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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
1話 奴隷が幼女だったら受け入れたかもしれません
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 俺たちはヴァルのあとを追って洞窟の中を早足で歩いた。


 たくさんの窪み。窪みの中には白骨死体なんかもあるみたいだ。


 そういえば白骨死体がなんで見えるんだろうと思った。肩の斜め上くらいに光の玉が浮いていた。気遣いウーマンだったか。年の甲より亀の頭ってやつだな。


「遅い」

「お前が速いんだ。そのドアは?」

「ナイフの持ち主はこの先。中から声が聞こえる。でも、どんなことがあっても冷静でいられるように努めてちょうだい」

「冷静でってどういう――」


 それは近付いていく過程ですぐにわかった。くぐもった女の喘ぎ声と、汚らしい男の笑い声だった。


 頭痛がやってきた。思い出していく。俺はこの状況を一度経験していた。そしてまた同じことをやろうとしている。

「悪いなヴァル」

「ちょっとエイジ!」


 ドアを思い切り開け放った。


 動物臭さ、すえた匂い、吐き気を催すような熱気。その中で、六人の男がこちらを見ていた。シャツだけを着た男たちが、全裸の女たちに覆いかぶさっていた。裸の女はそのへんにもいる。寝ていたり、座っていたり。でも生きているかどうかの判断がつかなかった。皆、うつろな目をしていたからだ。その全てが、俺の頭を真っ白にしていった。


 左胸に手を当てる。意識を集中させれば、トリガーは簡単に引かれるのだ。


「なんだお前ら!」


 そう言いながら、正面の男が立ち上がった。


「嗚呼」


 思い出したくなかったなと、そう思いながら正面の男に向かって跳躍した。


 男は危険を感じたのか、両腕を上げて防御の体勢を取る。だが俺にはそんなもの関係ない。飛び込んだ勢いを殺さず、腕の上から蹴りを一発くれてやった。


 まるで人形だな、と思った。たった一回蹴っただけなのに、男は壁まで吹き飛んだ。土がむき出しの壁にぶち当たり、白目になって落ちてきた。


「てめえやりやがったな!」


 男たちが構える。でも、やはり関係なかった。


 片っ端から殴りつけて、壁に押し込んでやる。それだけでよかった。


「動くな! この女がどうなってもいいのか!」


 一人の男が、女の首にナイフの刃を当てていた。女はまだ意識があるのか、恐怖に顔を歪めていた。


 涙が頬を伝い、顎に達して地面に落ちた。


「残念だなあ」


 そう言ったのはエレノアだった。いつの間にかナイフを持った男の背後に回っていた。


 だが彼女は剣を抜かなかった。腕を捻り上げ、コメカミを殴りつけた。男がのたうち回っていたが、腕をひねられたときに脱臼でもしたんだろう。


 男たちを全員倒したことを確認すると、途端に力が抜けていった。この能力の特性も少しわかった気がする。タイムリミットというか、気が抜けると能力が解けるんだ。


「おい!」


 振り向くと、ヴァルが眉間にシワを寄せていた。


「悪かったって思ってるよ。でも、我慢できなかった」

「話は後で聞く。今はこの子たちをどうにかしないとね。ちょっと待ってて」


 ヴァルは胸の谷間からなにかを取り出す。ガラケー、みたいだ。


「なんだよそれ」

「魔法通信機。ちょっとの間でいいから黙っててね。あ、トアちゃん? バルサとハバトの間の森にさ――」


 この世界にも携帯電話みたいなものがあるんだな。魔法のせいで文明の進化具合がよくわからない。


 下を向くと、汗がぽたぽたと落ちていった。こんなにも汗をかいていたのだと、そのとき初めて気がついた。


「戦えるじゃない。嘘だったの? 私に傭兵を頼んだのは、やっぱりただの同情だった?」


 エレノアが怪訝そうな顔でこちらを見ていた。見るからに不機嫌そうだった。


「正確には俺の力じゃない。ヴァルの力を借りたんだ。そうしなきゃ、俺は戦えない」

「逆を言えば借りれば戦えるんでしょ? じゃあ私はいらないと思うけど」

「どっちにせよもう奴隷になった。奴隷化を解くまで、俺と一緒にいてもらうぞ」

「別にいいよ。今よりいい暮らしができるってだけで儲けもの。とりあえず、そのへんにあるロープでコイツらを縛り上げる。手伝って」

「わかった」


 渡されたロープは冷たくて、握りしめるとザラザラしていた。


 下半身裸の男をロープで縛るのはまったく楽しくなかった。でも、全裸の女性に毛布をかけるのは、もっと楽しくなかった。


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