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60 ファランpresents対ジユイ向け鍛錬①

「「「どぅぎゃああぁあぁあーーーー!!」」」


 一方──、件のリドゥは仲間たちと共に、ファラン主催のハチャメチャ修行に見舞われていた!

 魔族の皆を次々突風で打ち上げながらファランは激を飛ばしてくる。


「ほらどうしたお主らァ! ちっとも反撃できておらぬではないか!? そんなんでジユイに立ち向かうとは片腹痛いぞ!!」

「そんなこと言ったって飛んでるのをどう攻撃しろってんだぶげぇぇえぇええ!」

「ジユイは過去に出会った際、創意工夫して儂に乗っかってみせたわ! その創意工夫は自ずと導き出してみせろ!」

「その創意工夫を考える暇がなべぇえ!」


 ファランは攻略のヒントは出してくれるものの、最低限しか与えずに片っ端から魔族を回復待ちにしていく。自力で最善へ辿り着くのに意味があるのは分かるが、あまりにも攻撃が激しくて攻略の『こ』にすら届いてないのが現状だった。あれでは鍛錬終了条件『ファランの眉間に一撃入れる』どころではない。


「お主もぼんやりするでないわァ!」

「どわっさあ!?」


 しかも、現在進行形で武器加工中のこちらにもちょくちょく攻撃を飛ばしてくるではないか! 触れれば体力・魔力を奪われる呪いで加工図の下描きにすら難航していたというのに油断も隙もない!

 更に何が嫌かって接触型の呪いだから、ファランの攻撃回避の度に持ち運んでは息が切れることだ! 故に時折回復液で無理くり補充しなければ魔力枯渇でやってられない!

 とはいえ、気が急けばまた下描きからやり直しだ。実際避け損ねた攻撃に吹き飛ばされて一回振り出しに戻った! 角の端っこから削ってる分まだ余裕はあるけれど、いつまでもやり直してれば消費するばかりだ!


「ほら、折角の角も益々小さくなっとるぞぉ?! チンタラしとらんで早う加工してみせい!」

「つーか、寄越した物ごとぶっ飛ばそうとするんじゃないですよ! いくら簡単に壊れる代物じゃないからって!」

「儂はそいつ嫌いじゃあ!!」

「大人になれよ!」


 だが、彼の言う通り早いとこ何とかしなければ。といっても加工の時間を確保するのにどうやって猛威を掻い潜る?


「それはそうと見つけたぞコノヤロー!」

「ゲゴおおぉお!!」


「ッ!?」


 ファランの突風が吹き荒んだ先を見ると、二足歩行と化した幻霧蛙のタクアンが霧散した中で慌てふためいていた。

 タクアンの魔法はその名の通り『幻を見せる霧』を発生させる。それを物体に使えば別物に変化させ、『幻液』にして塗り込めばその部分だけ化かすことだって可能、ラネリアへとんぼ返りした時の仮面もその原理を応用したのだ。風に吹かれればあっさり解除されるのが難点だが。


「……ッ! タクアン、こっち来て!」

「ゲコっ?」


 それを見ながら僕はあることを思いつき、暴風の中で呼びかけて、タクアンを自分の元に来させる。


「今から言うことをやってほしい! 先ずは──!」

「ゲ、ゲゴッ!!」


「ッ!!」


 タクアンが指差す先を振り返った瞬間、飛んできた流れ弾が直撃した。


 ◇ ◇ ◇


 一方で『人狼・レッドドック』のレッドは刃牙獣戦で使った火吹き棒を携えて、走り回りながらひたすらファランを観察していた。


 皆は龍の強大さに呑まれて半ばパニックに陥っているが、よく見てみるとファランの攻撃には法則性があった。

 ひとつは攻撃魔法を風魔法に固定していること。聞けば五つの気候を操ると言っていたが、その中でも致命傷にならないと踏んだのが風魔法の模様だ。

 しかし、二つ目の『急速上昇気流』がそれに気付かせない。真っ先に狙われた最重量級のロイストが呆気なく打ち上げられた挙句、自重に伴う落下時の衝撃に耐えきれず気絶してしまったからだ。その所為で「ロイストが容易く……!」と魔族内に印象づいてしまい、余計逃げの一手に拍車をかけている。実際皆見上げる高さまで飛んでいるし。

