こいつらいつも異世界に来てんな
知っていてやっている描写多数。
魔王が骸骨で携帯電話持っているのもそのせいです。
「十年前の事だ。私は数百年以上続く人間共との戦争、千年戦争と言われているが実際千年続いてるかどうか知らんし、何がきっかけで始まったかは問題ではない。我々が勝つことが重要なのだ」
二百歳の若輩者の純粋魔族であるトヨヒサルスは、目の前にいる骸骨剣士に語り始めた。
骸骨剣士の年齢は、二分。
造ったばかりなので。
「最初は正直失敗したと思った。ただの動く白骨死体。スケルトンを召喚してしまったと思ったからな。お前のように立派な鎧を身に着けていなければ腰に剣を帯びてもいない。ただ、右手に収まるサイズの時折ピカピカ光る板を持っていた。なんの魔力も感じられなかった。だから失敗したと思ったよ」
「そのスケルトンをどうなされたのですか?」
「いや。そ光る板切れ自体は魔力はなかったのだが、スケルトン本人は私と同等、或いはそれ以上の魔力の持ち主だったのだ。そして異世界からの数多くの叡智をもたらしてくれた」
「叡智?それはどのような?」
「肉の両面焼きよりワンランク上の調理法。ブラジャー、ビキニ、点字、脱穀機、避雷針、水銀温度計、振子、バネ、スパナ、レンチ、コンパス、サッカー、野球、数字のゼロの概念、マヨネーズ、ノーフォーク法、フライドポテト。二本足で立って歩く術。家の建て方。計算を両手の指を使わずにする仕方。テーブルと椅子。紙とペン。民主主義。貴族の娘がやたらとガバガバ飲む紅茶。城や館にやたらとある窓ガラス。同じく城や館に無駄にたくさんある陶磁器の壺類。トウモロコシ。ジャガイモ。人間共の国より先次て食用化されたトマト。米。アルファベット。これらはすべて偉大なる魔王マイルズ様がこの世界にもたらしたものなのだ」
骸骨剣士は少し首をかしげ。
「なんか列挙されたものの中にだいぶ、というかほぼすべて疑問符を抱かざる負えない物が含まれているのは気のせいでしょうか?」
だがその骸骨剣士の問いに、トヨヒサルスは答える。
「何を馬鹿な事を言っているんだっ!!」
顔に幾重にも濃ゆいシワを刻み、涙を流しながらトヨヒサルスは吠える。
「自らを神と驕る魔法学科の特待生の野望を食い止めたのも、人間共が繰り出した核爆発魔法を絶える古代超文明の兵器を破壊できたのも、別世界からの侵略者を防ぐことをできたのも、」
「できたのも?」
「全部ツキシマ様のおかげじゃないかーーーーっ!!!!」
まるで親友は幼馴染同士で結婚し、別の一人は開業医となり、自分だけ世界チャンピオンのボクサーとなって遠い所に言ったような男の声で彼はそう叫んだのだった。




