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76 振り分け

 翌朝──。


「鍛錬前に、拠点魔族の振り分けを行う!」


 朝食も終わり、毎日の鍛錬ルーティンが始まると誰もが張り切っていると、ファランが唐突にそう宣言した。

 これに、面と向かって言われたリドゥたちは「?」と首を傾げながら、各々清聴の姿勢に移行する。


 これに「はい」と僕は挙手してファランに問う。


「突然何を振り分けるんです? 動植物系統別にとか?」

「それもあるの。モケスケやアウネとかの身体は元が植物由来故に燃えやすいからな。だが大方区分できとるそれよりも優先すべき確認事項がある。はいロイスト」


 突如指名されながらもロイストは「ふーむ……」と物思いに耽り、数秒してから口を開く。


「…………戦闘能力ですかね? 思えば、昨日の対ジユイを想定したファラン殿との戦闘訓練も、戦える者はとにかく参加と、連携の相性等を考えておりませんでした」

「正解! お主は本当問答に都合がいい!」

「そこは適してると言っていただきたい」

「黙らっしゃい!」


 やや不満気なロイストとモケスケ呼びに腹を立てて飛びかかる風導たちを跳ね除けて、ファランは説明を再開する。


「ロイストが言い当てたように、それぞれの能力の組み合わせを考えねばならぬ。例えばレッドが居る場にサリーのガキンチョが火をぶっぱなしたって問題ない。レッドの体毛は不燃性があるからの」

「……あー、なるほど。言いたいことが分かりました」

「リドゥは気付いたそうじゃの。ではそれが何か言い当ててみせよ。はいバカ、じゃないわゴウ」


 酷くない!? とゴウは動揺しながらも考えるが、うんうん……と唸ってばかり。考えるよりも動いてみるの彼には難しいか、熟考して導き出した答えは──、


「! 火を弾くサリーをレッドの火が巻き込んでも大丈夫!」

「逆にしろって話じゃないわバカ! 火に弱い植物組を風下には置けんから、そうならない為の魔法・能力相性の善し悪しを考えようって話じゃバカ!」

「バカバカ言い過ぎィ!!」

「じゃあアホ」

「結局罵倒してる! ひぃん……!!」


 いじられまくったゴウは泣きべそかいて妻のサイカに慰めてもらう。声をかけようかと思ったが「あ、お腹蹴った音する」と一瞬で明るくなっていた。全くもって単純である。


「……話を戻そう。今言った通り、お主らが自滅しない組み合わせを考える為にも全員の能力を把握し、区分けせねばならぬ。なのでその為に先ず戦闘員・非戦闘員で分けるぞ」

「となればサイカさんとかは非戦闘員ですね。当日は拠点に居てもらうとして、攻め込まれた場合は何処に避難してもらいましょう?」

「それは後で考えい。兎にも角にも調査じゃ!自分が非戦闘員と思う者は螺旋階段側に寄れい!」

「「「うーい」」」


 ということで、リドゥやレッドといった戦闘員は拠点入口側に立ち並ぶ形で、大雑把に分けられる。パッと見た感じでは戦闘員・非戦闘員で6:4の印象だが……──、


「風導。お主らはコッチじゃ」


 と、非戦闘員側に移動していた風導をファランは腰に抱えて、戦闘員側に加えたのである。これには当人たちだけでなく周囲もビックリだ。


「ちょいとファランさん。風導はあくまで風を吹かす以外は持ち合わせておりませんよ? 刃牙獣の時だって基本サポートでしたし」

「そのサポート要員じゃ風導は。イガマキのマキビシやレッドの炎を風で拡散なんて手も使えるじゃろがい」

「あぁ、なるほど。でしたらアイツもコッチだな。おーい……!」


 僕もファランに倣い、一部魔族を戦闘員に異動させた結果、比率は7:3になった。思った以上に潜在能力の高い魔族は多かった。


 これで戦闘員か否かの振り分けは完了。非戦闘員には当日留守番か若しくは救護班に属してもらう運びとなった。


「さて、ファランさん。二分化は済みましたが、今度こそ能力相性の把握ですかね?」

「うむ。といっても、次は戦闘員で四分割じゃがな」

「更に細分化するんですか? 魔法の有無なら分かりますが、もう二つは何です?」

「言語の有無じゃ。リドゥは風導の言いたいことをある程度把握できとるが、他はそうもいかん。後ろからモケモケ叫ばれて何じゃ我ェと振り返る時間が惜しい」

「「「あー……」」」


 それならレッドのように喋れる側が「右斜め後ろから刺客!」と教えてくれる方が戦場での咄嗟のコミュニケーションも円滑に進む。そう思うと言語云々も重要だった。


「時間が惜しいから一気に進めるぞ。儂が指定した場所へ移動しとくれ」


 ということで、各々『焚き火の間』の四方にバラけてみる。


『喋れる。魔法・能力有り』

 ……僕、レッド、イガマキ、グリス、ロイスト、アウネさん、サリー、他複数名。なんだかんだ四方で一番多い。


『喋れる。魔法・能力無し』

 ……ノイジー、ゴウ、他複数名。純粋な身体能力勝負の面々だ。


『喋れない(略)有り』

 ……風導、フンコロガシのコロスケ、幻霧蛙タクアン、グラムシ、スライム、他複数名。スライムは僕が見出した元・非戦闘員だ。


『喋れない(略)無し』

 ……実は一番少ない。こうして見ると、なんやかんや言語を得た魔族がそれなりに多いのだと改めて認識する。


「……ん? ファランさん、ちょっと」

「なんじゃリドゥ」

「コロスケ、有り側なんですか? 確かに彼が作る肥やし玉爆弾は強いですけど、無限に作れる能力じゃないですよ」

「……あぁ、そういやお主は死にかけてた故知らなんだか。こやつをよく見てみい」

「は、はぁ……」


 言われるがまま、コロスケを見てみる。

 が、身体が一回り大きくなった以外に変わったところはない。

 と、首を傾げそうになったところでファランの言い分を理解する。魔族化に伴って変化したところを見ればいいのだ。

 ならば外見以外にも何かあるはずだ。そう思い至り、目に魔力を纏って凝らしてみれば……──、


「……あ」


 コロスケの体内には、魔力が宿っていた。


「気付いたな。こやつ、魔族化と共に魔法覚えとるぞ。今日まで特に明かしとらんかったらしいが」

「フンコー」


 コロスケは「言い忘れてたスマソ」と言わんばかりに額に片手を置く。これは驚きだ。


「え、え? どんな魔法なの?」

「ならやってもらうとするか。コロスケ、戦闘組の行き先は二龍大戦跡地! 回復液を忘れるな!!」

「二龍大戦跡地?」


 一体何をさせる気だ? なんて回復液を持ち出していると、コロスケは後脚で立ち上がり……──、


「フーン……チョエーー!!」


 前脚を挙げて鳴いたかと思った次の瞬間、僕たちは二龍大戦跡地に立っていた。

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