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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
5話 簡単に終わってはいけない冒険がここにある
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 酒屋について中に入った。不法侵入だが二回目だしまあいいだろ。いやよくはないんだけれども。


「やはりか」


 ルナは室内を見渡してそう言った。誰もいなかったのだ。


「不穏すぎる」

「この家は生活臭がする。埃は溜まっているが、物が動かされた様子があるな」

「酒屋の主人が死んだあとに誰かが使っていた……?」

「それだけではない。最近この辺で人さらいが起こっている。おそらくだが、ここは人さらいの根城だったのだろう」


 指を立て、ルナが言った。


「じゃあもしかしてヴァルたちも人さらいに? いやいやないでしょ。ヴァルは魔女だし、ノアは腕の立つ剣士だ。キャロルはまあただの幼女かもしれんが」

「しかしヴァレリアは弱くなったんだろう? それにこうも家屋が多くては、自慢の魔法も好き勝手に使えないはずだ」

「んー、まあアイツ以外と周り見てるしな」


 自分勝手に見えるが割と小心者でちゃんと周囲のことを観察しながら行動している。町の中で魔法を使わなかったと言われても納得してしまうのだ。


「でもそれがわかったところでこれからどうするんだ? 特に手がかりになりそうなものもないぞ」

「手がかりならある」


 ルナはまたしても人差し指を立てた。この仕草、ちょっとだけイラッとするな。


「この酒屋を根城に選んだ理由だ」

「なんか理由があるとでも?」


 ルナは家の中をずんずんと進んでいく。そして、勝手口から外に出た。


 酒屋の勝手口からは、町に面した森に繋がっていた。


「元々ここの主人は勝手口から森を通り、山に山菜を取りにいっていたはずだ。となれば、人さらいが向かったのは森の中しかあるまい」


 僅かに甘い匂いがする。どこかで嗅いだことがある匂いだ。


「ヴァルの匂いか……?」

「こわっ。匂いで人判断するのは正直引くぞ」

「アイツの香水の匂いがするだけだから」


 となると、この先にアイツらがいる可能性が非常に高いな。


「行くか」

「それしかないだろうな」


 勝手口から飛び出し、俺たち二人は森の中へと入っていった。


 日が沈み、頼れる明かりはルナが出すライトボールだけになった。がむしゃらに森を駆けずり回っていてもアイツらにはたどり着けないかもしれない。しかし今はそうするしか方法がないのだ。


 いや待てよ。もしかしてアレが使えるかもしれない。


「どうした、立ち止まって」


 ルナが前方で振り返っていた。


「話したろ。主従の契約をすると身体にアザができる。もしかしたらこれが使えるんじゃないかと思ってな」


 左胸、ヴァルの紋章に手を当てて魔力を込める。前回のように魔力が湧き上がってこないので、この能力は奴隷が近くにいないと発動しないんだろう。しかし、一本の糸のように、感覚的に繋がるようななにかがあった。


「こっちだ」


 ルナを置き去りにするように、森の中を駆け出した。いや、置き去りにできるほどの脚力がなかったのですぐに追いつかれてしまった。魔法ってやっぱり卑怯だな。


 徐々に森の中で明かりが見えてきた。ゆらゆらと揺れる松明の炎。いや焚き火の光だろうか。


 近づき、身を隠す。


「野盗か?」

「みたいだな。あの馬車から生体反応がいくつもある」

「そんなことまでわかるのかよ」

「私はヴァレリアと違うからな。探索とか解呪とかがメインだ。これくらいできなくてどうする」

「便利だな。ヴァルの代わりに欲しい」

「アレはアレでとんでもない魔女だ。私とは比べ物にならんくらいにな」

「ずいぶんと友好的だな」

「まあいろいろあったからな。それはそうと、アイツらが動くみたいだぞ」


 連中は焚き火を消し、ライトボールを出して馬車を動かし始めた。朝までにこの森を出てどこかに行こうって腹だろう。


「どうする」

「十分歩かせる。そしたら私がライトボールを無理矢理消すから、お前は野盗たちを倒せばいい」

「ライトボール消すだけの作業は簡単すぎない?」

「ちゃんとサポートしてやるから安心しろ。ではいくぞ」


 俺たちは野盗のあとを追い、暗い森の中を進むことにした。


 野盗たちは非常に静かで、僅かな話し声は聞こえるが無駄な雑談はしていないようだ。


「でもなんで十分待つんだ? あの場でさっさとやっちまっても良かっただろ」

「動き出してすぐは気を張っている。それは少しずつ和らぎ、十分も経てば周囲に対しての警戒も緩むだろう」

「なんかそれっぽく言ってるけど特に確証はないのね」

「専門家じゃないからな」


 こういうところ、ちょっとだけヴァルに似てるような気がする。


 野盗のあとを追って森の中を歩く。ルナが言う通り、十分程度経ったところで荷馬車の車輪が転がる音に混じって雑談が聞こえてくるようになった。


「はー、本当に気が緩み始めたよ」

「それが人間というものだ」


 ドヤ顔がちょっとムカつくが頼れることは間違いなさそうだ。


「いくぞ」

「早い早い」


 そこまで巻きでやらんでもとは思うが、俺もアイツらが心配なので従うことにした。


 ルナが野盗のライトボールを消去。即座に俺が飛び出して近くにいた野郎どもをぶん殴る。騒がしくなるのも時間の問題だったが今はやれることをやるしかない。

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