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わたしが悪役令嬢?!

作者: ナルハシ

 わたしはどこにでもいるような普通のOL――だったのだけど、ある日駅のホームから線路に落ちたと思ったら、別の世界に転生していた。


 その世界はわたしが住んでいた世界とほとんど変わりがないみたい。だけどわたしはそこでは高校生ということになっていて、出会う人たちはみんな初めて会うはずなのにどこかで出会ったことがあるような人たちばかり。


 やがてわたしは気が付いた。この世界は、わたしがネットで愛読していた恋愛小説の世界だということに。しかも、わたしが転生したこの人物は主人公であるヒロインをいじめる悪役令嬢だった!


 よりにもよって悪役だなんて……でも仕方ない。こうなったら好きだった小説のヒロインのために一肌脱いで、役割をまっとうしてやろうじゃないの。


 原作ではヒロインがいじめられている所に偶然ヒーローが通りかかり、主犯格の悪役令嬢(わたし)を追い払ったことがきっかけで二人の距離が急速に縮まるという展開だった。

 それならヒロインをいじめている所にヒーローが登場できるように仕組んで――……って、わたしのこと「面白れぇ女」ですって? わたしじゃなくてヒロインに興味持ちなさいよ!

 しかもヒーローの恋敵になるはずのクラス委員やヒロインの幼馴染まで、ヒロインをほっといてわたしを構いだした!?


 これってどういうことなの?!

 この物語、いったいどうなっちゃうの~~~~????











【ざっけんなアアアアアア!!】





























「あ……あれ? ここは……?」


 恋愛小説の世界で学園生活を送っていたはずのわたしは、気が付いたら真っ白で何もない空間にいた。



【ふぅ……やっと介入できた】

「え? 何、この【】? 誰かの台詞ってこと?」

【そうだよ。登場人物との差別化のため本当は文字のフォントを変えられたら判りやすいんだけど、ここはそういった機能に対応していないからやむを得ずこの形式を取った】


 どうやらこの【】の人は今何が起きているのか、事情を知っているみたい。


「もしかして、あなたがわたしをここに連れてきたの?」

【肯定。むやみやたらに段替えを入れることで何もない空間を作り出し、切り離した世界にアンタを隔離させてもらった】


 言ってることはなんだかよく判らないけれど、なんだか悪い人っぽい雰囲気を感じるわ。


【悪役はアンタだろうが】


 う、心の声が読まれている。



【いいか、よく聴け。アタシはこの世界の神――――この小説の作者だ!】



 な、なんですって?!


「それじゃあもしかして、小説の世界にわたしを連れてきたのもあなたなの?! わたしはただ普通に生きて、一読者として好きな小説を楽しみたかっただけなのになんでこんな滅茶苦茶な展開にしたの?! 何が目的なの? わたしを元の世界に帰してよ!」

【ああああああ……うるッッッせェーーーーーー!!!!!】


 ひぇっ、何、逆ギレ?


【逆ギレじゃねーわ、正当なキレだわ!】


 自称作者様の方にも何か事情があるみたい。とりあえず話を聞いてみましょう。


【いちいち癇に障るな! あのなぁ! どうやったのかは判らないけど、勝手にヒトの小説に入り込んだアンタがアタシの作品を滅茶苦茶にしてくれたんだよ!!】


 何を言い出すかと思えば、とんでもない言い掛かり。いくら作者でも一方的過ぎる!


「どうやって小説に入り込んだかなんてわたしにも判らないわ! だけどわたしは悪役令嬢としてちゃんと役割を果たそうとした。それなのに、男の子たちが勝手にヒロインよりもわたしに構いだしたんじゃない」

【『ちゃんと』、『勝手に』だぁ……? アンタ、アタシの小説好きだって言ってたけど本当に読んでたのかよ!?】

「よ、読んでたわよ!」


 だからわたしは原作通り噛ませ犬的な役割を演じて見せたじゃない!


【どこがだ! いいか、原作ではヒーローが助けに来た瞬間令嬢は『憶えてなさい!』って言って走り去るんだよ。そこんところをさ、アンタはヒロインに『頑張りなさいね』って言って颯爽と去って行っただろう。なんだその汚れ役を引き受けた実はいい人ムーブ!? そんなのヒーローが興味持っちゃうだろうが!】


 そ、そんな。確かにそう言ったかもしれないけれど、いくら好きな小説でも一言一句間違わずに覚えているワケないじゃないの。


【アレンジ加え過ぎだ! それになんだ、アンタの名前!】

花園院(はなぞのいん)かれん」

【取り巻きに名前呼ばせる必要性があったから苗字は設定したけど、下の名前は付けてねぇんだよ! なんだよ下の名前は自由に設定できるって、乙女ゲーか夢小説かッ! そもそもアンタは一回限りの出番のモブキャラなのになんでヒーローの恋敵とも絡んでるんだよ。ヒロインのいないところで駒が勝手に動いちゃダメだろ、カメラに写ってない登場人物はその瞬間世界に存在してないんだよ!】


 うわ、小説の作者ってそういう感じなんだ。登場人物は皆自分の子供みたいに大事に扱ってるんだと思ってた……ちょっとショック。


【創作スタイルは人それぞれ! ともかくアタシは作品を台無しにしたアンタを許さない!】

「許さないって……まさか、わたしを消すつもり……?」

【できるならとっくにやっとるわ!】


 それもそうね。この世界にわたしを呼んだのはこの人じゃないみたいだし、戻すのだって無理よね。

 はっ、と鼻で笑う声がした。あ、やっぱりこの人悪い人っぽいわ。



【アンタを著作権侵害で訴える! 賠償金がっつり搾り取ってやるから、覚悟しとけ!】



 ええ~~~~~~!?!?



 こうしてわたし、花園院かれんとこの世界の神様の泥沼の裁判(たたかい)が始まった。


 わたしはこの人を相手に勝つことができるの? そして無事に元の世界に帰ることができるの?


 これからわたし、いったいどうなっちゃうの~~~~????



著作権の切れていない作品に転生された作者の気持ち。

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