ない。
あれらは国を見捨て、グエンがいるホワイトローズ郷に移り住んだ。
当然、アステルタ王国の治安は酷く悪化した。
神でなくても、国王は必要な存在だった。」
「それで、俺を国王として育てたのか?
...でも俺が父さんみたいになってたら、情とか関係なく殺すつもりだったんだろ。」
ルカは感情にも正義にも振りまわされてる。
確かに、こんな中途半端なやつに神なんて重い役割は向いてないと思ってしまう。
「お前の親父も言っていたな。
でもシンは、人間として強く育つと信じて...」
「...信じて、信じてって。
散々人に裏切られてきたはずなのに、よく人を信じようとするよな。」
別に、ルカは悪いやつじゃないのに
皮肉っぽく言い放ってしまった。
「...どうしてだろう。私もよくわからない。」
人間らしいのに、人間じゃない。
でもルカの選んだ道は、ルカなりに葛藤して選択した道なんだと理解した。
「もうひとつ、話さなければいけないことがある。
私はフォルテ家に神の代理と名乗っていたが、過去に神として選ばれた存在だとは教えていない。
...それは正解だったが。
魔王になったと分かっていながらも、過去に神だったというだけで執着する
醜い人間どもだと分かったからな。
本来、死人の魂は天界に帰ってくるのが掟だ。
死人の魂を帰さず、自ら作り出した子を生かすエネルギーとして変え続けるため街を作ったグエンも
それを見てみぬふりしてアステルタを捨てたフォルテ家も
全て終わらすために
お前の故郷も、レイも、犠牲に...」
ルカはまた俺に謝ろうとしている。
「...もういい。
過ぎたことは。どうしようもないだろ。」
過去の話を長々とするだけじゃ、今の問題は解決できない。
「俺に謝るくらいなら、レイに会いに行ける方法を教えてくれ。」
作り出された記憶の中でも、レイとはちゃんと会話できてた。
それに、俺が現実での記憶を思い出すと、必ずレイにリセットされて現実の世界に戻される。
「...思ったんだよ。
記憶の中で俺もレイも自由意志があるってことは、自分から会いに行けるかもしれないって。」