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14

 夕食を食べたりして深夜になった。軽く夜食を食べて部屋を出る。そうして、数キロ先にある廃城へとやってきた。


 廃城の中には明かりが灯っていた。ガーネットが言うように、あそこに暗殺者集団がいるのだろう。


 ここまでは良かった。ここまでは良かったんだ……。


「なんでそうなっちゃうの?」


 ヴァルを見下ろして俺が言う。


「なにがよお?」

「なにがよお、ではない。なんで酒瓶空にしちゃうの? ちょっとだけって言ったよね? 戦闘の前に景気づけするって、軽く飲むだけって言ったよね?」


 そう、ヴァルがベロベロになってしまっているのだ。これでは戦力ダウンというかほぼ戦力ゼロである。


「らいじょぶらいじょぶ、指先一つでダウンらから」


 ヴァルが人差し指を廃城に向けた。そして、その指先から光線が放たれた。


 ピーっという音と共に発射され、その光線は俺の頬を掠めてそのまま廃城を直撃した。


 振り向くと廃城ががらがらと音を立てて崩れるところだった。


 廃城の方は騒がしくなり大声も聞こえてくる。「敵襲!」や「陣形!」などという声が聞こえてくる度に俺はどういう顔をしていいかわからない。


「おめーやってくれたな」


 なんのために夜に来たのかわからない。


「らいじょうぶらって。ほれ、ほれ」


 ピー、ピーっと何度も光線を放つヴァル。


「景気良すぎだろ」

「言ってる場合じゃないでしょ……」


 ノアに脇腹を小突かれた。


「って言ったってどうすりゃいいんだよこれ」


 というか指先から魔法だして拘束するんじゃなかったんかい。全然攻撃してるんだけどどういうことなんだよ。


「チャンスと言えばチャンス。ヴァルが暴走しているうちに、やりそこねたヤツらをこっちで狩る」

「エレノアの意見に賛成だな」


 ガーネットが大きめの銃を構えた。


「なにそれ……」

「スナイパーライフルだ」

「スナイパーライフル」


 この時代でそれを作る技術があったというのか。


「弾がなくなり次第前線に向かう。お前たちは前でもちこたえろ」

「マジかよ。誰がこの展開を予想したんだ」


 もっとハラハラドキドキするようなスリリングな戦闘かと思ったら全部ヴァルのせいで崩壊した。これじゃ小規模な戦争じゃないか。


 俺はため息をつき、ノアの紋章とヴァルの紋章を発動させた。ここでガーネットの紋章を発動させるべきか迷った。


 紋章の上に手を掲げて迷っていると「あっ」と言いながらキャロルがぶつかってきた。元々魔力を込めていたのでガーネットの紋章が発動してしまった。


「ご、ごめん」

「いや、いいよ。ホント、大丈夫だから」


 キャロルは謝りながらもノアと共に森へと飛び込んでいった。まだキャロルの紋章を発動させたことはないが、きっとこの先使うことはないだろう。だって巨大化するってわかってるし。これで巨大化しなかったら世の中が信じられなくなりそうだ。


「んじゃ俺も行くか」


 ノアの紋章で体は軽い。ヴァルの紋章で力がみなぎってくる。そしておそらくガーネットの紋章のせいか周囲がゆっくりに見える。不思議な感じだが悪くない。


 俺も廃城へと向けて走っていく。この状態だとそんなに時間はかからない。


 今でもまだピーピーやってるせいか、暗殺者たちはかなり困惑してる様子だ。廃城の二階や三階から落ちてくるやつもいる。意外とあのレーザー光線みたいなのはいい感じに命中してるのかもしれない。


 廃城の周囲で銃を構えるヤツらを何人か倒して城の中へ。城の中でも何人か倒して奥へと進む。この先はおそらく「謁見の間」的な場所だろう。王様が奥に座ってるような場所だ。


 ドアを開けて中に入ると、そこにも多くの暗殺者がいた。


「何者だ!」


 中央奥にいた長髪の男が声を上げた。アイツがリーダーだろう。


 どうやら俺が一番乗りらしい。正直困った。作戦もなんにもないもんだから、一番乗りした時のことなんて考えてなかった。


「さあ、俺にもよくわかんねーよ」


 いくつもの銃口が向けられる。


「雇われたのか」

「そういうわけでもない」

「じゃあなんでここを襲った」

「いやいや、先に襲ってきたのはそっちだから」

「あん? 俺たちはお前のことなんか知らないぞ」


 どういうことだ。俺たちの誰かを狙ってたんだとしたら、仲間である俺の顔だって割れてるはずなんだが。


「ガーネットって知らないか?」


 ここで賭けに出る。俺、ヴァル、ノア、キャロルが狙われてたんじゃないんだとしたら、狙われる可能性があるのはただ一人だ。


「サイラーか。お前ら、アイツの仲間だってのか」

「仲間……一応、今は仲間ってことになるかな」

「クソっ、あの女やりやがったな」

「もしかしてお前ら、最初からガーネット狙いだったりすんの?」

「だったらなんだ。お前らが俺たちを強襲したことには変わりねえだろ」


 男が右手を上げた瞬間、数え切れないほどの銃弾が飛んできた。


 いくら紋章の力を使っていてもこの数を避けきるのは難しい。かといって魔法をつかって障壁を張っても防げるかわからない。


 が、ここでもやはり銃弾がゆっくりと飛んでくる。どうしようかと考える時間があるくらいだ。


「これがガーネットの力か。すごいな」


 時間がゆっくりに感じるのか思考能力の加速かはわからないが、なにをするにもかなり有用な代物だ。銃弾を一発一発丁寧に避けることもできる。


 問題なのは「思考が早くなっている」だけということ。少し早めに動かないといけないのだ。


 しかし他の紋章の効果もあってやや体が重いくらいで済んだ。

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