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64 モッチャレ③

「リドゥ!」


 地面に五点着地未遂を決めて悶えてるところへゴウは駆けつけてくると、そのままリドゥを脇に抱えてその場から距離をとった。


「助けてくれてありがとうおまえ良く無事だったな?! どうやったん?!」

「よく分からん! なんか棒状の物を掴めたから、それ足場にして肉壁掘り進めてきた!」

「足場って何?! 魚の骨でも刺さってた?!」

「ネコ科じゃねぇんだぞ! ……今なんて言った?」

「助けてくれて──、」

「後半部分!!」

「魚の骨でも刺さってた?!」

「骨……?」


 僕はモッチャレワームを見上げる。

 掘り進めてきた箇所は既に塞がっていたが、モッチャレは依然として悶え叫んでいた。まるで未だ何かに苦しめられて……──。


「あ」


 ここで僕はパチン、と指を鳴らした。


「……骨だ!」

「ほ、骨?」


 不思議がるゴウに、僕は指示を飛ばす。


「ゴウ、僕をこのままアウネさんの元へ連れていってくれ! そしたらレッドとロイストたち力自慢、それと神経拘束型魔族をありったけ呼びに行ってほしい! 後は──!」


 ここで背後からモッチャレが地面に潜った轟音が鳴り響く。大音量に僕の声なんかはかき消されそうになったが、それでもゴウは耳を傍立てて上手いこと聞き取ってくれた。


「お、おう分かった! しっかり掴まれ!」

「頼んだ!」


 僕は脇に抱えられたまま、樹精霊・花人のアウネさんの元へ駆け込む。

 広場から外れた場所に居た彼女は「空飛ばれちゃツタ届かないですので」と、樹精霊・風導たち非戦闘員として、ファランにシバかれた魔族の回収・回復等の後方支援に徹していた。


「あらリドゥさま、脇に抱えられて。脚を怪我したのですか? でしたら直ぐにズボンを脱がして──、」

「残念ながら違います」


 相変わらずの淫猥(はっちゃけ)発言を切り捨てながら僕は地面に下ろしてもらい、アウネの前まで歩み寄ると、広場のモッチャレを親指で指し示した。


「アウネさん、ロープというか植生のツタを生成できますよね? それが可能な方々をありったけ集めて、なるだけ長く大量に生成してもらいたいです。試したいことがあります」

「あらま。……別に構いはしませんが、私、非力ですよ? 体重だって軽いですし、力負けして引っ張り飛ばされるのがオチかと……」

「そこはロイストたち力自慢にフォローしてもらいます。今ゴウが呼びに行って──、」

「主よ!」


 と、そこへ前線に復帰していた牛頭・ロイストが駆け込んできて片膝をついた。


「ただいま参上しました! レッドと他の力自慢も呼びかけ合いながら集まる次第で、ゴウは拠点へ向かっていきました!」



 確認したいことも全て喋ってくれてありがたい。とかロイストが説明してる間に「なんだリドゥ」とレッドもやって来て、拾ってくれていた『滅喰龍の角槍』を渡してくる。


「よし! それじゃあ作戦を指示する! 時間的に一度しか話せないからよく聞いてくれ!」


 僕は地響きが騒々しい中で、なるべく端的に作戦内容を伝えた。

 するとどうだろう。懸命に耳を傾けてくれていた魔族たちは、当然ながらみるみると顔が怖ばり、青ざめていったではないか。


「危険過ぎます主よ! 失敗すれば命の保障はありませんし、こちらからの救出も困難! どうかお考え直しを!!」

「え? リドゥさま、もしやそういう癖に興味おありで? じゃないとそんな博打行為に挑むとは到底思えませんが……?」


 案の定ロイストは再考を要求してきて、アウネさんは心配しながらも、いつも通りしょうもない下世話へ洒落こもうとする。この下らなさが「それでも!」と即強行したがる僕のテンションを落ち着かせるのにちょうどいいが、それでも僕は強行せんと説得する。


「今日限りの癖としますよ。博打なのは違いませんが、生命を張る分、見返りも大きい。なんならモッチャレをワンチャン落ち着かせられます」

「し、しかし……」

「心配されるのは重々承知です。ですが……、僕の憶測通りであるなら、僕は僕らの生命の為に、アイツの生命を奪いたくない。だからどうか力を貸してください!」


 僕は魔族たちに頭を下げた。話途中で合流してきた仲間から「なんのこっちゃ?」と聞こえてくるが、皆が首を縦に振ってくれるまでこちらは頭を下げる所存だ。


「リドゥ」

「ん? んぅッ……!!」


 不意に名を呼ばれるなり僕は前のめりにふらつく。レッドに背中を叩かれたのだ。

 レッドは既に、滅茶苦茶長く生成されたツタを、肩に巻いて担いでいた。

 彼はツタの先端をロイストに渡しながらこちらへ一言。


「駄目だったら奪う覚悟はあるな?」

「! ……あぁ!!」

「なら、堂々構えてろ」

「……だね」


 僕は顔を上げて、魔族の仲間に──、特に作戦を不安視しているロイストとしっかり目を合わせた。

 そして三秒経った頃──。ロイストは根負けしたように息を吐くと、自身の心臓部分を叩いた。


「……分かりました、私も腹を括りましょう。全力で作戦を遂行すると誓います! 皆も異論無いか?!」

「「「異論無し!!!!」」」

「ありがとう! ……という訳だから、後から来るのには皆んなから伝えてくれ!!」


 僕はアウネさんからツタを受け取りながら戦場に再び躍り出る。


「作戦開始!!」

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