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異世界殺菌をする町医者  作者: 虹色水晶
異世界から日本に戻れば斬新な小説。なぜ誰も書かないのだろう?
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幕前の物語2

「それでお前さん結局何しにこの街に来たんだね?」


 ロイはなんとなく尋ねてみた。特に理由はなかった。


「ここから馬車で三日のカメリア村から参りました。冒険者さんにお仕事を依頼しようかと思いまして」


「カメリア村か。その気になれば徒歩で半日で行けないこともないな」


「え?できるんですか?」


 メイドは驚いたようだった。彼女は恐らく普通に馬車で来たのであろう。


「道のない山越えしたりして強引に近道すればできない事もないね。二十年前は。俺の若い頃はそういうやり方で荷物運びの仕事を一日に何件もこなして日銭デイリークエストを稼ぎまくって奴がいたなぁ。コースと運ぶ品によっては魔物討伐なんかよりよっぽど金になったそうだが」


 ロイは今でこそ酒場のマスターであるが、彼は二十年前は冒険者であった。彼は現役時代を懐かしむように言う。


「で、その依頼内容ってのは?」


「カメリア村が若者数人。森に伐採に出かけたそうです。すると一人が帰って来ませんでした。村人が探しに行くと森の中腹にある洞窟近くに斧が落ちていたそうです」


「その洞窟が怪しそうだが」


「十年ほど前、魔王マイルズを名乗る骸骨の魔術師がこの世界に現れた際にオークやゴブリンがこの地域でも盛んに暴れたのを村人たちが思い出しまして。たまたま村の宿屋にいた冒険者に行方不明者探しとゴブリン退治を兼ねて洞窟の調査を依頼したのですが」


「全員返ってこなかったんだな?」


 ロイはまるで冒険者であった頃、依頼人に聞くようにメイドに尋ねた。

 この場合のパターンである。最初の冒険者が依頼を成功させていたら彼女はロイの店には来ていないはずだ。


「その通りです」


 メイドは深くうなづいた。


「魔術師協会や帝都の警備隊は、動いてくれるわけないよなぁ」


「今のところ村の娘がさらわれただの、家畜が襲われただの、家屋に何らかの被害があったのだの、村そのもの実害がないので。警備隊は一人たりとも動かせないとのことです」


「魔術師協会はぁ」


「そっちは論外ですね」


「だよな」


 魔法学科。そして魔術師協会といった連中は自己の権益と己の保身しか頭にない連中だ。上等な酒を出せば心を許す貴族連中の方がまだマシと言えよう。


「ですから私がこれから冒険者ギルドに参りまして、正式なご依頼を・・・」


「クハハッハア!!話は聞かせてもらったぞっ!!!」


 突如食堂内に響き渡る笑い声。

 振り返るとそこには両手を広げ、天井スレスレの位置に頭をつけるように浮遊する真っ白な全身タイツの男がいた。


「俺様は魔法学科の特別扱い生サマーオニー!!」


「サマーオニー様でございますか?」


「くらえ!素因数分解魔法!!!」


「ぐああああああああ!!!!!」


 何の脈絡もなく右腕を突き出すと、サマーオニーの右手から発射された光線により酒場のマスターロイは塵となった。


「そして究極再生魔法!!!」


 そして今度は左腕を突き出す。再び光線が発射され、塵に当たった。


「!!!!!ああああぐ・・・あれ?」


 塵は酒場のマスターロイになった。


「まぁ。面白い手品ですね」


 メイドは両手を合わせて喜んだ。


「手品ではない!!このサマーオニーは魔法学科でも一億万光年に一度の才能の持ち主。この俺にかかればゴブリンが一兆万匹いようとも物の数ではない!!!」


「もしかしてサマーオニー様は御依頼を引き受けてくださいますのですね?」


「無論だ!どんな相手だろうとこのサマーオニーに適う者などいない!!!」


「では自分より弱そうな相手をいたぶるのが趣味そうで、やたら目立ちたがりそうな魔法学科の特別扱い性のサマーオニー様。さっそく」


 メイドはサマーオニーと名乗る魔法学科の特別扱い生と共に店から出て行った。

 それから三日後。再びサウザンドスレイヤーロイの店。


「いらっしゃ・・・おやあんたは」


 訪れたのは先日のメイドだった。


「どうだったい?あのやたら派手な目立ちたがりそうな魔法学科のなんちゃらさんは?無事に洞窟の化け物を退治できたのか?」


 ロイは尋ねた。


「洞窟に入ったきり戻って来ませんでした」


 メイドは答える。


「フフウフ。特別扱い生はやられたようだな。所詮我ら魔法学科の中でも最弱・・・」


 メイドの背後から男が現れた。


「あんたは?」


 ロイは尋ねる。


「死ね!」

「うぐっ!!」


 酒場のマスターロイは突然胸のあたりを押さえ、その場に倒れた。


「俺は思っただけで相手を即死させることができる能力の持ち主。つまり俺こそが魔法学科で最強」


 メイドは酒場のマスターロイ、つまりなんの罪のない一般市民に駆け寄ると少し考え。


「まぁ、この人ならいいですか」


 と、その口にキスをした。


「ご、ごほごほ!!」


 酒場のマスターロイは再び心臓が動き出し、呼吸をし出す。


「な、確かに俺の即死魔法でそいつを殺したはずなのにっ!!」


「死んだ直後に蘇生魔法をかけました。鮮度がよくて五体満足なので凄く簡単にできました」


 メイドは教えてやった。


「ならば次は貴様を」


「あ、カメリア村の洞窟に出る怪物を倒してくださるんですよね?道案内しますので頑張って下さい」


 即死魔法が使える魔法学科の生徒はサウザンドスレイヤーロイの店から出て行った。

 二日後、メイドは戻ってきた。


「今回もダメだったのか?」


「はい」


「くくく。即死魔法のやつはやられたようだな・・・」


 再びメイドの背後から男が現れる。


「俺は金色の賢者の息子弟子のチョニーク・ニュート!!」


「では道案内しますのでカメリア村までついてきてください」


「まて、その前に俺の能力を」


「貴方達が強いのは知っています。ですが一般市民を自分の力を顕示する目的で無意味に巻き添えにするのはやめてください。さぁ早く」


 金色のなんちゃらはメイドに押されるように出て行った。

 一日後。


「今回もダメだったんだな?」


「はい」


 一人で戻って来たメイドはロイに結果を報告した。

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