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16

 それからモンスターが来ている方角へと足を向け、ものの数分でおかしな場所へとたどり着いた。


「なるほどここか」


 ガーネットはその場所、その先をしげしげと見つめていた。


 おかしな場所だとは思うが、場所としてはただの洞窟である。だが非常に良くない感じの魔力が流れてきている。入り口は大きめでモンスターが出てきても特に不思議ではない。今回は数が数だけに問題だが。


「確かにこのままだとマズイとは思うけど、どこをどうしたらいいのか……」


 ノアはノアで首をかしげてしまった。


 そりゃそうだ。良くないことはわかるけどなにをどうしたらいいかと言われると難しい。


「なんかよくわからないけど今はモンスターも止まってるみたいだな。それなら前進あるのみだろ」

「結局そうなるな」


 俺が一歩踏み出すと、ガーネット、ノアと続く。


 ガーネットが魔法を使って明かりを灯す。


「変なニオイがするな」

「あと生ぬるいんだけど……」

「時間制でドバーッとモンスター出てきても困るから一気に行くか」

「うえっ」


 ノアを気遣ってやりたいという気持ちはあるが、さすがにこの狭い場所でモンスターに囲まれると厄介だ。


「サクッと終わらしてサクッと帰ろう」

「サクッと終わればいいけどな」


 ここでもガーネットは笑っていた。


 俺たちは一気に速度を上げて洞窟の中を駆け抜けていく。嫌な空気、魔力の流れをたどりながら奥へ、奥へと進行していった。


 生ぬるく、ものすごい湿気だった。足を滑らせるということはなかったが、地面はじっとりと濡れているうようだった。


 そうして走り続けて、おそらく洞窟の最奥と思われる場所に到達した。


「なんだこれ……」


 そこには黄色く光る、大きな大きな卵のようなものがあった。


「デカいな」


 見上げるほどに大きかった。おそらく十メートルはあるだろう。


「卵みたいね」

「みんな考えることは一緒だな」


 近くに寄ってみると、この大きな卵から魔力が発せられているのがわかる。


 手のひらで触れてみると温かい。体温より少しばかり温かいかな、というくらいの温度だった。


「ちょっと、大丈夫なの?」

「割りと大丈夫っぽい」


 表面をなでているとボコボコしている部分があることに気がついた。切れ目のような感じで、かなり高い場所から地面まで一直線に線が伸びていた。


「なんだこれ、切れ目?」


 俺がそう言うと二人も寄ってきて観察し始めた。


「どう考えてもここが開いてモンスターが出てくる感じだろ?」

「じゃあ次にここが開いたらヤバいんじゃ?」

「だろうな。でも、気になることがある」

「むしろ気になることだらけなんだけどな」


 この卵はなんなのかとかその他諸々。


「この卵からどうやって大量のモンスターが出てくるかってことだよ」

「その質問には私が答えてあげる」


 上の方で声がした。聞き覚えがある声だった。


 卵から少し離れて、卵の上の方へと視線を向けた。


「お前かよ……」


 アイヴィー、ヴァルの元ストーカーだ。


「そう、私。で、なんだっけ? このゲートからどうやってモンスターで出てくるか、だっけ?」

「答えてくれんのか。親切だな」


 まあだからってこいつに対しての好感度が上がるわけじゃないが。


 彼女は軽やかに卵から降りてくると余裕そうに笑みを浮かべた。


「ん? ゲート?」

「そう、ゲート。これくらい大きな形状にしないと繋げるのが難しいのよ」

「繋げるってどこと?」

「この世の最果て、モンスターが跋扈する誰にも支配されない大陸」

「なるほど、ディアボロス大陸か」

「なんだよそれ。聞いたことないぞ」

「ヴァレリアは教えてくれなかったのか」

「まあ知るような機会もなかったからな」

「それじゃあ私が教えてあげる」

「お前ちょいちょい会話に割り込んでくるな」


 教えてくれるっつーならいいけれども、それでもなんかムカつくんだよな。


「北の最果てには黒く小さな大陸がある。大地も木々もみんな黒ずんでいて、凶悪なモンスターが蔓延る場所。人間は生きてはいかれない、そんな場所」

「人間は、ってことはお前ならなんとかなるのか?」

「なんとかならないことはないけどあそこにいる意味がないのよ。昼夜を問わずモンスターが襲ってくるし、食料は自分でなんとかしなきゃいけないし、お風呂もないし臭いし最悪な場所よ」

「そこのモンスターは強いのか?」

「当然」

「そんなモンスターをここに呼び込んだって?」

「そういうこと。すごく苦労しちゃった。いろんな魔法使いを使って理論を組み立てたりして」


 ヴァルも「非現実的な魔法は使えない」みたいなこと言ってたしな。それでも完成させたのか。

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