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16 祝杯後

 祝杯の片付けを終えた夕暮れ時にて──。


 さてと、どうしようこれ……。

 それぞれの帰路に着いたイガマキとフンコロガシを見届けたリドゥは、解体済みの刃牙獣を前に、一人頭を悩ませていた。


 今後も仕掛けておきたい罠を警戒させない為に一旦運び込んできたはいいものの、肉が食用に向かないと身をもって知った途端、一気に産廃(ギルド用語であっても仕方ないもの)と化してしまった。

 かと言って何処に廃棄する? 徒に埋めればイシノシ等に掘り返されるのがオチだし、それで「刃牙獣を倒したヤバいやつがいる」と寄り付かなくなっては食糧源が絶たれて元の子もない。

 ならば燃やすかとも思ったがそうもいかない。そもそもが塊だと燃えにくい肉質だし、だからって細々と切り分けるのは手間でしかない。その上、さっき塊を一つ燃やしてみたところ、切れ端では感じなかった酷い悪臭が拠点の外一帯を包み込んだのだ。風導が咄嗟に風で導いてくれてなかったら全員吐いていただろう。


 ……うん。詰んでる。


 これはもう、黙って遠くへ捨てに行くしかないか? 考えるのが面倒になってきた。


「モケ?」

「ん?」


 思考が堂々巡りになってきたところに、スカーフェイスの風導が顔を覗き込んでくる。最初に出会った風導だった。

 どうやら心配してくれているらしい。ええ子だなおまえは。


「モケ」


 風導は何処か嬉しそうだ。感謝が顔に出てたっぽい。


「そうだ風導。これ、どう棄てればいいと思う」

「モケ?」


 風導は刃牙獣の残骸を見つめる。

 ──が、しばらくすると眉間に皺を寄せたのだった。おまえもそうなるか。


「モケッ」


 風導は鳴くと、僕のサバイバルナイフを持って、とてとて刃牙獣の生首に駆け寄る。

 すると風導は、刃牙獣の刃牙を根元から切り剥がして、僕の元へ戻ってきた。


「モケッ」


 風導はサバイバルナイフを手渡してくると、こちらを見ながら刃牙獣の残骸を刃牙でズッダンズッダン叩き斬り始めた。

 細切れにしながら考えればいいよ──。そう言いたいのだろうか。

 だが、風導の言う通りだ。何もしないで煮詰めていたって仕方ないと割り切って風導に続く。


 しかし、刃牙獣も自身の獲物で切り刻まれるとは思いもしなかったろう。

 それを迷いなく行う風導もちょっとブラックである。社会にいたら法に触れない範囲で徹底的に社会的死に追い込む、ある意味一番恐れられるタイプ。


 にしても、凄い速さで刻んでらっしゃる。ちょっと試してみたくなってきた。


「風導。僕にもそれ、使わせてくれないかい?」

「モケ? ……モケッ」


 風導は気前よく刃牙を貸してくれた。

 早速振るってみる。


 ……成程。凄い斬れ味だ。これが牙と知らなければ包丁代わりに使いたいくらいだ。

 せっかくだから使いやすくしよう。僕は手頃な棒を誂えて、ネンチャク草の液体を塗りたくる。

 そこに刃牙をくっつけ乾かせば、即興ナイフの完成だ。


 再び刃牙獣の肉に通してみる。


 ……うん。使いやすい。改良した甲斐があった。


「あ、そうだ」


 どうせなら他の牙も加工してみよう。ナイフに出来たのだから、何かしらに代用可能なハズだ。

 例えば前歯。主に障害物を斬り倒すのに刃牙獣は使っていたが、実際一切速度を落とさなかったことを踏まえれば木こり斧に使えるだろう。

 ということで、早速良さげな棒に溝を掘ってネンチャク草を塗ったらそれっぽく嵌め込み、よく乾かしてから薪に振りかざしてみる。


 ──ぱっかん。


 薪は綺麗に真二つとなった。

 おお……、これは気持ちいい。


 興が乗ってきたので、他にも作ってみる。

 次にリドゥが目をつけたのは犬歯。丈夫そうな長い棒の先端に括り付ければ、あっという間に槍の完成だ。

 薪を的に投げてみれば、びぃぃん──と真っ直ぐ突き刺さった。下手に外せばそれきりだが、中・遠距離攻撃手段として申し分ない。


 この短時間で、道具を二つも上位互換に新調出来てしまった。さっきまで用途に悩んでいたと言うに、これは嬉しい誤算だ。ありがとう刃牙獣。そしてフォーエバー。


「モケ……」

「あ」


 風導の声に、リドゥはハッと我に返って振り向く。

 リドゥが解体そっちのけで、ものづくりを楽しんでいた一方、風導は残骸の二割程度を細切れにしてくれていた。ゴメン!

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