吾輩は美食家である
セシリアは、幾度となく繰り返し吾輩に相談するようになった。カバラ皇国の臣民達を地上の森に住まわせたいのだが、人間との争いになってしまうと・・・
そもそもこの地球は、誰のものでもないのに、人間は我が物顔で、誰の所有地だと決めるおかしさを吾輩は感じていた。
セシリアには、寝床など一番先に見付けたものに権利があるもので、もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えて善いくらいのものだが、誰も住んでいないのであれば、そこに先に住んでしまえばいいだけど助言してやった。
暫くすると、セシリアと満子は街へ買い物へ行き、わざわざ吾輩の大好物であるカリカリを購入してきたのである。フフに飽き飽きしていた吾輩には、これ以上ない土産であった。
早速満子がカリカリを皿に盛ると吾輩はペロリと食べつくし、おかわりをねだるが、満子はカリカリを棚へしまった。
その夜、満子が寝た事を確認してから、吾輩はカリカリ奪還作戦を実行した。
昼からずっと観察しカリカリを手にいれる方法を考えていたのである。
カリカリは、食器棚の中央部分の引き戸の中にある事は解っていた。
但し、食器棚の上に飛び乗っても届かず、吾輩の身の丈よりも高いので下からは手が届きそうにない。
あれこれ考えていると、不思議な事にこの時だけは後足二本で立つ事が出来た。何だか猫でないような感じがする。
猫であろうが、あるまいがこうなった日にゃあ構うものか、何でもカリカリを手に入れれば良いのである。
必死に前脚を伸ばし引き戸を引っ掛けると、僅かに開いた引き戸の奥にカリカリの袋が見えた。
吾輩は必死に前脚を伸ばし、カリカリの袋を渾身の力で引き寄せると・・・
バシャーン!
床一面にカリカリが散らばり、吾輩が床を舐めるように貪っていると、物音で起きた満子に激しく叱責された。
満子は、物指で尻ぺたをひどく叩き、かろうじて逃げ出すと追い廻して吾輩をを逆さにして迫害を加える。
吾輩専用のカリカリを食す事の何が悪いのであろうか?
今日のカリカリ事件だけではない、この間もちょっと赤い絨毯で爪を磨いだら、セシリアが非常に怒ってそれから容易に謁見の間には入れない。
吾輩は人間や亜人と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は我儘なものだと断言せざるを得ないようになった。
セシリアが満子と一緒に、暫く札幌に行ってる来るのでお留守番よろしくお願いします! と告げて出かけていった。
吾輩は、別に飯させ用意されていれば特段困る事はない。人肌が恋しければ従者やその辺を歩いている亜人の足元へすり寄れば、彼らは喜んで吾輩を抱きかかえる。
夜は、セシリアも満子もいないので一人で寝るのは少々寂しくはあるが、そんな事は高貴な吾輩から言う事は出来ないので、快く送り出してやったのである。
孤独な夜を何日か過ごすと、セシリアと満子が札幌から戻って来た。
戻ってくるとセシリアは、真っ先に吾輩の元で足を運び抱きかかえ胸に顔を埋める。
このセシリアと言う女は、本当に吾輩の胸が好きなようである。それが国家元首という重圧の癒しになるであろうと思い。吾輩は身を委ねてやったのである。
その夜はセシリアと一緒に寝てやったが、朝になるとセシリアは、吾輩に頼みごとをしてきた。
一緒に札幌へ行って、妾を助けて欲しいと・・・