すごい! すごい! すごい!
すごい! すごい! すごい!
ねえ、どうなってるの!? 池のお水が、真っ赤なの! しかもね、池なのにお風呂みたいに湯気がもわもわしてるのよ。なんなの、大きなお風呂なの!?
「これが血の池地獄か」
「本当に赤いんだな。すげーな、こんなにデカイ池なのに、全体赤いって凄くね?」
雅人おにーさんと聡はそんなこと言ってるけど、血の池なわけないじゃない。だって、血の匂いなんかこれっぽっちもしないもの。
するのは鉄みたいな匂いとか、卵の腐ったみたいな匂いとか、そんなのだけよ?
この街全体が不思議な匂いだけれど、ここに来てびっくりしちゃった。まさか池の水の色までヘンだなんて!
「お、足湯あるじゃん」
「靴脱ぐの面倒なんだけど。タオルとか持って来てねえし」
「そんな事もあろうかと!」
ジャーン!!! と自分で言って、聡は大っきめのバッグからタオルをさっと取り出した。
「二枚持ってきたし、一枚貸してやる」
「信じられない準備の良さだな」
「めっちゃ予習してきたからな! 街のあちこちに足湯や手湯があるんだってよ。しかも無料! さすが温泉の街だな」
「へえ、温泉に入らなくても、温泉気分が楽しめるんだな」
「そういうこと! ほら、入ろうぜ」
すごいなぁ、完全に聡のペースだ。でも、ちょっとアシユとかオンセンっていうのにも興味あるんだよね。だって、聡が『アシユ』って言った場所、たっくさんの人が足を出してお湯につけてるのよ。
すっごく気持ち良さそうな顔をしてるんだもの。
ここのお湯も赤いから、あの大きな池のお湯が入っているのかなぁ。ちょっと触ってみたかったから、なんだかわくわくしちゃう!
「お先!」
雅人おにーさんを待たずに、聡なんかさっさとアシユに入っちゃった。
雅人おにーさんと違ってね、聡はサンダルっていうの? 素足でさっと脱いだり履いたりできるような、簡単な靴を履いてるの。きっと、最初っからアシユにいっぱい入ろうって思ってたんだろうなぁ。
「しょーがねえな」
なんて言いながら、雅人おにーさんもついに靴と靴下を脱いで、『アシユ』に足を浸した。
「あれ? 気持ちいい……」
ほんと! ほんとね!
雅人おにーさんの体を通して、ジーンとあったかい気持ち良さが伝わってくるの。なんでかしら、おんなじお湯の筈なのに、おうちのお風呂と違う感じがするのってどうしてなんだろう。
「うわ、不思議。こんなにクソ暑いのに、足湯の熱さって意外と気持ちよく感じるもんなんだな」
「だな! 足湯って熱中症にも効果あるってなんかに書いてあったぜ。むしろちょうどいいじゃね?」
「出た、聡お得意の出所不明のテキトー情報」
「ホントだって!」
アシユってすごいのね。雅人おにーさんも楽しそうに笑ってる。雅人おにーさんが元気になるなら、アシユでもオンセンでも、好きなだけ入ればいいと思うの!
完全なる旅行回。。。