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異世界殺菌をする町医者  作者: 虹色水晶
異世界から日本に戻れば斬新な小説。なぜ誰も書かないのだろう?
31/31

虹の向こうへ

 巨大な虹色の本流。

 地面に空いた穴から伸びるそれは『ニホン』という国に繋がっているらしい。


「いいかお前達!ニホン人は百年近く戦争をしていない、平和ボケの民族だ!!だが油断はするな!!青い服を着た者はニホン人の魔導師で、手のひらから炎の魔法を出すらしい。特に気をつけるようにしろっ!!!」


『了解!!』


 隊長の号令にオルタナティヴナイツは応える。


「オルタナティヴナイツ。獣神レオニダス。首なし騎士マリー。ギルマンランサー隊。オーク。レッドキャップ」


 トヨヒサルスが報告をする。


「で、数は揃っているな?」


 マイルズが確認した。


「はい」


「穴の出口は賑やかな都だそうだ。そしてその街から」


 マイルズは自分の手にした絵を見た。


「この絵と同じ山が見えたらしい。まぁ間違いなく首都に繋がっているんだろう」


 シャレコウベの魔王はほくそ笑む。


「帝都でありますか?」


「ああ。首都にいきなり三十万の兵を送り込む。数日後に私が死者をアンデッドにする魔法をかけに行くからな。それまではキメラの製造でもしているよ」


 そう告げると魔王マイルズは自分の居城に戻る為、転移魔法を唱え始めた。


「数日後?死んですぐではないのですか?」


「死んだ直後に生き返らせたら止めを刺しにくるだろう?数日後、死体安置所に死体が溜まったころに魔法をかけるのだよ」


 なんて完璧で、一部の隙のない戦略なのだ。

 この計画に問題点は見られない。

 やはりこの御方こそ我らの頂点に立つお方。

 お仕え出来て本当に良かったと、トヨヒサルスは心底感じていた。


「こいつは異世界に通じる穴の向こうで手に入れたお宝の一つさ」


 いつもの酒場。いつものテーブル。

 ダークエルフは一振りの剣を皆に見せた。


「随分と細いロングソードございますね」


 メルはレイピアのような、でもロングソードのような、ちゃんと刃のついた剣を鞘から抜いてみた。


「で、その異世界ってのはどんなところだったのさ?」


 新米冒険者のエクセラはあくまで話を聞くだけだ。経験が足りない彼女は、ギルドからの依頼要求を満たしておらず、今回の異世界遠征に参加できない。


「そうだね。街並みや住んでる人間はこっちとあまり変わらないね。ただ建物は木製が多かったね」


「おっ?それ日本刀じゃないか。どうしたんだ?」


 メルの主。バルスが二階から降りてきた。


「これはバルス様がお開きになった異世界の穴の向こう側から持ち帰った品でございますよ」


 メルが説明する。


「で、こっちがその国の金貨」


 エクセラが数枚の楕円形の平べったい金貨を触る。


「なんだ。小判か」


「コバン?」


「江戸時代の貨幣だよ。そうか。あの穴の向こうは江戸時代の日本か。なら軍隊を送っても安心だな」


「そうなのでございますか?」


 メルはバルスに尋ねる。


「そうだよ。何しろ江戸時代には近代兵器がないからね。楽勝で勝てるさ」


「そいつはいい。帝都魔法大学名誉教授のお墨付きか。おまけに大魔王マイルズ様の強力な魔法が切り札がにあると来た。間違いなくこの戦争は勝てるね。前祝いだ。女将さん、この金貨で一杯お願いするよ!!」


 ダークエルフはそう言って、『元禄元年』と刻印された金貨を酒場の女将に投げた。

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