シラト様のご神託
シラト様の話によると、どうやら自分よりも随分と力が強い悪霊を運良く浄霊できたことで、かなりの負荷がかかったのか俺の霊力はそれまでよりもぐっと増えているらしい。
こんな風に急に霊力が増えるた場合、体の方に負担がかからないように体が無意識にリミッターをかけることがあるそうで、俺は今まさにその状態なんだという。
「そんな感じはしないわけ? 力が漲ってくる!とか」
「ぜんぜん。むしろこれまで霊力をうまくコントロールできなかったのが、お守り貰ったあたりからだいぶ前みたいに自分で調節できるようになってきたかな、って思ったくらいで」
聡の疑問に答えていたら、コタカ様がさもありなん、という体で頷いた。
「自らの霊力を制御できぬありさまで格段に増えた霊力を放つなど、害悪しか呼ばぬ。体が抑制してくれたことに感謝すべきであろうな」
確かに。俺は深く頷いた。
そんな霊力垂れ流してたら、前に俺の部屋に現れていたような悪霊の格好の餌食だ。うまく霊力を扱えない状態のときに危険なことに遭遇しなくて本当に良かった。
「尊きお方のお力をここまで届けてくれた礼じゃ。雅人とさくらにとって修行になるようなところを教えてやろう」
「えっ、オレは? シラト様、オレ見えてる?」
間髪入れずにシラト様にツッコミを入れる聡。遠慮がない。でもなんかもうそれが面白くなってきた。自分の目の前で両手を振ってアピールする聡を見て、シラト様も袂で口元を覆って笑い出してしまった。
「すまぬな、だがおぬしには強い守りもついておる。意外にもしっかりと教えを受けているようでもあるしな、特に問題なかろう?」
「問題はないけど。なんか寂しいっていうか」
ちょっとだけ唇を尖らせた聡を見て、シラト様はまた楽しそうに微笑む。
「そうじゃな。おぬしには楽しませて貰ったゆえ、多少の導きは為してもよいか」
「ホントっすか!!!!」
「ああ、二言はない。妾の使いを頼まれてくれるか? 無事に成し遂げたあかつきには、よき品を与えようぞ」
「頑張ります!!!」
聡がかつてないやる気をみせた。この調子なら多分、結構な難題でもやり遂げるんじゃないだろうか。
「さて、それでは本題に入るとしようかの」
「はい、お願いします」
居住まいをただすと、俺の横でさくらもちゃきんとおすわりした。
さくらを挟んで隣に、聡も神妙な顔で並び立つ。
そんな俺たち見渡すと、シラト様がゆっくりと目を伏せる。その体がすうっと浮き上がり神々しい光がゆったりと辺りを包む。あきらかにさっきまでと雰囲気が違う。
その僅かに開いた目の中にある瞳は、何も映していないように澄んでいた。
新たなご神託を前にして思わず緊張してしまう。そんな俺たちに告げられたのは、なんとも思いがけない場所だった。