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あたし、傍にいてもいいの?

「確かに可愛い仔狐ちゃんがいますね。ただこの子、どうやら貴方を守っているつもりのようですよ」


その言葉が、震えるくらい嬉しかった。


雅人おにーさんにカンヌシさんって呼ばれた人が、にこにこ笑ってあたしを撫でようとしてくれたの。もちろんすり抜けちゃったけど、それでもとっても嬉しかったし、誤解だって一生懸命訴えたのを雅人おにーさんに伝えてくれたのが、なにより幸せだった。



「これ、そこの野狐」



綺麗な白龍が威厳たっぷりにあたしに話しかける。さっきからヤコ、ヤコって呼ぶけどヤコってなあに? 誰かと間違えてるの?



「あたし、ヤコなんて名前じゃないよ」


「……野の狐、という意味だ。まだ狐霊と呼ぶのも憚られるほど霊力も弱いでな」


「……」



悔しいけど、あたしが弱っちいのは事実で。あたしは黙るしかなかった。



「ふむ、ちなみに名はあるのか?」



そう問われて、あたし、顎が外れるかと思ったの。だってあたし、自分の名前、覚えてなかった。



「ふむ、その様子では名はもはや失くしたのだな」


「ど、ど、ど、どーいう、事……?」


「体を失い霊となれば、個であった頃の記憶は徐々に失われるものだ。そうして自然に還るが理よ。お前ほど弱い狐霊では完全に個が失われるのもそう遠い事ではあるまい」



そ、そんな! あたし、いなくなっちゃうの?

もう、ママの事も忘れちゃうの?

雅人おにーさんも守れなくなっちゃうの?



「あ、あたしが弱いからいけないの? あたし、ママの事覚えていたい。あたし、雅人おにーさんも守りたいのに」



白龍は、答えてくれない。

あたしがいなくなったら、雅人おにーさんはあの黒いヤツにきっとイジワルされるに決まってるのに。



「ねぇ、あたしが弱いから?」


「そうだ。強くなりたいか」



なんて当たり前の事きくんだろう。

あたしは、体中に力を込めて吠えた。



「なりたい! それで雅人おにーさんが守れるんなら、あたし、強くなりたい!」


「ふむ、ではあの若造の部屋に巣食う悪しきモノは、お前が見事祓って見せよ。幸いアレはさほど力を増していない、お前ほど弱い狐霊でも時間をかければ祓えるであろう」



弱い弱いって煩いなぁ。でも、あたしでも時間かければあの黒いヤツ、やっつけられるって今言ったよね⁉

ねぇあたし、雅人おにーさんの傍にいてもいいの?



「あ、あたし、頑張る!」


「良かろう。……斎、善きにはからえ」



白龍が偉そうに言ったら、カンヌシさんは薄く首肯いた。


それからはあっと言う間に話が進んで、雅人おにーさんがびっくりしている隙にテキパキと説明を済ませたカンヌシさんは、あたしをちょっとだけ見て、よくわからないけど、なんだか合図をしてくれたの。



「この仔狐ちゃんがちゃんと貴方を守りますから、大丈夫ですよ」



あっ……あたしが雅人おにーさんを守るって、ちゃんと言ってくれた!嬉しくって、ついしっぽがゆらゆらしちゃう。



「ああ、姿が見えないのも不安でしょうから、貴方には見えるようにしておきましょうね」



えっ!

あたし、雅人おにーさんに姿が見えるようになるの?

本当⁉



信じられない気持ちだったけど、雅人おにーさんに姿が見せられるなら、こんなに嬉しい事ないもの。雅人おにーさんの肩から飛び降りて、目の前でお行儀よくお座りした。



ねぇ、見えてる?



雅人おにーさんと目が合って、嬉しさが込み上げる。

嬉しい……!凄く、凄く、嬉しい!



「貴方にとても感謝しているようです。貴方を全力で守ると息巻いていますからね、連れて帰ってあげてください」



カンヌシさんの言葉に、あたしは全力で首肯いた。


雅人おにーさん、あたし、頑張る!

全力で雅人おにーさんを守るよ。


だから、だから、傍にいたいの……!

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