 けれど、その打ち上げも『物は使いよう』だった。


 ちょうど近くへ逃げ延びてきた『鳥人・ノイズコンドル』のノイジーと『蛇人・グレアスネーク』のグリスに俺は指示を送る。


「ノイジー、ファランの目元を飛び回ってなるべく気を散らせ。グリスは背に乗って同行、あわよくば溶解液でもぶっかけてやれ」

「ファッ??!」

「何考えてるのアンタ?! そんなんしたらアタシたち撃ち落とされるでしょ!!」

「嫌ならファランが飽きるまで攻撃されればいい。俺が全力疾走したら飛べ」

「やる前提で話進めんなよウワィッ!」


 飛んできた突風を避けつつ周囲を見回すと「ぴげぇ〜〜!」と仲間が上昇気流に打ち上げられる。気流は荒天龍を飛び越えられる位置まで伸びているようだった。


 俺は脚力に力を込めて一気に駆け出した! これにはノイジー等も無視できず、「上手くいかなきゃ覚えてろ!」と小言を発して飛び立つ。


「ん?」


 上昇気流を目指す道中、俺は二足歩行の小型多足甲虫『グラムシ』の群れが逃げ惑っているのを進路先に見つけた。

 瞬時にそいつを加えた場合の先の行動を組み立てる。刃牙獣を仕留めてからというものレッドは何気に難しい平常心維持に秀でており、更には魔族と化した影響か、戦闘IQが飛躍的に跳ね上がっていた。

 そして……──、グラムシ前提の作戦が今し方完成した。


「ナイスタイミング」

「キ? キチッ?!」


 俺はその中の一匹を鷲掴みにして上昇気流に飛び込むと、荒れ狂う竜巻に弾かれそうになるもどうにか中心に乗ってみせて、ファランに狙いを定めて打ち上がってみせた!


「キチ〜〜ッ!!」


 共に天高く打ち上がったそいつが悲鳴を上げる。悲鳴は抑えてほしかったが、巻き込んだ手前強くは言えない。

 当然、ファランだって悲鳴を聞き逃すほどいい加減ではない。位置も直ぐ特定してこちらを見上げてくると、満足気に口角を上げた。


「遂に風を利用してみせたか褒めて遣わす! だが打ち上がった後はどうす──ちょ、邪魔じゃコノヤロウ!」

「うおおぉおお!」


 ファランが風を起こそうとしたそのとき、指示に従ってくれたノイジーが彼の目元を飛び回ってこちらの姿を隠す。右に顔をずらせば右に、左にずらせば左を飛んでくるから煩わしいことこの上ない。


「ブゥっ!」


 更にそこへ、ノイジーの背に乗っていたグリスが眼球に直接溶解液を吹きかける。肝心のダメージは「ぎゃっ、汚ね!!」と目を閉じる程度の微々たるものだったが、それだけあれば大金星だ。


「よくやってくれた二人とも。グラムシ、俺に魔法発動!」

「キ!? キ、キチーッ!」


 腕にしがみつき直していたグラムシは言われるがまま俺に魔法を行使した。


 グラムシは『重力』を自在に操れる虫──。普段は集団で洞窟に住み、危険生物が現れると皆で『重力エリア』を発生させて、危険生物の動きが遅くなったところを逃走するのだ。

 そして、生物に直接魔法を付与すれば、 その生物は凄まじい重力負荷が掛かる──!


 俺は火吹き棒を構えながら、ファラン目掛けて急速落下した!

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