たぶん神様。
神社に手を合わせて暫く、眩い光を感じて目を開けると、そこには予想もしなかった光景が現れていた。
信じられないほどの美男美女が対のように眼前で微笑んでいる。
あまりにも人間離れした美貌で、息をするのも忘れてただただ見入ってしまった。
どれくらいボンヤリ見惚れていたか分からない。でも、ようやく衝撃からさめてくると俺にもその二人をじっくりと観察する余裕がでてきた。
この眩すぎる後光。
これってやっぱりもしかして、ここの神様……御祭神様なんじゃないだろうか。白龍稲荷神社なんだから、神様が二人いたっておかしくない。
なんせ男の神様? には立派な狐耳がついているし、涼しげな切れ長の目元もいかにも狐っぽい。狩衣と袴はさっき案内してくれたヤツみたいに白いけど、なんか高級そうな文様が入っていて、位が高いんだろうなぁと窺わせた。いやまぁ、明らかに霊力の量も質もこの狐耳の人の方が格段に多いから、どう考えてもこの人の方が格上なんだけど。
そして、女性の方はさらに強力な神気を纏っていた。
優しげで穏やかそうではあるけれど、身に纏う神気は本物だ。まるで平安時代みたいに十二単のような装束に身を包んでいるけれど、なんでだか色が真っ白だった。十二単って極彩色だってイメージあったから不思議なんだけど、でも彼女の纏う神気がきらきらと虹色に光って衣の上で色を変えていくから、これはこれで華やかなんだけど。
うわぁ……いいもの見たなぁ。
気がつけば、俺の隣で聡も思いっきりバカ面で二人を凝視していた。気持ちは分かる。
「あのお方の尊き力を届けてくれたのだな、ありがとう人の子よ」
女神様がえもいわれぬ美しい笑顔でそんなことを言ってくれるから、俺は思わず赤面してしまった。いやもう、なんだろうこの美貌。この美声。仄かに漂う清々しい香り。しかもいちいちキラキラのエフェクト付きって綺麗が過ぎるって。
言葉が出なくて、俺はただ頷くことしか出来なかった。いや、マジでスゴいって。
「これ、蘇芳。この子らはあのお方の遣いの者ぞ。礼を失してはならぬ」
女神様の麗しさにまたも見惚れてしまっていたら、いきなり狐耳の神様が真顔でそんなことを言った。ぼんやりし過ぎて色々聞き逃していたのかも知れない。
流石に反省した。
白龍様のお使いで来てるって言うのに、神様が綺麗過ぎるからってぼんやりし過ぎるってどう考えてもダメだろう。俺は背筋を伸ばし、もはや力を感じなくなったお守りを握りしめてしっかりと顔を上げた。
「すみません、ご挨拶が遅れました!」
勢いよく頭を下げる。
まずは白龍様からの任務をしっかりとこなさないと。