聡がいてくれて良かった
雅人おにーさんが、真剣な顔でお守りをみている。
そうよね、そのお守り、とっても不思議だよね。だって、白龍様のすっごく強い力が、このちっちゃなお守りの中にぎゅうぎゅうに詰まってる感じがするの。
なんだったらバクハツしそうなくらいに強い力よ?
そのせいなのかな、低級な霊は寄って来ることができなくて、あたし達を怖いものでも見るみたいな目で見ては、すごすごと向こうへ行っちゃうの。
逆にそこそこ強そうで白い霊はね、うっとりした目で見てきて、なんだか拝むようなそぶりをするのよ。やっぱり白龍様の力ってこうしてみるとすごいのね。
それにもうひとつ不思議なのが、このお守りを貰ってから、雅人おにーさんの霊力がなんだかとっても安定してるってこと。
あの線路沿いの魔物化した悪霊を浄化したあとから、雅人おにーさんの霊力は、とっても不安定だった。
たっくさんの霊力が体からダラダラとこぼれ出す時もあれば、逆に枯れちゃったの? っていうくらい、霊力を感じない時もある。
雅人おにーさんも、そんな風に霊力が安定しないのが気持ち悪いみたいで、よくため息ついてたの。
でもね!
このお守りを貰ってからは、前みたいに霊力がずっとおんなじ量あるの!
雅人おにーさんも最初は不思議そうにしてたけど、今はね、嬉しそうに霊力を前みたいに扱えるように練習してるの、あたし知ってるんだ。
だからね、本当は目的のお宮につくのがちょっとイヤなの。
だって、お宮についたらこのお守りの中の力は、きっとなくなっちゃうんでしょう? 白龍様、力を届けて欲しいって言ったんだもの。
このお守りの力がなくなっちゃったら、雅人おにーさんの霊力は、また不安定になっちゃうんじゃないの?
そう思うと、少しでも長くこのお守りの力と一緒にいたかった。
「雅人、メシ食ったらこの『地獄めぐり』っての行ってみよーぜ。んで明日、朝イチで目的の神社に行って、うみたまご? っていう水族館行って……」
「おまえ……本気で観光に重きおいてない?」
「ちゃんと目的の神社、朝イチって言ったよね!?」
馬鹿なことばっかり言ってる聡だけど、今日だけはその脳天気さがとってもありがたい。
その調子で雅人おにーさんを押し切って今日はとりあえずその『カンコウ』っていうので、色んなものを見に行っちゃおう? お宮に行くのが明日になるなら、今夜のお宿も不安じゃないもの。
『とりてん』っていうのもとっても美味しそうで楽しみだし、聡がいてくれて本当に良かった。