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68 サラマンダー②

「ボオゥッ!!」


 襲いかかってくる炎に対処しながら、レッドは「リドゥ!」と聞いてくる。


「コイツがモッチャレ暴走の元凶か? 違かったら骨折り損だぞ」

「多分合ってる! 天井の鍾乳石が刺さってたのと材質一緒だった!」

「ならどうやって体内まで刺したと思う? 天井に誘き寄せて大口開けたところを悠長に落としたのか?」

「……どうだろうなぁ?」


 サラマンダーが鍾乳石を落とせる程の火力を持っているのは間違いないが、レッドの考察はどうも腑に落ちない。モッチャレが頭に血が上りやすいのは先の戦闘で明らかだが、鍾乳石の天井なんて露骨な罠に引っかかるような猪突猛進とは思えないのだ。


「違う気がするなら一時撤退も手だぞ。縄張りに侵入(はい)ったのはコッチだし、向こうも今なら聞き入れるかもしれない」

「じゃあ頼んだ! 君モンスターだったし!」

「了解」


 レッドは回避を止めて、何もしませんよ──と言わんばかりに両腕を広げながらサラマンダーの前に出た。


「おぅい、少し話し合わ── 」

「ボウッ!!」


 レッドの上半身は炎に包まれた。


「駄目じゃん!!」

「駄目だったな」


 肩を叩きながら何食わぬ顔でレッドは戻ってくる。炎を扱うレッドドッグなだけあって体毛が少し焦げた程度で済んだのは幸いだったが……──、


「完全に敵対しているな」

「何か逆鱗にでも触れたかな? 本当に近付いただけなんだけど……あ」


 炎に隠れて気付けなかったが、よく見るとサラマンダーは閉眼したままだった。それなのにピンポイントに炎を飛ばしてこれるということはもしかして……──、


「レッド。アイツ寝てない?」

「何? ……ホントだな。どういうことだ?」

「もしかしてだけど、寝相じゃないかなぁ?」

「寝相?」

「そう、寝ゾッ!」


 僕は消滅し損ねた炎を咄嗟に躱しながら話を続ける。


「昔の友達で、採掘付き合いで一緒に寝泊まりしたことあってさ。ソイツの寝相がまぁ酷かったの。邪な気持ちで近寄ったら寝ながらぶん殴ってくるってやつで、僕以外は皆餌食になってた」

「つまり……精神的縄張り(パーソナルスペース)か」


 レッドは即座に言いたいことを理解してくれた。話が早くて助かる。


「そう。恐らくだけど、サラマンダーのそれは滅茶苦茶広くて、僕はそれを侵しちゃったんだ。しかも眠った状態だから制御が効かない。眠っている間の自動攻撃状態に陥ってるわけだ」

「となると、真相を確認するにも撤収するにも、一度起きてもらうしかないんだな?」

「そうなる。ごめんネェッ!」

「謝るのは後にしろ。それよりどうやって起こ す? ある程度耐えれる俺が殴るか?」

「それなんだけど、無理に起こす必要はないんじゃないかな」

「というと?」


 リドゥはサラマンダーを改めて視認する。


「サラマンダーを膜のように囲ってる炎。攻撃の要っぽいあれを破壊すれば一旦大人しくなると思うんだ」

「なるほど」

「それでだけど、ちょいと盾になってもらっていい? レッド、発火耐性あるっぽいし、出来るだけ近付いたところを僕が飛び込んで『消滅』で一気に削る。そうすれば、流石にサラマンダーも異変に気付いて起きるはず」

「おう。分かった」

「じゃあ行こう!」


 二人はサラマンダーへ突っ込んだ!


「ボボゥッ!!」


 炎は容赦なく二人を襲ってくる。しかし想定通り、先行するレッドには「熱いな」程度で、勢いが激しい中、少しずつながらも距離を詰めていく。


「ボゴゥッ!!」


 ならばと炎は天井に伸びて、鍾乳石の根元を燃やし溶かして落としてくるが、それを僕は「させるかっ!」と手を伸ばして『消滅』させる。盾となったレッドがジリジリと炎の中を進み、背中にしがみついている僕が鍾乳石を防ぐ。二人はまさに『進防一体』だった。


 サラマンダーとの距離もジャンプすれば届くところまで来る。もうひと踏ん張りだ!


 ──ジュワァッ!

 と、意気込んだ次の瞬間、サラマンダー後方の鍾乳石が落下したのをレッドは見逃さなかった。

 何故に的外れな鍾乳石を落とした? 何か意味があるはずだと注目していると──、


 ──ボンッ!

 炎は『爆炎』と化して鍾乳石の軌道を変えると、更なる爆炎でこちらの顔面を狙って飛ばしてきた!


 レッドは直感する。リドゥの言っていたモッチャレの体内奥深くに刺さっていたトゲの正体はこれか!


 自分が躱せばリドゥに当たる、だが全身で回避すれば背中のリドゥが炎の餌食。確定致命打を直感したレッドは瞬時に思考を回し、最適解を叩き出す。


「リドゥ顔面に『消滅』!」

「ッ!」


 咄嗟に叫びながら首を傾ければ、リドゥは目視するよりも速く両手を顔面に構え、鍾乳石を『消滅』させた! 上手いことやってくれた。


「何事!?」

「いいから行けッ!」

「お、おすっ!」


 僕は訳も分からぬままレッドの背中から飛び出し、迫ってくる炎を消滅させながら膜に手をかざした!


 そして、程なく炎の膜は崩壊し、サラマンダーが露わになった。


「ぺそっ……」


 途端、サラマンダーは力無く地面に落ちた。

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