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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
1話 奴隷が幼女だったら受け入れたかもしれません
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 だが次の瞬間、ガラスが割れるようにして砕け散った。


「あー、そういう?」


 なんか一人で納得しているが、俺もなんとなく察した。たぶん奴隷化の魔法のせいで、ヴァルの魔法は俺には一切きかないのだ。


「さあどうする。俺が死ぬまで仕えるか、奴隷化の魔法を解くために働くか」

「お前はこの呪いを解いて欲しいわけ? 死ぬまで美女を好きなようにできる権利を放棄したいの?」

「しなを作るな。正直な話してもいいかな」

「ちょっとなによ、真剣な顔つきになっちゃって」

「俺さ、小さい子が好きなんだ」

「ロリコン……?」

「身長の話。あと胸部装甲も薄めな方がいい」

「ロリコンでは…………?」

「脚とか腕とかも細い方がいいし、顔も可愛い系の方が好みだ」

「ロリコンかな………………?」

「ロリコンではない。小さい子が好きなだけだ」

「価値観の違いってことで納得しておきましょう。深く突っ込むのは野暮な気がしてきた」

「そういうことで、異世界に召喚されたこと自体はどうしようもないが、年増と一生過ごすのは無理だ」

「告白したわけでもないのに振られた私の気持ちも察して欲しいかな」


 今にも泣き出しそうなヴァルだが、俺は今まで女性と付き合ったことがない。なのでこういうときなんて声をかけていいのかわからないのだ。例えば全部俺のせいだったとしてもだ。


「とにかく、奴隷化の魔法を解くために旅に出よう。異世界召喚といったら旅だ。テンプレは踏襲してこそのテンプレ。例えば最初の従者が五百歳のババアだったとしても、だ」

「ババアじゃないわ! 美女だわ! 身体は二十五歳のまま止まってるわ!」

「たぶん精神年齢は二十歳で止まってるな」

「カーッ! ムカつくガキだなホントに!」

「よし、旅に出よう。ちなみに解呪ができる人がいる場所ってここから遠い?

「会話が成立しない!」

「遠いの?」

「はい、遠いです」


 ちょっと睨みつけると敬語になるの面白いな。決定権が自分にないことをよくよく理解してるんだろう。


「どれくらい? ワープとかで行かれたりする?」

「ワープって、そんな魔法ないわよ」

「行ったことがある町とかに瞬間移動とかできないわけ?」

「無理よそんなの。開発まではまだ数百年かかる」

「異世界召喚とか無茶苦茶なことしてるクセにそれはできないんかい」

「あれは酒の勢いもあったし、今までいろいろ実験もしてきたから。たまにとんでもないモンスターとか召喚しちゃったりもしたけど、今回はちゃんとした人間でよかった。まあ良くはないけど」

「酒ってすげーんだな」

「本題に戻すけど、解呪師の名前はルナ=アルファ。ここから遠い場所に住んでるけど、ちょっと放浪癖があって自宅にはいないってことも多いわ。自宅で張っていれば帰ってくるだろうからいいけど」

「徒歩で行くの?」

「馬車を使ったり船を使ったり、まあいろいろ。それでも数週間はかかりそうね」

「自前で空飛んだりは?」

「私はできるけどお前はできないでしょうが」

「それはアンタが負担するに決まってるでしょ?」

「サラッとすごいこと言ったけど、めちゃくちゃ難しい上にめちゃくちゃ疲れるんだって。絶対無理。他人を飛ばすなんて一時間も保たないわよ。なにかを壊したりするのは実はすごく簡単で、物を傷つけずに飛ばしたりとかするのは何倍も難しいの。だからダメ」

「はーっ、つっかえ」

「今使えないとか思った?」

「思ったというか言ったね」

「そこは胸に留めておきなさいよ……」


 ヴァルがため息をつきながら立ち上がった。


「とりあえず、お前には部屋を与えるわ。この屋敷に戻って来ることがあるかもしれないからね」

「そうならないことを願っているが、ヒモになるなら必要かもしれないな。わかった」

「ヒモになんてさせないわよ。当たり前でしょ」

「でもここに戻ってくるってことは解呪できなかった場合じゃない? そうなるとヴァルは一生俺の奴隷なわけだから」

「もういい、行くわよ」

「うい」


 部屋から出ると、大きな窓が目に入った。廊下に張り巡らされた多くの窓は、屋敷というよりはお城という方が正しい。


 与えられた部屋はそれは広かった。ベッドもタンスもすでに用意されてる。タンスやクローゼットの中には服もある。用意がいいな。


「この服着てもいいのか?」

「いいわよ別に。元々は私が買ってあげた物だし、誰が着たって同じでしょ」


 耳を小指でほじりながら言うな。一気に年がバレるぞ。


「これ元彼のか。いいセンスしてる」

「高かったのよ、良いものばかり揃えてある。旅に出るための服とかもそこから見繕って。でも荷物は多すぎないようにね、かさばるから」

「魔法で収納とか」

「できるけど容量にも限界がある。荷物は最低限。わかった?」

「はーい」


 ごそごそと、タンスの中を探っていく。ズボンにシャツに下着にとベッドの上に放り投げていった。全体的に生地が厚くて丈夫そうだ。それでいて通気性が確保されている。


「元彼って冒険者的なアレだったりする?」

「そうね、俺は冒険者になって一旗上げるんだって言ってたわ」

「で、冒険にはでかけた?」

「一度も」


 あれだ、俺が考えたお話の方が面白いつって一生なにもしない小説家志望のアレ。。


「年齢は?」

「確か三十八だったかな」


 どうしてそんな男に引っかかってしまうのか。せめてまともに仕事してるやつにしろよ。


「なんか悪いこと訊いちゃったな。忘れてくれ」

「いいわよ、所詮一ヶ月しか付き合ってないし。んじゃ、今日は大人しくしてなさい。ルナをところに行くのは明日から。食事の時間になったら呼びに来るわ。なんか壊したりしないって約束するなら、屋敷の中は勝手に歩き回ってもらってもいいから」


 そう言って、彼女は部屋を出ていった。最後まで全裸に対してのツッコミはなかった。


 クローゼットの中にあったリュックに衣類を押し込み、入り切らなかった服を着てみることにした。


 黒いシャツ、黒いズボン、赤いジャケット。


「厨ニか!」


 俺のツッコミは、虚しく部屋に響いた。そんな、十七歳のある日の出来事。

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