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500歳からの異世界奴隷召喚~召喚されたと思ったら500歳の魔女が奴隷だった~  作者: 絢野悠
7話 べ、別に真実なんて知りたくなんてないんだからね!
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28

 あれから宿に戻って一夜を明かした。結局ヴァルは帰って来なかった。ヴァルがいないこと以外は特に変わったことはない。キャロルは眠ってるしガーネットは銃をいじってるし、ノアはベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。


「もう大丈夫か?」


 ノアに声をかけた。


「大丈夫。ママや兄さんとも落ち着いて話ができたしね。それよりも大丈夫なの? ヴァルが警察に連行されたなんて。主に警察の方が心配だけど」


 言いたいことはわかる。というかヴァルのことを知ってるヤツならみんなそう思うよな。俺もそうだ。


 しかしさすがのアイツも法には逆らうまい。


 コーヒーを飲みながら窓辺に立つ。ここから見える景色、主に穴ぼこの町を見ながら思わずため息をついてしまった。


「アイツももう終わりかもな」


 なんて言った瞬間にドアがぶち破られた。


「アイツって私のことかああん?!」


 ブチギレたヴァルが薄汚れた格好のまま飛び込んできた。


「なんだ、ちゃんと開放されたのか。それにしても汚れたな、いつも小綺麗にしてるのに」

「誰のせいでこうなったと思ってんだ?!」

「俺のせいでそうなったと思ってんのか? 基本的にお前のせいだからな? バカスカ魔法ぶっ放しやがって」

「百歩譲って私のせいだったとしても迎えに来てくれてもよくない?!」

「一歩譲っても百歩譲ってもお前のせいだよ」


 コイツ自分の非を認めないつもりかよ。とんでもない女だ。まあ知ってたけど。


「私は悪を裁いただけよ。裁きの魔女」

「裁きは司法でやってもらえ。お前がやることじゃない」


 町に穴ぼこあけるのが裁きだとしたらとんでもないことだ。法律も道徳もなにもなくなってしまう。


「っていうかお前どうやって出てきたんだよ。身元を引き受けてくれる人とかいないだろ。もしかして警察はテキトーに野放しにしたのか?」

「バカね。ちゃんとお金も払ったし、町を元通りにするし、女の子たちは新しい商売を始めるし、この町は活気づく」

「そんなうまい話ある? 留置場とかふっ飛ばしてない?」

「さすがに私もそこまでしないわよ」


 と言ったあとで「たぶん」なんて小さく付け加えていた。


「たぶんて……」

「大丈夫、本当に大丈夫だから。それにやらなきゃいけないことばっかりだから拘束されてるわけにもいかないのよ」

「やらなきゃいけないことって、もしかして女の子たちのことか?」

「よくわかってるじゃない。一応知り合いにほとんどのことは任せてあるからいいいんだけどね」

「知り合い……?」

「お金持ちの知り合い。いろいろな商売に手を出すのが好きな人だから私の話にも乗ってくれたわ」

「いつそんな話したんだよ。お前ずっと俺といただろ」

「いろんな商売してるって言ったでしょ。この町にもカフェを出店してて、今ちょうどそのカフェにいるのよ」

「ご都合主義か。嫌いじゃないけどやりすぎると嫌われるぞ」

「そういう時もあるじゃない。人それを偶然という」

「できすぎた偶然はただのズルじゃん……」

「まあそんなこんなで女の子たちを引き取った上でカフェを別の形で広げてくれないかなーっていったわけよ」

「右手には?」

「魔法弾」

「脅しでは?」

「力を見せつけたお願い」

「脅しって言うんですよそういうの」


 頭が痛くなる。なにが一番頭が痛いって、全部わかった上で言ってるしやってるのが一番頭痛い。


「まあでもちゃんと収拾つけたんだからいいじゃない」

「結局女の子たちはどうなるの?」

「給仕喫茶っていうの? を新しく始めるからそこに供給されるわ」


 つまりメイド喫茶ね。


「っていうかやめろ供給って言うな」

「若い子は給仕喫茶、年いってるのはセクシーバーでお酒を出してもらうわ」

「セクシーバーっていう名前が結構パンチあるな」


 たぶんだけどようするにキャバクラとスナックの中間か。


「ちょっとセクシーな格好してお酒出しておじさんたちとおしゃべりするだけだからセクシーバーよ」


 キャバクラだわ。


「この町にそれを作ると」

「この町だけじゃないわよ。この町に残りたい子は残って、この町から出たい子は別の町で働く。町は潤うし私は人助けができるし知り合いの懐は潤う。ウィンウィンウィンじゃない?」

「怪しい機械が動く音みたいでなんかヤダな……」


 特に女性の口から出ると一気に卑猥だ。


「とにかく今回の件はそれで終わりなのね」

「そういうこと。町長にも話は済んでるし警察も納得した上で私を開放したわけ」


 たぶんだけど警察署とかふっとばされたくなかったんだろうな。


「じゃああとはノアの家族の方を片付ければ終わりか」


 と、ノアの方を見た。目が合うと穏やかに微笑んだ。


「家族の方は大丈夫。全部終わったら戻るって話をつけたから」

「じゃあ俺たちについてくるってことでいいのか」

「ここまで来ておいて「はいさようなら」ってわけにもいかないでしょ? それに結局私だって呪われてるんだし、呪いを解くまで一緒にいた方がいいと思う」

「まあ呪いの影響がほとんどないとは言っても、呪いが解けるならそっちのがいいはずだからな。ってことは今までと変わらないってことか」

「そういうこと」


 そう言ったあとでノアはスッと立ち上がった。今まであった、憂いのような感じは払拭されたように見える。


 とにかく問題はすべて解決したわけだ。これからまた呪いを解くための旅に戻れるわけか。


「ノアの件も一応片付いたようだし、本来の目的に戻るとするか。次はどこの町に行くんだ?」

「そうね、ここからだと王都クローディアね。まあそこが本来の目的地であって、マーチャックに寄ったのはノアの要望だから」

「なんか、申し訳ないことしたな……」

「いやいいんだって。おいババア謝れノアがしぼんじゃってるだろ」

「本当のこと言っただけだもーん。私のせいじゃないもーん」

「マジで年だけとってきたババアだな。道徳ってもんが身に付いてない」

「ボコすぞ?」

「言い方が古いなあ」


 化粧が割れるくらい睨まれた。が、まあ一段落して本当によかった。


「てめえ呪いが解けたあと覚えとけよ……」


 あとで魔法でふっとばされないことを祈るだけだな、うん。


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