何度も繰り返される、夢の中で。
こんにちは、あいなしです。
初投稿のため、至らないところもあると思いますが
今まで頭の中で作り出してきたストーリーやキャラを
自分なりに頑張って書き出してみました。
よろしくお願いいたします。
アフターイメージ・オブ・メモリー
Afterimage of Memory
それは、春の終わりの出来事だった。
満天の青空のような、君の澄んだ青い瞳に見惚れてしまった。
それから俺は、君を探し続けた。
たとえ、君が空を舞う蝶になったとしても。
君の存在が、
世界から消えて無くなったとしても。
【第一話】
『存知あげませんね...』
皆、口を揃えて彼のことを知らないという。
「そうか...」
俺はため息をつきながら肩を落とす。
夢、だったのか?
彼は確かにこの世界に存在していた。
皆も彼のことをこの国の王として慕っていた。
澄んだ青い瞳も
白く美しい髪も
手の温もりも
全てが嘘だったのだろうか。
俺は空を見上げる。
今日は雲一つない青空だ。
住民の聴き込みを終え、王邸に戻ると、俺の仕えのメイドが小走りでこちらに向かってくる。
「シン様!!おかえりなさいませ!!」
そう笑顔で出迎えたのは、仕えているメイドの中でも俺が気に入っているアレーナだ。
「おう、ただいま。」
頭を撫でると、子どものように無邪気な笑顔で俺を見つめてくる。
「シン様、本日も聴き込みをされていたのですか?」
「まあな。手がかりはなんもなかったけど。」
「そうですか...シン様、ここ最近ずっと落ち込まれているようなので、心配です....レイ様という方が見つかれば、元気になりますか...?」
アレーナも、他人事のように言うのか。
「...うん。そう、だな。」
どう返答すればいいのか分からず、無愛想な相槌を打つしかなかった。
俺は着替えて部屋に戻り、ベッドに転がった。
「...俺ひとりにはもったいない広さだ。」
自部屋は、王族のものが快適に過ごせるような構造になっている。
だが、本来は俺の部屋じゃない。
ここはレイの部屋だった筈、なんだ。
「なんで、いなくなったんだよ。」
俺は腕を目元に乗せ、いろいろと考えてみる。
1年前、レイはアステルタの国王になった。
国王として申し分ないほど、彼は優しかった。
毎日食料の確保や住居の整備、貿易の手続き。
送られてくる文やお知らせは1通も欠かさず読み、常に国のことを一番に考えていた。
貧民には毎日大量の食べ物を支給し、さらには簡易的な住居まで用意し、時には自ら市民外に出向き状況を確認する。
そんなレイのことを、皆は自慢の国王様と慕っていた。
俺は当時アステルタ王国の騎士団長だった。
元々喧嘩や揉め事ばかり起こしていた俺がなぜたったの数ヶ月で騎士団長に任命されたか、今でもよく理解できない。
でも俺が拾われた当時、レイはなにか引っかかることを言っていた、気がする。
考えている内に、瞼が重くなる。
俺は金稼ぎの為に他の不良共と争い、金になるものは一つ残らず巻き上げる。そんな生活をしている。
今日は路地裏で不良共を殴り散らかして全員の財布を抜き取り、近くにあったパイプ管の上に座り込んでいた。
「...銀貨100枚と金貨1枚か。」
こんな額じゃ、1週間の食費にしかならない。
「俺なんかにまともな仕事があるのだろうか。」
そう思った矢先、路地裏で誰かの視線を感じた。
俺は周囲を警戒した。
「⸺ここにいたんだ...ね。」
俺は澄んだ青い瞳に
会ったことがないはずなのに
なぜか懐かしく、愛おしく感じるその声に
目を奪われてしまった。
俺は噂に聞いていた身なりや雰囲気から
この国アステルタの国王だと気づく。