15
ヴァルはノアの額に手を当てたり体をまさぐったりしていた。
「痴女かよ」
「違うわよ!」
なんて言いながらも服を脱がして下着に手をかけている。
「おいおいおいそんなことしちゃっていいのかあ?!」
両手で顔を隠すが指の隙間からその様子を盗み見る。
見ようとしたところで誰かが俺の視界を遮った。
「おい!」
俺は怒鳴りながら視線を上げた。そこには汚物を見るような目で俺を見下ろすガーネットがいた。
「弾くぞ」
額に銃口を当てられてしまえばなにも言えない。
「収めて」
「お前の行動次第だが」
「後ろ向いてるね」
「それがいい」
後ろを向いて正座した。
数メートル先の壁を見ていたらキャロルが俺の前にやってきた。理由はわからないが正座してるし、お互いに正座して向かい合っているこの状況は違和感しかない。というかなんで俺の前に来たんだよ。
「なんでお前まで正座してるの?」
「んー、エージだけだと寂しいかなと思って」
「お前ってやつはよお!」
思わずキャロルを抱きしめて床に押し倒してしまった。ほっぺがやわらかくて気持ちがいい。
とか考えてたら蹴り飛ばされた。俺だけピンポイントで蹴り飛ばすのはさすがに職人すぎやしませんかね。
「ガーネットさん、痛いですけど」
「キャロルはもっとまずい」
「まあ、わかるけども」
仕方ないからベッドに横になった。ノアを見ても怒られるしキャロルとのスキンシップも怒られる。ふて寝しかない。
「こらこら、ふて寝してる場合じゃないから」
いつの間にか、ヴァルはノアの服を元に戻していた。
「早くない?」
「別になにかをするつもりとかはなかったからね」
「じゃあなぜ脱がせた。おかげで頭に鉄砲玉食らうとこだったんだぞ。ちゃんと反省してんのか」
「それはアンタのせいだろ」
ガーネット、ツッコミキレキレか。
「もうごめんなさいね! で! なんで服脱がせたんですか!」
「キレれば許されると思うなよ」
「どうしろと……」
俺の生きる場所がなくなってしまうが。
「うるさいわよ二人とも」
ここでようやく仕切り番長が前に出てきた。もうちょっと早く出てきてもよかったと思う。
「はい、説明よろしく」
「うむ。傷がないかとか魔法の痕跡がないかを確認しただけよ」
「ふっつうじゃん。超つまらん」
「まずそこから見なきゃダメでしょ。毒とかだったりするかもしれないんだから」
「結果は?」
「結構重めの睡眠薬が盛られてるみたい。その後で下級の魔法で拘束されたみたい」
「どうしてこうなったかとかはわからんか」
「さすがに無理ね。でもそれはある場所に行けばわかることなんじゃない?」
「確かにそうか」
ある場所、というのは口に出す必要はない。
立ち上がってマントを羽織った。ガーネットもキャロルもどこに行くのかわかっているらしく出かける気満々だ。
剣を二本腰に携えていざ出陣だ。
「どこから二刀流設定出た?」
「二本あった方がかっこいいだろうが」
「今ので二刀流じゃないのはよくわかった。さ、行きましょ」
結局先頭をヴァルに取られてしまった。まあ危険を全部引き受けてくれると考えればヴァルを先頭にするのは正しいのか。
宿を出て町のなかを歩く。が、少しばかりざわついている気がする。事故がどうとか火事がどうとか言ってるし、遠くの方で黒い煙が立ち上がっていた。
「あの方向って……」
「急ぐわよ」
町の中を駆け抜けていく。方向が方向だ。良くない予感がしてならない。




