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え? 俺が飼うの?

「今の住まいには、どれくらいの期間……?」


「あ、あのまだ1ヶ月くらいで」


「良かった、まだ日が浅いんですね」



穏やかな笑顔の神主さんは、俺の驚愕を完全スルーで話を進めていく。


いや、あの、やっぱり仔狐の霊憑いてるんですよね?

そっちの話、放置?

守ってるつもりってどういう事⁉

俺の家、今関係ないよね?



色々と問い詰めたいけど、神主さんのあまりにも「風邪ひいちゃいましたね、お布団蹴っちゃいました?」みたいな普通すぎる対応に、こっちだけ慌てふためいてがっついたみたいに聞きかえすのも憚られて、よく分からないまま、神主さんに誘導されるままに会話を続ける俺。


これぞNoと言えない日本人……トホホだな、マジで。



「……」


「あの」



しかもこの神主さん、穏やかな笑顔のままで、若干の間を持ちつつこっちに話をふってくる。さっきの仔狐見えてます発言と相まって、見えざるモノと会話めされているんじゃないかとか、余計な妄想が膨らんで勝手に怖いんだけど。



「ああ、すみません」



にっこりと、人の良さそうな笑顔を見せる神主さん。



「貴方の部屋、元々悪霊が居たようですね」



その割に、放ってきたのはまあまあの爆弾発言だった。



「は⁉ 悪霊⁉」


「ええ、今の部屋に越してきてからずっと夜中に目が覚めていたのは、その悪霊の方の影響です。越してから、疲れが取れなかったり、体調が悪くなりがちになっていた筈ですが……違いますか?」


「……」



そうだけど……それは、眠りが浅いせいだと思っていた。



「この仔狐ちゃんは、貴方を守ろうと毎夜戦っていたみたいですね。怖がらせてしまった事に気がついて、さっきは随分としょんぼりしていましたよ」



何それ、可愛い……じゃなく!



「あ、あの。とりあえず眠れるようになりますか?」


「そうですね、夜中に暴れる音が聞こえると眠れないでしょうから、音は遮断しておきます」


「あ、お願いします」



……あれ? 部屋の悪霊、放置?

いや、確かに眠れればいいって言ったけどさ。



「この仔狐ちゃんがちゃんと貴方を守りますから、大丈夫ですよ。ああ、姿が見えないのも不安でしょうから、貴方には見えるようにしておきましょうね」


「えっ」



まさかと思う発言と同時に、俺の肩から何かがヒラリと舞い降りる。俺の目の前にお行儀よくお座りし、つぶらな瞳で見上げてきたのは、華奢な仔狐だった。


うわ、マジか。

これって神主さんの力なわけ?至極普通に、簡単にこんな事……実はこの人、凄い人なのか?


いや、ぶっちゃけ狐の見分けなんかつかないし、あのボロボロになった仔狐とこの可愛いのがおんなじ狐かどうかなんて分からないけどさ。



「可愛いでしょう」



うん、可愛い。



「貴方にとても感謝しているようです。貴方を全力で守ると息巻いていますからね、連れて帰ってあげてください」



連れて帰るって、え?俺が飼うの?



「え、あの、ペット不可なんですけど」



あまりの混乱に、俺の口から出てきたのはそんな間抜けな言葉だった。案の定「他の人には見えないから大丈夫」とか笑われるし。当たり前だよ、分かってるよちくしょう。



「仔狐ちゃんは貴方を守れて満足、貴方は眠れて満足、ですね」



神主さんに柔和な笑顔で頬笑まれ、思わず首肯いたけど。

あれ?これでいいのか?

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