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おもいびと

作者: ミキティ

 もう10年近く前のはなし。

 今は結婚し、子宝にも恵まれ幸せな日々を送っている。

 端から見れば幸せなのかもしれないが、ふとした時に思い出す遠い日の恋の思い出が私の心を締め付ける。

 普通に恋愛をして、結婚した夫婦にはこんな気持ちは理解できないだろう。こんな私も旦那のために食事を作り、子どものために自分のことは二の次に主婦をしている。ただ、子どもが寝たあと、旦那が仕事に出たあと、一日のほんの少しの自分の時間...私はあの人のことを想う。

 そんな主婦が結構いるのではないだろうか。

 勝手な思い込みではあるが、もちろん想い合って結婚した人もいるだろう。中には2番目の人と結婚した人もいるだろうし、お見合い結婚のように互いを知らないまま結婚へ至った人もいるだろう。私は旦那をいい人だと思った。だから結婚した。ただ、私は今でも逢いたい人がいる。

 あの人との出逢いは職場の飲み会。

 既婚の上司が音頭をとり、独身男女を集めた飲み会。

 付き合いで参加した男女6人の中に彼と私は居た。

 彼は南の離島出身で、高身長。筋肉質で私のタイプの感じだった。

 ライオンみたいな、強さと優しさを併せ持った不思議な人。

 私の生活はすぐに彼一色になった。

 あの人はもうすぐ仕事を辞めて地元に帰るつもりでいた。

 私も25歳を間近にして、結婚を意識していた。彼とそのつもりだった。でも、あの人は違った。私じゃなかった。そして離ればなれになった。

 若かった私は、私といない時に何をしているのだろうとイチイチ気になった。それが彼にとっては負担だったのだろう。

 もちろん、理由はそれだけではないだろうが、今ならもっとうまくやれると思う。


 あの人と別れた時、私は全てがどうでもよくなった。

 生きているのかも分からないまま、時間だけが過ぎていく。

 色の無い世界を、流されるままに過ごした。

 嫌いだった夜の世界に飛び込み、人の金で酒を呑み、酒に溺れた。

 金で心を奪われながら、自分への嫌悪感や心の痛みで、苦しみで、生きてるって感じた。

 そうゆう中でしか生きてる実感が得られなかった。

 絶望の中で感じる痛み...それが生きてる証だった。

 結婚する前、私はもう一度あの人に会うことができた。

 幸せだった。彼に抱かれ、本当に幸せだった。

 でも、それっきり。

 互いに人生を歩んだと言えば聞こえはいいのだろうが、

 私は死んだままあの人に抱かれ、死んだまま再び別れたのだ。

 彼には私じゃなかった…。

 彼を傷つけてまで責めることも、彼が何かを犠牲にして私を求めることもなく、私達は再び何事もなかったように別れた。

 きっと私は死に際まで彼のことを想い続けるだろう。


 あの人には幸せでいて欲しいと思う。

 ライオンのように生きてるあなたは、

 私のような可哀想な人間をほっとけなかったのだと思う。

 可哀想な私を好きになってくれてありがとう。

 あの時、あなたの人生に存在できてよかった。

 娘にはそんな人と出逢って恋をしてほしい。



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