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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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 ガーネットの件があったり暗殺者との戦闘があったりと、やはり俺たちの旅路はそう簡単にはいかないらしい。


 簡単にいったらそれはそれでつまらなそうではあるが。


 そんなことを考えているから、マーチャックに着くのもここまで遅れてしまった。


 マーチャックはそこそこ発展した町であり、なんちゃら商会のような会社がいくつもある。大きめの会社がいくつもあるから発展しているんだろうか。道も石畳で整備されている場所が多く、二階建てや三階建ての建物も多く存在している。


「ようやく着いたわね」

「着いたんだぞ、ってことを印象付けるためにそう言ったの? わざとらしすぎない? いや優しさでもあるのか?」

「ちょっと黙ってて」


 怒られた。


「とにかく、ここにノアの実家があるんだな」

「そういうことになるかな」


 顔色はよくない。よっぽど実家に帰りたくないんだろうな。


「正直なところ、お前が泣いて嫌がるなら両親に会う必要はないと思うんだ、俺」

「なんかちょっとだけいい感じのこと言ってるようだけど、それだと「泣いて嫌がれ」って言ってるように聞こえるんだけど」

「そうだな、実際ノアが泣いて嫌がるところは見たいしな」

「人間として下の下」

「こういうマイナスポイントもちゃんと見せていった方がいいかなと」

「ゲスい部分は隠した方がいいと思う」


 ノアはため息をつきながら眉間に指を当てていた。


「とりあえずノアもこんな感じだし、宿でも取って作戦会議した方がいいかもしれないわね」

「ここはノアの庭だろうし、なんか良さそうな宿紹介してくれよ」

「確かに渡しの実家がある町だけど、庭と言うには私はこの町を知らなすぎる。そうだな……あの辺の宿でいいと思う」


 ズンズン進んでいってしまうノアを先頭にして俺たちも宿へと向かった。


 部屋をとって荷物を置く。テーブルを囲んで全員でお茶をすすった。


「それで作戦会議ってなにするの?」


 ノアが頬杖をついて言った。


「その前に、さっき言ってたことが気になってるんだが」

「さっき?」

「宿を探す時に言ってただろ? 庭というにはこの町を知らなすぎる、って。あれってどういう意味なんだ?」


 ノアがまたため息をついた。


「そのままの意味よ。私は幼い頃に売られたわけだけれど、産まれてから売られるまでの間は家に軟禁状態だったのよ。だから私は世間を知らないまま外に放り出されたし、この町のこともよく知らない」


 そんなこと言われたら自分の軽はずみな言動が恥ずかしくなっちゃうじゃんやめてよホント。これからはもっとノアに優しくしよう。


「そういう目で見ないでちょうだい。確かに辛いって思うことはあったけど今となっては過ぎたこと。実家には思い出はないし、可哀想な目で見られていいこともないでしょ。というか、そういう目で見られるのは好きじゃないから」

「そうだよな、誰だってそうだ」

「ほらそういう目で見る」

「んなこと言われたって無理だろ。一度知っちまったんだから、簡単にその人に対しての認識なんて変えられない」


 ピリッと、また眉間に電気が走った。たぶんこれも俺の言葉じゃないんだろうな。こっちに来る前に誰かに言われて、俺の心のどこかに残っていた断片的な記憶が口をついて出ただけだ。


「はいまたよくわからないタイミングで頭痛起こすー」


 ヴァルが横槍を入れてきた。


「よく頭痛だってわかったな。というか別に俺が頭痛を起こしてるわけじゃないから。俺が好きで頭痛になってるみたいな言い方するのやめて」

「でもいつもめちゃくちゃなタイミングで頭痛起こすじゃん」

「だから俺が起こしてるわけじゃねーんだって」


 でもコイツが俺の頭痛に気がついた、っていう点に関しては評価してやりたいところだ。奴隷らしく俺のことをちゃんと理解しようとしてるんだな。


「えらいぞ」

「いきなり何言いだしてんだこいつ……」


 確かに。今の感じで褒めても意味は伝わらないかもしれない。


「でもさ、私は両親に会っても特にすることないのよね」

「あるだろ。クソてめえぶっ殺○すぞとか言ってやりたいことくらいはあるはずだ。いーやあるに違いない」

「伏せ字とは」

「ぶっ○殺○すぞ?」

「間に挟んでも意味ないから」

「ぶっ卍殺卍すぞ、これで文句ないだろ」

「だから伏せ字とは」


 中学生のハンドルネームみたいになってしまった。嫌いではないが会話にならなくなってしまうな。


「とにかく、俺が言いたいのはムカついたなら一発ぶちかますくらいのことした方がいいんじゃないかってこと」

「その必要はないんだけどね……」

「とは言ってるけど、自分を狙った本当の理由とかそういうのも訊きたいんじゃないのか?」

「だから必要ないって。命を狙われた理由だってわかってるし」

「そのわかってるってのは直接訊いたわけじゃないんだろ? だったら確定じゃないわけだ」

「確定してるようなものよ。あの男は私が先祖返りしたことに対していたく腹を立てていた。私の血筋にあのような者がいるだなんて、とよく聞かされてたから」

「じゃあ母親がガーネットに依頼した理由は?」

「それはわからないけど……」


 少し困惑したように眉根を寄せたノア。この反応は本気でわからないんだろうな。特に幼少期に軟禁状態だったってことは両親ともちゃんとした関係を築けていなかっただろうし。

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