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蘇芳さんの昔の話

聡のくだけまくった話っぷりを心配してヒヤヒヤしていたら、なぜか足元にさくらが寄ってきて、俺の足をタシッと押した。



「? どうした、さくら」



何か言いたいことがあったみたいな顔なのに、さくらはハッとしたような顔をしてくるっと後ろを向くと蘇芳さんになにか訴えかけている。それを聞いた蘇芳さんは驚いた顔でこう叫んだ。



「えっ! お前人語ダメなの!? 二尾なのに!?」



なるほど……何か話したいことがあったのは間違いないんだな。蘇芳さんが通訳してくれるのかな? と思ったら、聡と話していたはずのシラト様がふわりとさくらの前に降り立った。



「おやまぁ、そんなにしょぼくれて可哀想に。話してみたいのか?」



シラト様の言葉に、さくらは首がおかしくなるんじゃないかと思うくらいブンブンと首を縦に振っている。そりゃあそうだろう。さくらと話が出来れば俺だって嬉しい。


まぁ、今だってさくらが嬉しいのか悲しいのかは分かるし、おおむね意思の疎通はできてると思う。ただ、さくらが伝えたいことがある時にさっきみたいにもどかしい思いをしてるのは知ってるから、さくらのためにもやっぱり話せるようになればいいと思うんだ。



「ふふふ、可愛いのう。蘇芳も社に来たばかりの頃はこのように素直であったなぁ」



シラト様は相好を崩してさくらの頭をいいこいいこ、と撫でまくっている。微笑ましい光景だなぁ。神様でもさくらのモフモフは楽しいのか、かがみこんでまでモフモフモフモフと感触を楽しんでいらっしゃる。



「ここまでガキじゃなかったですよ……」



情けない顔で言う蘇芳さんがちょっと可愛かった。



「しかし狐霊は位が上がる時に得る能力にも個体差があるのだな。蘇芳は二尾の時、人語を話せるようになっていたようだが」



のう、と顔を上げたシラト様に、コタカ様が苦い顔で頷く。ていうか蘇芳さんも狐霊なんだな。さくらみたいに霊力をあげていってこんな風に話せるようになったんだろうか。



「そうですね。話せるようになったのが嬉しくて、姿は狐のままなのに、草や木の影に隠れて人に話しかけるものだから何度叱ったかわかりません。この仔狐の方が聞き分けはよさそうです」


「何百年も前の話でしょう!」


「今も耳も尾も隠して完全に擬態しておるだろう。人への憧れが強いところは変わらぬな」


「すげー、蘇芳さんも狐霊なんだな。 ていうか何尾あるんすか?」



空気を読まない男、聡が切り込んだ。こいつの突破力、時々羨ましいわ。俺もそれ、ちょっと気になってたもんな。

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