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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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 そう思っているとヴァルが帰ってきた。腰をやや揺らしながらゆったりと歩く姿を見て、優雅だなと思いながらもため息をついてしまった。そして「残念だなあ」と口を滑らせてしまった。


「なに? 人の顔見て。失礼この上ないわね」

「まあ大したことじゃないから」

「アンタにとっては大したことないかもしれないけど、中傷された私は大したことあるのよ」

「いい年してそんなことに目くじら立てるなよ。シワが増えて乳が垂れて周りに人がいなくなるぞ」

「年を取ることで仕方ないなって思うことはあるけど最後のはちょっと違うんじゃない?」

「人間的に面倒くさくなった結果人が離れていくだろ」

「おいやめろ、胸が痛くなってくるだろうが」

「そういえばキミ、お城で優雅に一人暮らしなさってたんでしたっけ? 周囲にも特に民家なんてあらーせんでしたわね」

「余計なことは言わなくていいのよ!」


 ガツンとヒールで足を踏まれた。


 一瞬だけ意識が飛んだ。それくらい痛かった。


「てんめえ……」

「いつも乳ビンタされてるんだしたまにはいいでしょ。はいヒール」


 痛みがふわっとひいていく。魔法ってホント便利。


「ハイヒールだけにか……」

「もう一回踏むわよ」

「悪かったって」


 ヴァルは腕を組んで大きく息を吐いた。


「んでどうだったんだ?」


 ヴァルはため息をついて腰に手を当てた。あんまりいい内容ではなさそうだな。


「トーレのやつ、ここ二日くらい休んでるらしいわよ。無断欠勤ではないらしいけど」

「家とか教えてもらったのか?」

「訊いたんだけど教えられないって。プライバシーがどうとかって」

「すげーな、この世界にもプライバシーの概念があるのか」

「プライバシーくらいあるわよ。失礼ね。原始時代かなんかと勘違いしてるんじゃないの?」

「それくらいガバガバなんだから仕方ないだろ。じゃあこれからどうすんだ? 打つ手なしじゃ困るだろ」

「それなら大丈夫、他の保安官が案内してくれるっていうから」

「プライバシーは……?」

「プライバシーはある。でも守るかどうかは別の話」

「ドヤ顔でなに言ってんだよ。しっぺ返し食らっても知らないからな」

「いいからいいから。もう少しでお昼に出るっていうからそのときに案内してもらうわ」

「見返りは?」

「お昼代と膝枕だって。私もまだまだいけるわね」


 俺の背中を押し、ルンルンで外に出たヴァル。イケるってどこに行くんだよ。


 そうして近くのカフェに入って時間を潰し、保安官が出てくるのを待った。


 保安官が出てくるとヴァルが手を上げる。支払いを済ませて駆け寄るが、どこかのやっすい恋愛ドラマみたいだった。相手がそこそこのおっさんなのでドラマ感は一瞬で消え去ったが。


 おっさん(保安官)は鼻の下を伸ばしながらヴァルと話をし、俺を見て舌打ちをしてから歩き出した。とんでもねえヤツが来ちまったな、としか思えない。


「んだよ男つきだなんてきーてねえぞー」


 酔っぱらいかよ。


「大丈夫よ、この子、私の奴隷だから」


 おいおい酔っ払いもう一人いるじゃねーか。


「そうなの? じゃあいいや」


 おっさんは上機嫌で歩き、ヴァルがその腕を抱きこんだ。花街ぶっ壊しといてなんだけど、今お前がやってるの花街で女の子たちがやってることとだいぶ似てるからな。言わないけど。


 しばらく歩き続け、細い道に入り、右に左にくねくねと曲がっていった。そして一件のボロ屋で止まった。引違いドアとは、この世界ではかなり珍しい物を見た。俺が元いた世界でも引違いの玄関は古い建物が多い。


 というかこの薄暗い感じ。すえた匂い。いい予感がしないというか絶対悪いことが起きる。


「ここ?」


 ヴァルがおっさんの腕を離した。


 おっさんは残念そうにしていたが、それでもまだ「うきうき感」が消えずに残っているような感じがある。


「そう、ここだよ」


 おっさんがニヤリと笑った。


 ボロ屋のドアが開いて数名の男が飛び出してきた。


 やはりこんな男の言うことなど利くべきではなかったのだ。


 ヤバいと思った俺はすぐに駆け出した。


「ヴァル!」


 このままではやられる。


 やられてしまうのだ。


 この、おっさんたちが。


 しかし俺はコイツを止めることなどできない。


「そう来ると思ったぜー!」


 隠れられるところに入って背中を向けて頭を抱えた。背後ではいろんな光が飛び交って、ドンドンバチバチいってるが俺には関係ない。


「関係ないんだー」


 なんて言いながら耳を塞いだ。男どもの悲鳴があまりにも耳障りだったからだ。


 こうして俺はヴァルに肩を叩かれるまで耳を塞ぎ続けた。

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