生存者
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図書館へ向かいながら大河はリュック内の麺棒を取り出す。
「ゾンビが出て来た時に対応出来るように麺棒を出しとこう。ハンマーや包丁はリーチが短いからね。かといって麺棒もそこまで長くないから極力ゾンビからは逃げるようにしないとだけど」
ゾンビ戦の事を考える。まともに殺り合っていたらこちらがいずれ力負けしてしまう。逃げたとしても数が多く囲まれて仕舞えば詰んでしまう。
「何か遠距離から攻撃出来る物ってないかな?銃?いや、警官が持っていたとしても僕が簡単に手に入るものでもないしもっと誰でも手に入れることが出来る物は…」
大河が遠距離武器を考えながら歩いていると前方の曲がり角から人影が見えた。
大河はすぐさま麺棒を構え、いつでも殴れるように構える。
大河の心臓の音が外に聞こえるかと思うほど大きな音を立てながら脈を打つ。
曲がり角から足先が見えた時、大河は思いっきり麺棒を振り下ろす。麺棒が出て来た人の頭に当たると大河が思った瞬間大河の視界が回る。
「……えっ……」
大河が気付いた時には地面に組み敷かれており、頭にはナイフが突きつけられていた。
「お前はゾンビか?それとも生存者か?5秒以内に答えろ」
「え、あ…東大河です。ゾンビではありません!」
大河は突然の事で頭が混乱していたが頭上から聞こえた男の声に大河は反射的に答えた。
「ふむ、言葉は話せるな。だが感染してるかもしれんから体を見させてもらうぞ」
男は大河を組み敷いたままナイフを仕舞って体を触り始めた。
「あ、あの!あなたは誰ですか?海上都市はどうなってしまったのですか?」
「待て、…よし、問題はないな。すまんな抑えたりして。俺の名は紗羅田芳樹だ。海上都市がこんなになった理由は知らんな」
大河は拘束が解かれ、麺棒を拾って立ち上がり紗羅田の方に向き直る。
「いてて…。そうですか…僕も今どういう状況なのかがよく分かってないのです。でも、僕以外の生存者に会えてとても嬉しいです」
「それは俺もだな。こんな事になってから初めて生存者に会えたわ。それで東、俺に会う前はどうしてたか教えて貰っていいか?俺もおまえに会う前の事を言うからよ」
その後大河と紗羅田はゾンビに気を付けながらお互いの事を話し合う。
紗羅田はゾンビが出る前は海上都市西部のマンションの五階でジムトレーナーをしており、昔は格闘術を学んでいたという。
ゾンビ発生の原因が室内にいた事で戦闘機が落としたカプセルだとは知らなかったらしい。
あの日突然外が騒がしくなり、外を見た人達が次々と外に出て逃げて行くのを見た紗羅田は自分も外を見て外は人が沢山おり逆に危ないと思いジムオーナーと二人で室内に隠れていた。
しばらくして外から聞こえていた破壊音が止み、悲鳴の声も少なくなった。紗羅田とジムオーナーは窓から外を見て人が人を襲っているのを見て絶句した。
そして何事かと考えているとジムの扉が開きジム員がこちらに歩いて来ていた。外のことを聞こうとしたが紗羅田はジム員の様子がおかしい事に気づきジムオーナーに注意を呼びかける。
こちらを向いたジム員は顎がなく良く見れば全身血まみれでとても生きているようには見えなかった。
紗羅田とジムオーナーは距離をとりジム員から逃げる。そしてジムの扉からは他にもジム員と同じような人が何人も入って来ており逃げ場がなくなってきていた。追い詰められた紗羅田達はジム内にある非常階段の扉を開け外に出るが紗羅田が外に出た直後ジムオーナーの肩にジム員が噛みつき引き倒していた。そのままジムオーナーの上に人が何人も襲いかかりジムオーナーの絶叫が聞こえた。
紗羅田はジムオーナーに心の中で謝り非常階段を駆け下りる。降り切った後周りはジム員のような人が大量におり紗羅田に向けて歩いて来ていた。
その後紗羅田は逃げる途中でナイフを拾い襲ってくる人が映画で見るゾンビに似ている事がわかりなんとか今まで生きていたという。
「とりあえずこんなもんか。当面の目標は海上都市からの脱出だな。俺は出口の方へ向かうがお前はどうする?」
「僕は図書館へ行きます。少し気になる事があるのと家族を探しますので」
「そうか、ならここでお別れだな。お互いなんとしてでも生き残ろうな!」
「はい!また会った時は情報の交換をしましょう。」
「おう!んじゃまたな!」
そう言って紗羅田は出口に向かっていった。
大河は紗羅田と別れた後改めて図書館へ向かう。15分程歩き図書館が見えてきた。
「あの後僕はどうなったのか…この状況のヒントが何かあればいいけど…」
大河は一言呟いた後図書館内に入っていった。
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