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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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 そんなクソみたいなやり取りをしている間にノアの実家に到着した。正確にはノアの実家の裏側だ。


「さて、どうやって乗り込むか」

「見張りはたくさんいるからこのまま塀を乗り越えても見つかるだけ。塀さえ超えれば案内できるけど」

「それじゃああれやりますか」


 ヴァルが「パンっ」と両手を合わせた。


「なにしてんの?」

「魔法使ったの」

「今ので魔法使えるの?」

「めちゃくちゃ難しい魔法じゃなきゃ念じるだけで使えるわよ。そんなことも知らないでついてきたわけ?」

「説明されてない上に今両手を合わせたのはなんなんだよ」

「なんかアクションがあった方が「ああ、魔法使ったな」ってわかるでしょ? 「今! 今魔法使ったから!」って大声あげた方がいい? そっちの方がよければそうするけど?」


 したり顔でそんなことを言い出した。


「ああそうだな、そうしてくれるとありがたいな。魔法使ったってすぐわかるもんな。次から「今! 今私魔法使ったから! 魔法!」って叫べよな」


 煽られるとすーぐ額に青筋作るんだから。


「絶対後悔させてやるから」

「たぶん後悔するのはお前の方だぞ」


 恥晒しもいいところだからな。


「でもどんな魔法をかけたんだ?」

「そういやガーネットは知らないのか。こういう時に使う魔法つったら一つしかない。睡眠魔法だ」

「範囲内の衛兵を眠らせたのか」

「簡単でわかりやすいだろ」

「確かに、魔女ほどの魔力があれば眠らない者などいないだろうしな。確実であり明快だ」

「こういうときには非常に使える」

「人を物みたいに言わないでちょうだい」

「いつもありがとうな」

「エイジ……そんな、改めて言われると恥ずかしいじゃない」


 こりゃダメ男も調子に乗るわけだ。あまりにも扱いやすすぎる。何百年も生きてきたわりにはチョロすぎて心配になるな。


「どうしたのよ、私の顔になんかついてる?」


 顔を覗き込まれてドキッとしてしまった。別にヴァルにドキッとしたわけではない。人の顔がいきなり近づいてきたらびっくりするものだ。


「なんでもない。ガードマンたちが起きる前に行くぞ」

「そう簡単に起きないわよ」

 塀を乗り越えてシュバリエ家の敷地内へ。屋敷の中から明かりは見える。だが物音はしないし人の気配もない。

「うし、行くか」


 全員で顔を見合わせて頷いた。いざ屋敷の中へ。


 そのへんの窓を開けて侵入した。が、ここにきてとんでもないことに気がついてしまった。


「眠らせるなら正面からでもよかったのでは……?」


 屋敷の通路を歩きながらそうつぶやいた。


「侵入っていうのは裏側からって決まってるのよ。これでよかったの」

「そういうどうでもいい様式美みたいなの好きだよな。魔女は暗い感じのスリムなドレスじゃなきゃ、みたいな」

「そういうドレス来てたら魔女だってすぐにわかるじゃない。自分の能力は誇示してかなきゃね」

「そういうドレス来た魔女はみんなヤベーやつっていう印象しか与えないと思うんだがなあ……」

「なんか言った?」

「絶対聞こえてたじゃん。耳だけおばあちゃんか? それとも何度も言ってほしいのか? マゾとかそういうプレイを押し付けないでもらえる? 俺お前のバ○イブじゃねーから。それとも単純にかまってほしいだけか? いい年してかまってもらいたいからってそれこそ魔法でバ○イブでも作ってろよめんどくせえ。一体何年生きてきたの? もしかして生きてきただけなの? 経験とかそういうの使ってもっとちゃんと生きようとか考えなかったのか?」


 そこまで言ったところでヴァルの顔から表情が消えてしまった。虚ろな目には涙が浮かび口は半開き、頬は弛緩している。人のこと馬鹿にするしよくよく突っかかってくるくせにどうしてここまでメンタルが弱いのか。


「悪かったって……」

「も、もう言わない?」

「怖いからその覇気のない顔で言葉を発するんじゃない。もう言わないから正気に戻ってくれ」

「ふぁーい」


 しばらくこのままなんじゃなかろうか。


 まあ今回の主役はヴァルではないので、正直このままここに放っておいてもいい気はする。今回ばかりはノアの一件が片付けばそれでいい。


「アンタ、なんか不謹慎なこと考えてるわね」


 こういう時だけは勘がいい。年増怖い。

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