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そう、一番カンタンで一番確実な方法がこれである。キャロルの紋章を使って巨大化、卵を物理的に破壊するというものだった。これで破壊できるからは知らないけれども。
「一気にいくぜ」
右足を上げると出てきたモンスターたちが上を向いた。目が合ったような気がする。
「悪いな、お前たちに出番はない」
そんなことを言いながら足を振り下ろした。
下の方でなにかがブチブチっと潰れる音がして、足を上げる前だが問題が解決したんだろうなとわかった。
「よし戻るか!」
雑だがこれでいい。簡単に済むならそれば一番だからだ。
帰る際にガーネットがこんなことを言っていた。
「それにしちゃモンスターが弱すぎる気がしないでもないな」と。
モンスターが跋扈する弱肉強食の大陸から来たにしてはたしかに弱いのだが、逆に弱いモンスターしか通過できなかったのかもしれない。
そんなことを考えながら宿に到着した。
「帰ったぞーっと」
ノアたちとは宿の前で別れたので今は一人だ。
部屋の中に入ったが、なんとも言えない静けさだけがあった。人の気配はある。ヴァルがベッドに寝ているのだ。
そーっと近づいてみると荒い吐息が聞こえてくる。それになんだかここだけ気温が高いような……。
額に手を当ててみる。
「なんでこんな……」
とんでもない高熱だ。
「おいどうしたってんだよ」
狼狽えそうになったが深呼吸で冷静さを取り戻す。とりあえず一階に降りてタオルを借りて冷水を用意した。その時に宿の主人に解熱剤ももらってきた。これでいつヴァルが起きても大丈夫だ。
タオルを冷水で浸してきつく絞る。それを額に乗せてから様子を見ることにした。
胸は浅く頻繁に上下して、熱く荒い呼吸を続けていた。
「どうしてこんなことになったんだ?」
なんて問いかけたところで返ってくる言葉はなかった。
ヴァルは時々眉間にシワを寄せて苦しそうにしていたが目覚める様子はなかった。熱が高い時は長時間眠れないため夜中に何度も目を覚ます。今のヴァルのようにうなされながらも眠り続けるというのはなんか異常があるんじゃないかと勘ぐってしまう。
起きたら聞きたいことが山ほどある。この体の主のこと、俺のこと、そして魔法のこと。もしかしたらそれ以外にも隠していることがあるのかもしれない。あまり疑いたくはないが、ここまで隠し事が多いと疑わざるを得ない。
「早く良くなれよな」
タオルをもう一度冷水で冷やした。そっと額に乗せて、そのままイスに座り直す。
しばらくすると眠気がやってきて、寝るな寝るなと考えていても睡魔に抗うことはできなった。
首がカクンとなったのを理解しながらも、俺は重いまぶたをそのままにした。
今日も頑張ったな。俺の割にはよくやったぞ。そんなことを考えながら、深く息を吐いてから眠りに落ちていった。




