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15

 すべての銃弾を避け終わり深呼吸を一つ。


「化け物かよ……」


 男のその言葉は俺に向けてのものだろう。きっと俺がアイツの立場でも同じことを言ったはずだ。


「よくわかったと思うが、お前らじゃ俺には勝てないぞ」


 今俺めちゃくちゃかっこいいんじゃないだろうか。こんな日が来るとは思わなかった。


 考えてみたら最初に召喚された時は戦闘力もなく剣を振るうこともできなかった。それが紋章の力さえあればこんなことができる。


 そうやってニヤッと笑った瞬間、俺がいるところだけ重力が増したかと思うほど体が重くなった。思わず膝をついてしまうくらいには重い。


 なんだなんだと体を見ると、発動した紋章が赤く点滅しているではないか。


「おいおい、さっきの威勢はどうしたんだ?」


 男たちが銃を構える。


 これはアレだ。三分経つと光るアレだ。これでキャロルの紋章使って巨大化なんてしてたらそれこそアレだよ。


 実際三分じゃないんだろうけども。


「ちょっと腹が痛いだけだ、問題ない」

「俺たちはそのへんの盗賊なんかとは違う。いろんな人間を見てきたし、いろんな人間を殺してきた。強がりだってのはすぐにわかる」


 大丈夫だ。体は重いがまだ動けそうだ。


「ほら、撃ってこいよ」

「じゃあ望み通りにしてやるよ」


 男が銃を構えた。


 次の瞬間、チュンという音が聞こえて男の銃が宙を舞う。


「待たせたな」


 背後からガーネットの声がした。撃ち終わって前線に復帰したってことだ。


「てめえ、よくノコノコ顔出せたもんだな」


 男が顔を歪めてガーネットに言う。これはとんでもない因縁がありそうだ。正直関わりたくないが、こうなってしまった以上関わらざるを得ない。


「顔くらい出すさ。一応、仲間だった時期があるだからな」

「お前のことを仲間だと思ってた自分を殴ってやりたいね。それくらい、そのことは忘れたい出来事だ」

「ああそうか、じゃあこの場で私が殺してやろう。それなら後腐れないだろ?」

「さあ、そんなことができるかな」


 男がニヤリと笑った。


「銃を置いて手を上げろ」


 すぐ近くで声がした。俺とガーネットの真後ろだった。別のヤツに回り込まれていたことに俺もガーネットの気が付かなかったのだ。


 ガーネットの方を見ると後頭部に銃口を突きつけられていた。この世界、こんなに銃が溢れてるもんなのか。世界観がよくわからなくなってきたぞ。


 ガーネットはため息をつき、銃を床に投げ捨ててから手を上げた。


「そうそう、それでいいんだ」


 リーダー格の男も深くため息をついていた。アイツもまた、一応は死を覚悟してたってことなんだろう。


「死ぬ前に言い残すことは?」

「特にない。こういう仕事をしているからな、常に死ぬ覚悟はできている。親族もいない」

「そうか、ならこちらから質問させてもらう」


 男はどかっと椅子に座り込んだ。勝ちを確信しての余裕だ。男の周りには部下もいるし、俺とガーネットだけじゃどうすることもできなから、その余裕も当たり前と言えば当たり前だ。


「なぜ裏切った?」

「最初から協力などしていない。それに裏切ったのはそちらの方だ」

「俺たちが裏切った? バカ言うな。そういう契約だったはずだ。こっちはこっちでやらせてもらうってな」


 ガーネットが小さく舌打ちをした。


「どういうことだよ。話が見えてこねーぞ」


 俺がそう言うと、リーダー格の男が「はっはっはっ」と笑った。


「なんだ、聞いてないのか? サイラーが俺たちに話を持ってきたんだぞ? お前らを見張るようにな」

「見張るだけだと言っただろう」

「だからこちらでやらせてもらうと言った」

「なぜエージたちに銃口を向けた? 危害を加えないようにと言ったはずだぞ」

「あんなはした金でお前の言うことを全部飲むわけないだろ。俺たちはより大きなリターンを求めただけさ」

「大きなリターン?」

「依頼があったんだよ。そのエージってやつを殺せってな」

「おい待て待て、なんで俺が殺されなきゃならんのだ。誰かに恨まれるようなことなんてしてないぞ」


 さすがに口を出さずにはいられなかった。


「正確にはお前たちを、だ。まあ相手に魔女がいるとは知らなかったが、エージとエレノアの二人をやれば数千万っていう金が手に入る。そういう契約だ」


 言ってる意味がよくわからない。なぜ俺とノアが狙われるんだ。誰かの恨みを買うようなことをした覚えはない。いや、心当たりがないわけでもないか。


 俺とノアが標的ということは、俺たちが繋がった瞬間に意味があるはずだ。となれば、ノアを監禁していた奴隷商の仕業である可能性が非常に高い。

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