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【第九話】過去と今

14年前の7月19日



ホワイトローズ郷が滅びた日。


街のみんなも、父さんも、みんな死んだ日。




ルカ曰く、当時俺は森の中で火傷を負った状態で気絶して倒れていたらしい。


ショックのせいなのか、ホワイトローズが一面焼け野原になってからルカに拾われるまでの間の記憶がない。



俺はルカに拾われてから、今の親父の家に連れて行かれた。


目が覚めたあとに聞こえてきたルカと親父の会話は、今でもよく覚えている。




『⸺の子を育てると?』


『ああ。』


『それがどういうことか分かってるよな?』


『...責任は全て俺が取る。』


『...分かった。だが、全ては任せられない。

あの子は今、住む家もない。

しばらくは私の家を住処にしてくれ。』


『...感謝する。』




『しかし、あの子が父と同じ道を辿るようなら


⸺そのときはお前が殺せ、ルカ。』




俺が物心ついたときから、母さんはこの世にいなかった。


父さんは男手ひとつで俺を育ててくれた。


毎日のように飯を作ってくれて、俺が悪いことをすると叱ってくれて、そのうえとても優しかった。


申し分ないほど、感謝していた。




だが、父さんは毎日のように、どこか苦しそうな表情をしていた。


理由を聞こうとしても、お前は何も知らなくていい。と何度も拒まれてしまった。




父さんが死ぬ間際のことは、記憶にない。


だが、父さんが倫理に反するようなことをしたとは到底思えなかった。




⸺あの子が父と同じ道を辿るようなら


この言葉の意味は、今でも理解できない。






『...目が覚めたのか。あれだけの火傷を負っていたのに、すごい生命力だ。』




目覚めてから初めてルカに言われた言葉。


親父とはあまり会話を交わすことはなかったが、俺を家に住まわせてくれた。


ルカも親父も


俺が真っ当な人として生きれるように、剣術や学問、倫理や道徳をたくさん教えてくれた。






...今考えると、恵まれすぎているな。


かつての故郷が滅びてからも、俺は何不自由なく大人になった。




ルカは泣きながら俺に抱きついている。


「本当に、記憶が戻ったのか...」




ルカの言葉を聞く限り、俺は一時期すべての記憶を失っていたようだ。




...俺は記憶を失ったまま過ごしてたのか?


だが、いつから?




「俺、いつからこんな風になった...?」




「...シンを拾ったときから、ずっとだ。」






...え?

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