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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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21

 俺とヴァルは急いで花街にやってきた。俺が連れていかれた場所に向かおうと思ったが、花街の前で一度立ち止まった。


「どうしたのよ、行かないの?」


 顎に指を当てて花街を見やる。


「おい、気取ってる場合じゃないわよ。っていうか花街の入り口で真剣な顔してるの、あまりにもシュールだからやめてもらえる?」

「言いたいことはわかるが確認しておきたいことがある」

「確認するようなことなんてないでしょ」

「これからどうするつもりだ? 花街の店を片っ端から潰してくわけじゃないだろ?」

「潰しがてら元締めの居所を突き止める感じでいこうと思ってるけど」

「だろうなと思ったから立ち止まったわけだ」

「なにか問題でも?」

「問題しかねーだろ……」


 思わず額に手を当てた。コイツは基本的には有能なんだがたまーにとんでもない脳筋に変貌するのはなんとかして欲しい。


「店を潰しちゃったら、そこで働いてる子たちはどうなるんだ? それに店の店長とかはまた同じような仕事し始めるんじゃないか? となると今店を潰したところで意味がない」

「そんなのは最初からわかってるけど?」

「わかってんのに潰そうとするのはさすがに豪胆すぎない?」


 豪胆というか破天荒というか荒唐無稽というか。


 いや、破天荒はどっちかといえばいい意味で使うはずだからこの場合は違うな。コイツにはもったいない言葉だ。


「大丈夫大丈夫、なんとかなるって」

「なんで自信満々なんだよ。胸を張るな胸を」

「無理矢理張らなくても十分大きいって? まーたそうやって胸ばっか見てるー」


 肘で小突いてくる。


 なので左乳にビンタした。


 が、今までと感触が違う。硬さがダンチだ。めちゃくちゃ硬いし、そのせいで俺の右手が赤くなってしまった。


「クッソいてぇ……」


 ヴァルは「ハッハー」と誇らしげに笑っていた。


「そう何度も何度もビンタされてたまるものか!」

「なにしたんだ、それ」

「魔法で乳を硬くした」


 そーっと手を伸ばして乳を鷲掴みにする。


「おい」


 と言われたが俺には関係ない。


「なんだよこれ。石か? 鉄の可能性すらあるが」


 揉む、というよりただ掴んでるだけだ。


「乳をガッチガチに強化した。これでアンタにぶたれても痛くない。むしろカウンターを食らわせることができる。一石二鳥よ」

「これからは奇襲しないとダメージも与えられんか」

「おい、仲間にダメージを与えることを考えるんじゃない」


 乳をビンタする方法、これからもっと考えていかなきゃいけないかもしれない。


 なんて少しばかり考えこんでしまった。というかこんなクソみたいなやり取りをしている暇はない。


「花街を潰して問題ないのか、それとも本気でなんとかなると思ってるのか。それだけでも教えてくれないか」


 と話しかけた頃にはもうヴァルは一軒目の店を潰していた。


「どうしてそうなるんだ?」


 とは言うがヴァルはもう話を聞いていない。


 ヴァルの後を追って花街の中へと飛び込んでいく。が、すでに花街は荒れ放題。阿鼻叫喚の地獄絵図である。


「ハッハー」


 なんて言いながら店をドカンドカンと潰していく。隣の定食屋もぶっ潰したが本当に大丈夫なんだろうか。


 そう思ったところで俺にはコイツの暴挙を止める手段がない。不甲斐ないかもしれないが魔女と一般人なのでどうすることもできない。


 ヴァルの気が済むまでやらせておくか。


 テキトーな場所で腰をおろして傍観の姿勢をとった。案の定というかなんというか、地下へとビームを発射したり、上空から光弾を打ち込んでみたり。俺はそれを遠くから眺めていることしかできなかった。


 こうして見るとやはり力の差は歴然だな。ヴァルが本気を出したら、俺が命令をする暇もなく塵にされるんじゃないだろうか。確かヴァルの魔法は俺には効かない。たぶん俺に対してデメリットになるような魔法だけ効かないんだろう。


 それでも、アイツが本気になったら俺なんて吹き飛んでしまうんじゃないかっていう気はする。


 ようやく気が治まったのか、ヴァルが上空から降りてきた。だいたい十分くらいだったと思うが花街は見るも無残な姿に変貌してしまった。


「っていうか空飛べるんじゃねーか。最初できないとか言ってたくせに」

「私一人ならまあなんとかなる程度だから。結構苦しいからあれ。アンタの体を持ち上げるだけの力はない」

「一人も二人も一緒だろ」

「一緒なわけあるか! ほぼ二倍だぞ! いーや、アンタの体重を考えると二倍以上だわ!」

「でもさっきは悠々と空飛んでたじゃん。あれだけ余裕があればもうひとりくらいいけるって」

「試してもいいけど上空から落ちたら私のせいじゃないからね」

「さすがにそう言われると怖いわ」


 地面に叩きつけられた自分の姿を想像するとゾッとする。ヴァルならそれくらいやりかねないからだ。


 そうじゃない。コイツと一緒にいるとすぐ話が脱線してしまう。まあ嫌いではないんだが事態が進行しないのはいかがなものか。

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