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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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「じゃあそれを母親に訊きに行くっていう名目で実家に行こう」


 ノアは深く、大きなため息を吐いた。


 当然のことだろう。まともな人間として扱われなかった上、金に困っていないはずの家から売りに出されたのだ。


 嫌がるのもわかる。しかし、このままではよくないような気がする。なによりもノアが知りたがっているような気がするのだ。


「今すぐにっていうのは、ちょっと無理」

「まあお前の実家に行くわけだしそれはいい」

「今日は少し様子を見に行くだけにしたいんだけど、いい?」


 ここで上目遣いは卑怯だと思うよ。


「うんいいよ」

「ありがとう」


 からの柔らかな微笑み。やはりこの娘をあそこで救っておいて正解だったな。心の清涼剤だ。いや清涼剤なんてちゃちなもんじゃない。本当は人間と天使のハーフなんじゃないかと思ってる。


「なんで遠くを見たまま固まってるの?」


 顔を覗き込まれると心臓が飛び出しそうになった。


「しいていうならノアとの幸せな未来を夢想してたから、かな」

「ハニカミながら言わないで。ちょっと気持ち悪いよ」


 キモいって言われるよりも気持ち悪いって言われた方がダメージがある。ウザいとか嫌いとかマイナスな表現は数あれど、「気持ち悪い」と「臭い」はかなりのダメージだ。


 でもノアの口から発せられるならありかもしれない。


「うわ、笑った」


 そしてヴァルの横槍である。


「なんでちょいちょい入ってくるわけ? 俺とノアの会話なんだが」

「ノアが嫌がってるから」

「嫌がってないよねえ?」

「私は嫌かな。っていうか急に微笑みかけてくるのも気持ち悪いし。それそれそれ。なんで気持ち悪いって言われて笑うかね……」


 で、この仕打ちである。


「笑うな笑うな」


 ヴァルが呆れたように言う。


「そこまで言われても嬉しそうにしてるのか。とんでもない男だな」


 ガーネットが入ってくる。


「でもそれがエイジだよ?」


 今度はキャロルである。今まで黙ってやり取りを聞いてたくせに急にこれだ。酷い仲間だ。


「ほらまた笑うー」

「仕方ないだろ。笑顔になっちまうんだから」

「虐げられて心が躍るって生粋すぎない?」

「そういう属性はない、失礼なヤツだ」


 というかこのまま話をし続けてたらいつまで経ってもこの部屋から出られないんじゃないだろうか。


「まあ雑談はこのへんにしてノアの実家に行ってみないか。話はそれからでもできるだろ」


 そういえばまだノアの実家がどういうものか知らないな。豪商なのか貴族なのか、どちらにせよ金持ちだろうけども。


 キャロルは「行きたい行きたい!」と目を輝かせていた。可愛らしくてなにより。やっぱりちっちゃい方が可愛いよな。


 ということで「ほぼ」全員でノアの実家に向かうことになった。


 この「ほぼ」というのは来なかったやつがいたからだ。


 ノアの家から数十メートルの位置で、民家の陰から様子をうかがうことにした。


「デカない?」


 そう、でかいのだ。なにもかもが大きい。


 金属製の門は二メートルほどあって、門の左右にはまた二メートルほどの壁が家を囲んでいる。門の向こうには家が見えるのだが、家というよりは屋敷と言った方が正しいだろう。その屋敷もまた、門から見ると結構小さく見えてしまう。それだけ庭が広いということになる。


「とんでもない場所にきちまったな」

「ノアのお家大きい……」

「これは商人って感じの家じゃないわね」


 そんな会話をしながらシュヴァリエ家の門を見つめ続けた。


 門の前には二人の門番がおり、この時代には似つかわしくないスーツにサングラスという装いをしていた。もうこの世界のことがまったくわからなくなってきたぞ。


「とりあえず行ってみるか。なんかあったら頼むぞヴァル」

「なぜ自分でなんとかしようとしないのか」

「だって俺弱いし」

「紋章の力を使えばなんとかなるでしょうに。楽だからって私にばっかり頼ってると、いざという時に自分じゃなにもできないクソニートになるわよ」

「お前のヒモになるつもりはないから安心しろ。さ、行こうかノア」


 ノアの背中に手を当てて歩き出した。


「おめーさり気なくスキンシップしたつもりだろうがこっちにはバレバレだからな。下心丸出しクソ野郎」


 後ろからババアの小言が聞こえてきたが気にしない。


 歩いていくと、こちらに気づいた門番たちが腰の警棒に手をかけた。銃じゃないだけありがたいな。

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