増えた……?
絹糸みたいに光沢のある銀髪に切れ長の目、瞳は濃くて深い赤。白い肌に白い狐耳っていう、ゲームにでも出てきそうなどうにもファンタジーな外見のコタカ様だったけど、それに九尾が加わればあまりの大迫力っぷりに見惚れるしかない。
扇みたいに広がって、細身の体の後ろで九本白い尾がゆらゆらと揺れる様は圧巻だった。ゆらゆらゆらゆら……見続けていると催眠術にでもかかってしまいそうだ。
「すげーーー!!!! マジでアガる!」
聡の声でやっと我にかえった。
カッコいい、カッコいいと目を煌めかせて大興奮の聡を見たら、不思議に落ち着く。コタカ様も全力で褒められて満更でもなさそうだし、少なくともさっきのピリついた雰囲気はなくなったからこれでいいんだろう。
聡のヤツ、相手が神様でもまったく構わずに自分のカラーでそのまま押し通していくとはある意味スゴイ。ちょっと羨ましく思いながら聡とコタカ様のやり取りを見ていたら、ふとさっきまで目の端にあった足元の茶色い姿が見えなくなっていることに気がついた。
あれ? そういえばさくらは?
さっきまで足元にいたのに、いつのまにか居ない。後ろを振り向いたら、さくらはまたシラト様にモフモフとモフられている。随分と気に入られたらしい。
慈愛の眼差しでさくらをモフるシラト様は優雅だけれどどこか可愛らしい。同じ白龍の龍神様でも、白龍神社の白龍様は威厳たっぷりでちょっと怖い男性的なイメージの神様だ。
そして初見ではちょっとクールそうでとっつきにくいイメージがあったコタカ様は、現状聡の誉め殺しで少し得意げになってるあたり、思いのほかチョロい……いや、素直な性格なんだろう。
神様にもこんなに様々な個性があるんだな。驚きもあるけれど、なんだか嬉しくもある。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、さくらと何やら話し込んでいたシラト様が急に俺の方を見て言った。
「さぁ、それでは道を示さねばな。雅人、さくら、近う寄れ」
えっ、俺?
急なご指名に動転する。
もちろん神様からのご指名に逆らう気なんて一切ない。俺はすぐさまシラト様に歩み寄った。
「さくらがな、雅人と話したい、強くなりたいと可愛らしい願をかけるゆえな、少し助けてやろうと思うての」
「あ、ありがとうございます!」
「雅人は霊力の制御が乱れていたと言っていたな」
「はい。白龍様からお守りを預かっていた間は落ち着いてたと思いますけど」
「うむ。あの守りを身につけていたことで、乱れは大方治まっておる。じゃが、せっかく増えた霊力をうまく引っ張りだすまでには至っておらぬようじゃ」
「増えた……?」
思いがけないシラト様の言葉に思わず聞き返す。いつのまにかさくらを抱っこして立ち上がっていた蘇芳さんが呆れ顔で言った。
「そんなのも分かんないのかぁ、人間は不便だね」