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61 ファランpresents対ジユイ向け鍛錬②

「キチイイィイイィィイイーーーー!!!!」


 この世の終わりみたいなグラムシの悲鳴を聞きながら真っ直ぐに落下するレッドは火吹き棒の尖端位置を定める。予想着地地点は惜しくもファランの頭部から逸れて『鍛錬終了条件・眉間への攻撃命中』を直ぐ果たせそうにはないが、上半身を狙えるだけ十分だ。


「ンッ!!」


 俺は落下の勢いを利用して、火吹き棒をファランの鱗と鱗の隙間に挿し込んだ!

 爪と指の間に針を刺したも同然の攻撃にファランも堪らず「痛ぇ!」と声を上げた。ここで一気に畳み掛ける!


 俺は「魔法解除!」と命じて、己の爪を鱗に引っ掛けながらファランの長い身体を駆け登っていく。ツルツルした身体だったら対抗の余地なかったが、爪を引っ掛けられるなら上は目指せる!


 これには天下の荒天龍も感心の模様だ。


「及第点じゃレッドよ! 儂の身体にしがみついてみせるか! ではこれはどうじゃ?! カァッ!!」

「っ……!?」


 ファランから放たれる無数の突風を俺は紙一重で回避する。

 あくまで吐息であって直接的なダメージがない分、自身の身体が傷付く心配はないからと容赦なく次々吐き出してくる。いくら素早く小回りが効く俺でもしがみついている手前対処しきれない。


「ッ!!」


 爪を鱗に引っ掛け損ねる。突風に煽られた衝撃で遂にスカしてしまった。


「おっと、いかんいかん」


 しかもファランは二度も掴まれまいと身体を畝らせ俺から遠ざけた。しっかり警戒されてる。


 ならば──、とノイジーとグリスを探すも、二人は見つけたときには竜巻に呑まれて「「あばばばば!!」」っていた。二人に頼るのも叶いそうにない。


「はぁ……」


 仕方ない、やり直しだ。同じ手は通じないだろうし、また新しい手段を考えないと……。

 とりあえず、先ずは落下の衝撃を和らげるのに注力するとしよう。


「グラムシ、重力反転できないか?」

「キチー!」

「え、無理?」


 即答に思わず面食らう。参った。これは想定外。

 当てが外れたその途端、地面のシミになる自身の姿が脳裏に浮かぶが直ぐに振り払う。今は最悪を想起するより打開案を考えるべきだ。

 しかし、これが上手いこと思いつかない。せめて無理やり連れてきたグラムシだけでも無事に帰したいが……──。


「ぎゅめー!」


 と、思考に耽ったその瞬間、他の仲間の悲鳴と一緒に、付近に上昇気流が発生した。

 ……そうだ。上昇気流が収まるタイミングに合わせて飛び込めば、落下速度を多少なり落とせるんじゃないか? それなら落下時の衝撃もある程度は相殺できる……はず。


 ……やるだけやってみるか。


 俺は落下を続けながら、空を掻き分けるように手足を動かした。

 イヌカキ、開始!


 ◇ ◇ ◇


「およ?」


 及第点に到達したレッドを一時戦線離脱させたところで、ファランは幻霧蛙のタクアンが見当たらないことに気付いた。

 また『幻霧』で雲隠れを試みているらしい。風に吹かれれば解けるというのに懲りないヤツ!

 まぁ、いい。ただ『隠れるだけでない使い道』に辿り着くまで何度でも吹き飛ばせばいいことだ。次いでにそろそろリドゥにもちょっかい出し──、


「ん……?」


 ここに来て儂はキョロキョロと地上へ目を凝らす。あやつ何処行った?

 もしやタクアンと一緒に隠れているのか? あやつからすれば一秒でも加工時間を稼げるなら藁にも縋る思いだろう。

 だが、対策としては『23/100点』。的確に吹き飛ばしている周囲の皆を観察していれば、付け焼き刃の隠れ蓑にもならないのは重々承知のハズだ。それに、


「──視力ばかりに頼る儂ではないぞ」


 魔族たちを相変わらず吹っ飛ばしながら両目を魔力で覆う。本来なら一々集中させなくても感知できるものの、気配絶ちに特化しているタクアンの『幻霧』ばかりはそうもいかない。故に隠れられると面倒くさい。

 が、目に纏ってしまえばどうってことはない。その状態でザッ──と地上を見下ろせば、二つの魔力が風を起こしてない岩の影に留まっていた。


「そこかーー!!」


 儂はその箇所を吹き飛ばした。


「あら?」


 ──が、誰も出てこなかった。

 見間違えたのだろうか? と再び目を凝らすが二つの反応は変わらずあった。では何故姿を現さない……?


「……あ」


 儂は一秒の熟考の末、ひとつの可能性に辿り着くと、水球を吐き出してぶつけてみた。

 すると、岩の表面が溶けたと思えば、地面に埋まって固定された滅喰龍の角が出てきたではないか!


「ほう、自力で見出してみせたか!」


 これは一本取られた! リドゥとタクアンはちゃんと『隠れるだけでない使い道』を発見していた!

 滅喰龍の角はこちらの力を持ってしても簡単に壊せない耐久性を備えている。それを利用すればいいと二人は気付き、地面に埋めて固定式の盾代わりにすると、風で解除されないように水でしか洗い流せない『幻液』で化かしていたのだ!

 そして、当人たちはというと──、


「よっしゃ出来たァ!!」

「ゲゴッ!!」


 地面がボコッ──と盛り上がったかと思えば、地中から人間サイズに加工された『滅喰龍の角槍』を携えたリドゥが姿を現した!

 しかも持ち手を覆い保護するカバー付き! 自身も地中に逃げていたのはツッコミどころだが、こちらを出し抜いてみせた事実に儂は高揚が止まらない。


「及第点じゃ二人とも! リドゥの鍛錬参加を認める! 儂に一撃入れてみせよォ!!」


「……すぅううう──、」


 リドゥは空に浮かぶファランを見据えると、大きく息を吸って──、


「よろしくお願いしまァァッす!!!!」


 ファランの期待に応えるように、参戦を宣言した!


 ──次の瞬間、地面がズズンッ……! と大きく揺れた。

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