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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
1話 奴隷が幼女だったら受け入れたかもしれません
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 地面は石畳。家は木材や石材を使って作られているようだ。人もそこそこ多く、皆笑顔だった。服装はいかにも中世ヨーロッパという感じで、女性はワンピースのような服装で、男性は大きめのシャツをベルトで無理矢理腰で締めている。


「まずは食料の調達。多少生っぽくても大丈夫よ。魔法の小袋は時間の進み方が遅いから」

「超便利じゃん」

「急に喋り方が頭悪そうになったわね。まあいいわ」


 歩き出そうとしたとき、一人の男性が俺たちの進行方向に現れた。息を切らし、顔は青ざめていた。


「ま、魔女さま!」

「トッドじゃない。そんなに急いでどうしたの? あーわかった、私を目の保養にしたくて急いでここまで来たんだ。可愛いんだから」


 可愛いって中年オヤジだぞ。いや、そんなこと言ったらヴァルはとんでもないことになるな。なんて言えばいいんだ。ババアかな。


「今失礼なこと考えた?」

「やっぱエスパーなんじゃない?」

「違う。で、トッドはどうして急いでたの?」

「魔女さまにお願いがあって来たんです」

「面倒なことじゃなきゃいいけど、お願いってなに?」

「町の若い娘が何人かいなくなったんです。昨日の夜まではいたんですが、どうやら今朝起きたらいなくなってたそうで……」

「何人いなくなったの?」

「わかってるだけで四人です」

「若い子だけってなると、事件性がありそうね」


 口調は冷静だが顔が冷静じゃない。なにかをとんでもなく憎んでいる顔だ。ミミズが張り付けられたような眉間のシワ。口は歪みきっていて奥歯を強く噛んでいるようだった。


「若い子、っていうフレーズにいちいち噛み付くのやめなよ」

「狙うなら私でしょ? 私みたいな美女でしょ?」

「シリアス展開にさせない気概は買うけど、男の半数以上は年下が好きなんだよ。諦めなって」

「つまり中には例外もいる!」

「つまり自分が例外だっていう自覚がある……?」

「あー! お前は私をイライラさせるの大好きだな! そのまま私のすべてを好きになってくれたら文句ないのにな!」

「勢いで告白するのやめてくれ。ヤケになるのはなんとなくわかるけどさ、年齢はどうすることもできないから。あとその胸の脂肪ね。好きな人もいれば嫌いな人もいるから」

「私のなにがいけないっていうのよ!」


 俺は彼女の肩に手を置いた。


「その年でそれがわからないから、ダメなんじゃないかな」


 彼女は無表情になり固まってしまった。もうちょっとオブラートに包んであげた方がよかったかもしれない。


「その年までわからなかったんだね。頑張って探してみようか」

「もうエイジとは喋らない! トッド! なにか手がかり!」

「は、はい。いなくなった娘の部屋に、これが……」


 トッドが一本のナイフを取り出した。


「これが落ちてたの? 落とし物にしては大きくない?」

「エイジはちょっと黙ってて」

「喋らないのでは?」


 睨まれたのでお口チャックだ。


「一番部屋が荒れてたんです。たぶん暴れたときに落ちたのかと」

「暴れたってことは、トッドは連れ去られたと思ってるのね?」

「それしか考えられないかと。部屋の窓は閉まっていましたが、鍵はかかっていませんでした」

「ナイフ借りるわね」


 ヴァルはナイフを受け取り、表を見て、裏を見て、引き抜いた。「ふむ」と言ってから刃をしまった。


「十中八九連れ去りだわ。このナイフはある組織のメンバーだけが持っている物よ。組織の名前はニーズヘッグ。クスリに人に武器に、いろんなものを秘密裏に売買してる組織ね」

「そんな組織があることを知っていて放っておいたわけだ。国も魔女も大したことねーんだなあ」


 お口チャックは二重にしないとダメかもしれない。


「犯罪は国が咎めてなんぼでしょ。私のせいじゃないから」

「はーい」

「まあ、なんだ。本当なら警察に言ってくれっていう感じなんだけど、今回は私がなんとかしましょう。今から追いかければ間に合うと思うし」

「あ、ありがとうございます!」

「この事件が終わったらしばらく家を離れるからね。しっかりしてね」

「大丈夫です。ありがとうございます……!」


 この女、頼られて悪い気はしてないな。まあ人間らしいといえば人間らしいか。

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