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 一通り話しを聞いたケインが不安そうに声を出した。


「お兄ちゃん、どこ?」


 心配になっても無理はない。お兄ちゃんはお兄ちゃんでケインのことばっかり心配していることだろう。兄弟愛ってやつだな。


「大丈夫だ。お前の兄ちゃんはすごいんだぞ、知らないのか?」


 俺がそう言うとケインは顔をしかめて「知ってるもん」と語調を強めた。


「なら信じてやれ」


 とは言ってみたがあれきりロウエンがどうなったのかわからない。ヴァルの話によればかなり強いらしいし、洞窟からは脱出したとは思うが……。


「キャロル、ケインのこと頼めるか?」

「ちょっとエージ」


 ガーネットが割り込んでこようとするが、それを右手で制した。


「うん、大丈夫」

「だよな」


 ケインに比べればずっと大人だし、キャロルは無茶をすることもないだろう。実は戦ったところをみたことがないので問題が起きた場合はわからん。


「とりあえず宿屋に行け。ヴァルとノアがいるはずだ。ヴァルは銃で撃たれて動けないだろうからノアの手伝いなんかしてくれ」

「わかった」


 それからキャロルはケインの手を引いて「行こ」と宿屋に向けて歩いていった。ケインは最後まで眉根を寄せたままだったがキャロルが上手くやってくれるだろう。


「で、私たちは?」

「この状況をまずなんとかしないといけないが、それは聖騎士連中に任せるか。俺たちはロウエンを探す」

「急に善行?」

「別にそういうわけじゃない」


 ケインの姿を見ていると放っておけない。騎士団長であるロウエンなら一人でなんとかするだろうが、それでも心配している家族を黙って見ているなんてできやしない。


 ズキッと、頭痛がやってきた。


「久しぶりだな、この感じ」

「なんか言った?」

「なにも。とりあえず二手に別れるか」


 町の中にはまだ野盗みたいなやつがいるかもしれない。が、あの程度ならガーネットも俺もなんとかなる。


「私は西側から大外回って戻ってくる」

「じゃあ俺は東側からだ」


 そうやって俺たち二人は動き出した。


 駆けている最中、襲われそうになっている住民を何人か助けた。あの野盗連中だ。


 そういえば軍部から追い出されたような野盗が増えてるとは言っていたが、まさかこれがそいつらじゃないだろうな。いや、たぶんそうなんだろうな。王都の体制を変えなきゃ、コイツらは行き場もないまま同じことを繰り返すかもしれない。


 と思っても俺がどうにかできる問題ではない。なぜならば野盗になった連中が軍部を追い出された理由はなんとなくわかるからだ。


「見た目、なんだろうなあ……」


 そう、聖騎士団をイケメンたちで固めたので、その煽りを食らった連中がいたことになる。そして俺の予想ではあるが、イケメンで固めることに反対した連中も追い出されただろう。


 頑張って騎士になって、勉強して訓練して。そうやって頑張ってもクソみたいな理由で追い出されたんだったら仕方ないな。なんとなくだが、それ以上の理由がありそうな気もするが……。


 そうしているうちに野盗が固まっているところに出くわしてしまった。その中心部でチラチラ見えるのはロウエンだ。必死に剣を振るっているが、疲労のせいか動きにキレがないように見える。


 加勢するために接近し、近くの野盗を思い切り蹴っ飛ばした。


「エージ!」

「悪いな、手柄横取りするみたいで」

「そんなことないさ。来てくれて感謝してる。どうしてか盗賊たちが押し寄せてきてまったく数が減らないんだ」


 二人で野盗をばったばったと倒していく。しかしロウエンが言うようにどんどんと敵が群がってくる。


「どうなってんだよ、お前なんかしたか?」

「知らないよ、ボクが訊きたいくらいだ」


 なんて話している間にも遠くに野盗が見える。中には銃を持っているやつまでいるじゃないか。


「おいおい、銃なんて聞いてないぞ」

「古いタイプのライフルみたいだ。でも威力はかなり高い」

「遠くから見てわかるのか? すごい目してんだな」

「銃は好きなんだ。本当は銃兵になりたかったんだけどね」


 コイツにはコイツの悩みがあるんだろうな。


 それにしてもコイツらの目はどうしてこんなに虚ろなんだろうか。誰かに操られてるような感じもするし、純粋に感情に身を任せてるふうにも見える。


 銃声がした。コイツら、仲間が射線上にいても関係なく売ってきやがる。危ないったらありゃしない。

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