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吾輩は支配者である


子供と母親は、吾輩に良く懐き


抱っこしろ!(ニャー)と足元で待っていれば抱きかかえ、吾輩の気持ち良いポイントも把握したようで、そこを重点的に撫でる。


皿の前で


飯!(ニャニャー)と叫べば、飯は出て来る。


吾輩専用のトイレが手入れ不十分な時は


トイレが汚い!(ニャーオ)と言えば、早速綺麗な砂に入れ替える。


完全に二人は、吾輩の支配下にある事は明白であった。


しかし、父親だけは、まだ落ちてない。


父親は、吾輩が近づくとくしゃみが止まらず、子供と母親のように吾輩の毛並みを楽しむ事も無い、これからゆっくり時間を掛けて、吾輩の支配下に置いてやろうなどと考えていた。



毎日、食っちゃ寝、食っちゃ寝の生活で、昼夜の区別も付かなくなっていた頃


寝ている吾輩を父親が抱きかかえたのである。


遂に父親も吾輩の支配下に落ちたと思い、少しだけ愛嬌を振りまいてやった。


父親は、笑顔を見せる事も無く吾輩を抱きかかえたまま、外へ出て車に乗ったのである。


吾輩を乱暴に助手席に放り投げると、車は非常な速力で動き始めた。


父親が動いているのか吾輩が動いているのか区別が付かず無暗に眼が廻る。


胸が悪くなり、吐き気も催し意識がもうろうとしていると、父親が吾輩を抱きかかえ



・・・どさりと音がして眼から火が出た・・・



それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。



・・・



どれくらいの時間が経ったのだろうか? 


ふと気が付いて見ると父親はいない。


何か様子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると体中が非常に痛い。吾輩は崖の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。


ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。


しばらくして泣いたら父親がまた迎に来てくれるかと考え付いた。


ニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。



そのうち池の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。腹が非常に減って来た。


泣きたくても声が出ない。仕方がない、何でもよいから食物のある所まであるこうと決心をしてそろりそろりと池を左りに廻り始めた。


どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに這って行くとようやくの事で何となく人間臭い所へ出た。


ここへ這入ったら、どうにかなると思って竹垣の崩れた穴から、もぐり込んだ。


もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに路傍に餓死したかも知れんのである。


忍び込んだもののこれから先どうして善いか分らない。そのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の猶予が出来なくなった。


仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く。今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。


ここで吾輩は、生涯の友となる満子と遭遇したのである。



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