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タマゴあたまの短編集

手の温もり

掲載日:2021/06/03

「ねえねえ。腕相撲しない?」


 後ろから声をかけられて、僕は本を閉じながら振り返る。

 桐原(きりはら)さんのさらさらとした黒髪が視界に入る。


「腕相撲?」

「そう。腕相撲」


 僕の後ろの席の桐原さんはすでに机に肘を立てて準備している。やる気満々だな。


「なんで?」

「なんとなく? 暇だし」

「暇だからって腕相撲は浮かばないと思うなあ」

「で? やるの?」


 桐原さんは手をにぎにぎとしながら笑う。


「いや、しなくていいかな」


 わざわざ腕相撲をやる理由はないからなあ。本の続きも読みたいし。


「勝ったほうにジュースおごるってのはどう?」


 桐原さんがにやっと笑う。


「乗った」


 即答した。


 こういうことが絡むなら話は別だ。勝てばジュースが飲めるし、負けてもそこまで痛手ではない。


「よーし。絶対勝つからねー。ほら、手だして」

「うん」


 机に肘をつき桐原さんと手を合わせる。

 桐原さんの手って柔らかいな。少し温かいし。

 ――いやいや! 今は勝負に集中しなきゃ!


「準備は良いね? レディーゴー!」


 僕は手にぐっと力を入れる。でも力は入れすぎないように。


「あ。さては本気出してないなー。そんなんじゃ負けちゃうよ?」


 むむっ。桐原さん意外に力が強いな。やばい。予想外だ。

 僕はさらに力を入れる。悠長なことは言ってられない。

 それでも僕の手は手の甲のほうへと傾いていく。


「やったー! 勝った~!」


 桐原さんの嬉しそうにガッツポーズをとる。

 ついに僕の手の甲が机についてしまった。


「まさか負けるなんて思わなかったよ」

「一応鍛えてるからねー。ふふふー」


 桐原さんは自慢げだ。


「約束は約束だからね。ジュースは何がいい?」


 財布を持って立ち上がる。


「いや、ジュースはいらないよ。ジュースよりも良いものをもらったからねー」


 桐原さんが微笑んだ。

 僕は何もあげてないと思うけどなあ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろい! [一言] 面白い題名や話ですね!他のも見てみます!
[良い点] 最後の、「ジュースよりもいいものをもらった」という所がすごく良かったです^ - ^ [一言] これからもがんばってください!また読みます^^
[良い点] 素朴な感じてとてもいいです 自分の学生時代を思い出して、こんなことがあったらなー!と思いました。
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