表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/96

噛んだね?

「噛んだね?」



ぴたりと動きが止まって、そのヒトが振り返る。その真っ赤な目は、とてもとても冷たかった。


さっきまで面白そうに光ってたのに、今は暗くて冷たい感じがするの。


あたし、怒らせちゃった……?


体中が急に冷たくなっていく。まるで、あの大きな鉄のカタマリ……車っていうのに跳ね飛ばされて、体じゅうの血が抜けていったときみたい。



「野狐、離しな」



真っ赤な目が光る。空気が一気に重たくなって、怖くて怖くて仕方がない。でも、あたしはそのヒトの服を離すことができなかった。


だって離したら、雅人おにーさんのところに行っちゃう。


こんなに強いヤツ、絶対に雅人おにーさんに近づけたらダメなんだもん……!



「そんなに震えて、尻尾も立てられないくせに。離しなよ、今なら無礼も許してあげる」



ニタリ、とそのヒトが笑う。髪も服も顔も、ぜんぶが真っ白の中で、口と目だけが真っ赤で、すごくすごく怖いの。



「へぇ、これでも離さないか。面白いね、弱っちいくせに」



ジロジロとあたしを見る目は、完全に面白がってる。あたしを脅してるのもコイツにとっては遊びなのかも知れない。でも、いつ本気で怒り出すか、何を考えてるのか、ぜんぜん分かんないのが怖い。


お願いだから、雅人おにーさん達に近寄らないで。



「んー、飛びかかってくるわけでもないから好戦的ってこともないよねぇ。なんなの? お前」



そのヒトの意識があたしに集中する。怖いけど、それでいい。


ゆっくりとそのヒトがあたしに手を伸ばしてくる。でもその顔は、さっきまでとは違ってちょっと優しかった。



「ねえ、何したいのさ、お前。袂を破られるのは困るんだけど。離してくれない?」



急に猫なで声だしてきた! ふんわり頭まで撫でられたけど……でもだまされるもんか。あたしが服を離したら、雅人おにーさん達のところに行くつもりなんでしょ? 


そんなことさせない。雅人おにーさん達はあたしが守る!



「脅してもダメ、優しくしてもダメ、ってなんなのさ~。ねぇ、離してよ。袂がヨダレでベロベロになっちゃうじゃん」



なんでかそのヒトは困ったみたいにグチり始めた。そういえば、なんでこのヒトは力尽くでこないんだろう。このヒトが本気をだせば、あたしなんて一撃でしとめられるんじゃないかなぁ。


だって、それくらい強い力をビンビンに感じるもの。



「んー……あのお守りから、白龍様の力を感じるんだよねぇ。ねぇ野狐、お前、白龍様の使いなの?」



その言葉に、あたしはびっくりして顔をあげた。


もしかしてこのヒト、白龍さまのお友達なの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