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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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 というよりも気になったのが歩く様子だけで警戒されるってことは、あの門番はノアのことを知っているということになる。顔もそうだが、この耳のこと、つまり先祖返りの獣人であることを知っているのだ。そうでなければ警棒を構えたりなどはしないだろう。


「止まってください」


 シュッと音がして、俺たちは足を止めるしかなくなる。二人の門番が警棒の先をこちらに向けてきたのだ。


「おいおい、アンタらこんな可愛い子にそんなもの向けるのか? っていうか、この子の顔知ってるだろ?」


 サングラスのせいで視線はわからないが門番が気圧されるような様子はない。プロ意識が高いのか、それともノアをこの家の人間と思っていないのか。


「とにかく帰ってください」

「そこをなんとか。せっかく娘が帰ってきたんだし、家に入れてやろうって気になるのが普通だろ?」

「申し訳ありませんが、旦那様には敷居を跨がせるなと言われておりますので。これ以上近づくようであればこちらも武力行使に出るしかなくなります」

「武力行使、ね」


 ヴァルは後ろの方で腕を組んだままだし、キャロルはこの状況に縮こまってるだけだし、ノアは――。


「私が直接会いたいと言ってもダメ?」


 ここで、ようやくシュヴァリエ家のお嬢様が自分から動き出した。


 が、門番の対応な何一つとして変わらなかった。


「申し訳ありません。旦那様から言われておりますので」


 ノアの顔は涼やかなままだった。いつもどおりすぎてちょっと怖いくらいだ。なんかこう、もうちょっと残念そうにした方が年頃の女の子っぽい感じだとか思ったが、そもそもノアの人生は普通の女の子とはかけはなれたものだ。


 しかし、なにも思っていないわけじゃないはずだ。


 生まれた家と家族。本来生活圏として確立されるべき場所を奪われたのだ。子供の頃からそうだとすれば、それは人生を奪われたのと同じことなんじゃないか。


 そう考えたらなんだかすごく腹が立ってきたぞ。ノアがいったいなにをしたっていうんだ。ちょっとだけ、他の人と姿が違うだけじゃないか。シュヴァリエ家の中で唯一獣人の血が先祖返りしただけじゃないか。


 少し違うからって迫害するのは違うんじゃないか。


「こりゃすいませんでしたね。もうちょっと頭冷やすことにしますわ」


 ノアと門番の間に割り込んでそう言った。


「どうしたのエイジ」

「いいからここは退こう。俺に考えがある」


 ノアの背中を押して「失礼しましたー」とその場をあとにした。


「なんなの、いきなり」

「いいからいいから、とりあえず宿に帰るぞ。このまま押し問答しててもしょうがないし」


 一度全員を引き連れて宿に戻ることにした。すると、ガーネットがイスに座ってお茶を飲んでいるところだった。


「お、やっぱり帰ってきたな」


 なんて笑っていた。


 ガーネットがここに残ると言った時、少しだけ違和感があった。その違和感の理由がようやくわかったような気がした。


「お前、こうなることなんとなくわかってただろ」

「さあ、なんのことだか」

「言ってろ……」


 門前払いなの絶対知ってただろ。


「で、どうだったんだ?」


 仕方なく家の前で起きたことを包み隠さず全部話した。バカにされたような気がしたので話したくはなかったが、こうなることを予想できたってことは、これかの行動において有益な情報を持っているのもまたガーネットのような気がする。


「なるほどね。でもまあそうなることくらいわかってただろ? 母親は監視、父親は殺害を依頼したくらいだからな」


 ガーネットは「ははっ」と軽快に笑った。


「おい」と俺が言うと、ノアは「いいよ」と言葉を遮った。


「こうなることくらい予想ができた。だからガーネットのことを責めるのは間違い」

「でもどうすりゃいんだろうな。これじゃ話をすることもできん」

「言っておくけど、私は別に会いたいわけじゃないからね。このまま無視して進んでもいいと思ってる」


 なんて言いながら、窓の外に視線を向けた。


 そんな顔をするから放っておけないんだろうが。


「それじゃあ、夜にやるしかないんじゃないか?」


 ガーネットがそう言った。


「お前絶対そこまで予想してただろ……」


 ノアが門前払いされることもわかってたし、そうなれば夜に侵入するしかなくなることも予想できた。おそらく、そのための準備もできてるんじゃなかろうか。


「準備は?」

「そりゃもう」


 これだけ自信満々に笑われたら信じるしかない。


「でもなんで俺たちを見送ったんだ? こうなることがわかってたなら言えばよかっただろ」

「この件はお前が思っているほど簡単なものじゃないんだ。お前の精神を引き締めるためにも必要だった」

「それなら、まあ、ありがとう?」

「どういたしまして」


 こうして、俺たちは夜まで時間を潰すことにした。買い物に出たりカードゲームをしたりしりとりをしたり本を読んだりした。夜まで待つ、というのが俺たちの行動規範になりつつあるのは思っていても黙っていよう。

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