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でも魔女が使えないもんをコイツらがなんとかできるとは到底思えない。
「っていうか気づかなかったの?」
なんてアイヴィーが呆れたように言った。
「なにがだよ」
「最初に私たちが出会った時のこと」
「ヴァルにとんでもない弾撃ち込んできた時のか」
「そうそう。あの時私たちがどうやってあなたたちの前から消えたのか、本当に忘れちゃった?」
「あの時は……」
正直ヴァルが撃たれたことで頭がいっぱいだった。そういえばあの時、ケネスとアイヴィーは地面に潜っていったような気がする。
「どうやってかは知らんが地面に埋まっていったような気がする」
「さて、私たちはあのあとどこに出たでしょうか」
「そんなの知らんが、あの場所から離れた場所なのか」
「じゃなきゃあんなことしないでしょう? つまり、あの段階で人を遠くに転送することができたってこと」
大魔女ができなくてアイヴィーがができるのか。いや、そんなわけがない。アイヴィーとヴァルの力関係が逆転してしまうからだ。
「つまり転送魔法はすでに存在してたってことか」
「ヴァレリアがどうして使わないのか、不思議には思ってたけどね」
また一つ隠し事が増えた、か。
「じゃあ空を飛んだりは?」
「できないことはないけどそれなりに魔力が必要だし適正もいるかな。って、なんで私は答えてるんだか」
アイヴィーはため息をついたあとで卵に触れた。
「まあそういうことだから、あとは楽しんでね」
なんて言ったあとで、また落ちるようにして地面の中へと消えていった。
そして、卵真ん中にスーッとキレイに亀裂が入る。その亀裂を中心にして卵が開いていき、中から光が漏れてきた。
「なんかヤバい予感がするんだけど」
ガーネットがそう言った。声が少しだけ上ずっているところからすると、いつも冷静な彼女からしてもヤバい状況なんだろう。
「このままだとまた来るぞ……」
「わかっちゃいるがな」
「どうするの、私たち三人じゃどうしようもないよ」
「俺が知るか」
と、言ったところで一つだけ方法を思いついた。たぶん小学生でも思いつくような方法で、割りと短絡的だが非常に効果的、だと思われる方法だ。
「一つだけだが、この方法ならなんとかなるかもしれん」
「なんだよ、あるんじゃないか」
「しかしまあ、なんだ。これをやるといろいろ弊害がある」
俺がそう言ったところでノアもガーネットも察したのか一瞬で顔が曇ってしまった。言いたいことはわかる。
「もうこれしかないんだよな、実際」
「それしかないかもな……」
「あとのことは流れに身を任せるしかないかもね」
「満場一致だな」
「あまりいいとはいえないけどな」
「うし、やるか」
両手で頬を叩いて気合を入れる。
「逃げるからあと二分待って」
「俺に言うな、モンスターに言え」
そんなやりとりをしているうちに卵からモンスターが顔を出す。大きいモンスターも小さいモンスターもまだ顔しか出ていない。
「もう我慢ならん、行くぞ」
「ちょっと、もう!」
急いで出口へと駆けていく二人。その後姿を見ながら紋章に手を当てた。
「まああの二人ならなんとかなるだろ」
そんななんとも言えない曖昧な信頼を寄せて魔力を込める。
次の瞬間、俺の体が光に包まれた。
「うおおおおおおおおおおおお!」
かなりの速度で巨大化し、やがて卵よりも大きくなり、洞窟を破壊し、山をぶち抜いた。




