7
目を覚ますとベッドの上だった。熱が下がり頭痛が止んで、一日も経ってないというのにまたベッドの上か。
「あら、起きたのね」
「なんだ、お前一人か」
身体は痛むが動かせないというほどではない。上体を起こし、ベッドの縁に腰掛けた。
「あれからどうなった?」
「どうなったもこうなったも、運び屋を捕まえて、捕まってた少女たちを開放してそれで終わりよ」
「そうか、そりゃよかった」
「よかったって、アンタ本気で言ってるわけ?」
「お前らも見つけられたし、人身売買も止められた。運び屋の方も捕まえたとなりゃ、よかった以外に言葉がみつからんだろ」
「アンタさ、もっと自分の心配しなさいよ。私たちがいなかったら殺されててもおかしくなかったのよ?」
「今生きてる」
「結果論とかはいいの。それになんであんなとこにいたわけ? 私たちの帰りを待って寝てればよかったのに。お腹減っちゃった? それとも私の胸が恋しくなったの?」
「腹は減るかもしれんがお前の胸が恋しくなることはないから安心しろ」
「それはどうでもいいから。で、なんであんな場所にいたの」
どうやって言おうか迷うところではあったが、ここは正直に話した方がいいだろう。
「起きたらお前らがいなかった」
「そりゃ外出てたからね」
「もう夕方だったし、なにかあったのかと思って探しにいった」
「病み上がりなのに?」
「病気ってほどじゃない。ちょっと熱が出ただけだ。それに船酔いのこともあったしな」
「よく頭痛だって頭抱えてるくせにちょっと具合いがよくなったからって普通出歩く? いや出歩かないわよね?」
「それでも心配するだろ。何時間も帰ってきてないんだから」
「アンタが? 私を?」
「いやお前じゃないが」
「そこは嘘でも頷きなさいよ」
「まあ正確にはお前だけじゃなく全員を心配してた」
「じゃああながち間違ってもいないわけね」
「三分の一合ってるとだけ言っておこう」
「素直じゃないわね」
「すごく素直だけどな」
どうしてコイツとのやり取りはこんなに疲れるのか。
「逆に訊くが、お前らどうして帰ってこなかったんだ?」
「別に帰りたくなくて帰らなかったわけじゃないのよ。ちょっと、ね。いろいろと面倒事に巻き込まれたというか」
「買い物に出ただけで面倒事に巻き込まれるのか? どういう体質なんだよ」
「まあまあ聞きなさい。私たちがどれだけの面倒に巻き込まれたのか」
「いやー、話長くなりそうなんで結構です」
「あれは数時間前のこと」
「あーあー勝手に喋り始めちゃったよ……」
こうして、俺はヴァルの話を聞くことになった。




