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異世界殺菌をする町医者  作者: 虹色水晶
異世界から日本に戻れば斬新な小説。なぜ誰も書かないのだろう?
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幕前の物語6

 ロイは街の警備隊の詰所から戻ってきました。

 とりあえず町中に侵入した怪物を倒した旨を報告した事と、自分の店に怪我をした警備兵数名がいてその手当をしていることも告げました。

 まだ若い警備隊員はロイの言葉を訝し気に聞いていたが、奥から出てきた年配の部隊長はロイの顔を見るなり、


「あんたが倒してくれたのか!なら間違いないな」


 と言って安堵の表情を浮かべました。そして自分の店に戻ってきたのたのですが。


「なんで警備兵の連中は酒盛りしてるんだ?」


「痛み止め代わりにワインをお出ししました」


 腕や足に包帯を巻いた警備兵達は陽気に酒盛りをしています。

 そして、そんな賑やかな店の隅には布をかぶせられた『何か』があります。


「メルちゃんあれは?」


「デカい口叩いてた冒険者様ですよ。ああ。口は上半身ごと店の外へ飛んでいきましたからもう治療の必要はないですね。あまりお金も持っていなかったようですし。後で教会に送っておきますね」


「いや。どうせ生き返っても世の中の為にならん奴だろう。そのまま墓地に送ってやれ」


「わかりました」


「で、だな」


 ロイがいない間に、店に客が来ていたようです。

 冒険者風の若い男です。十代半ばといったところでしょうか。

 いえ。客と呼べるのかは疑問です。彼は脚を縄で結ばれ、天井から吊るされています。


「こいつはなんだい?」


「ロイさんが警備隊の詰所に行った後、お店に入ってきて、なんでもいいから食べさせてくれ。そういうからそこにあった『まずそうな』材料でサンドイッチを造ってお出ししたのですが」


「へぇ」


「で、全部平らげた後、お金を持っていないというのでとりあえずこうして吊るしてあります。警備兵さん達の酒盛りが済んだらお土産に詰所にお持ち帰りして頂こうかと」


 ロイはメルがサンドイッチに使った『まずそうな』材料というのを確認しました。


「・・・・メルちゃん」


「はい」


「これ。キャビアとフォアグラだよ」


「はい。なんか黒い腐ってそうなのと、灰色の脂肪の塊ですよね?」


「どっちも高級食材でな。軽く金貨100枚以上する。そいつを警備隊の詰所に持っていったらたぶん金額からして鞭百叩きじゃなくて、貼り付け火あぶりになるな」


「まぁそうなんですか」


 メルはあんまり深刻そうではない声で答えます。ロイは腕汲みしながらちょっと考え。


「おい兄ちゃんてめぇも仮にも冒険者だろ?」


「・・・そうなるんでしょうか?」


 自覚のない声で店の天井からぶら下げられた青年は返します。まるで切られる前のハムのようです。


「確実な死より、死ぬ可能性が高いが無罪放免になるチャンス。どっちがいい?」


「助けてくれるんですか?」


 ぶら下げられた青年は消え入りそうな声で問います。


「実はこのメルちゃんの故郷が得体の化け物に襲われてるらしくてなぁ・・・」


 ロイは紹介状を見せました。


「ここの村まで行ってちょっくら化け物退治をしてくるだけでいい。そいつでてめぇは安泰だ」


「・・・読めない」


 彼は言いました。


「なんでぇ、文盲か。・・・いや珍しくもねぇか。『知識は我ら選ばれし魔法学科生の特権』。それが連中の口癖だしなぁ」


 ロイは頭をかきました。


「しゃあねぇ。メルちゃん。こいつをカメリア村まで案内してやりな」


「はい。わかりました」


 メルは包丁をシュッ、と投げると、彼を吊るしていた縄が切れました。そしてメルは縄を引っ張って行きます。


「それではロイさん行ってきます」


「おぅ行ってきな」


『メルちゃんいってらっしゃぁいー』


 ロイと街の警備兵達に見送られ、メルはカメリア村に向かうのでした。

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