オレも行くー!!!!
カンヌシさんがそう言うから、あたしと雅人おにーさんは神社から帰る道すがら、そのまま百合香おばあちゃんに会いに行くことにした。
「やっぱ暑いなー。神社はそれなりに涼しかったのに」
汗だくでちょっぴりグチりながら、雅人おにーさんはゆっくりと歩いていく。時々ポタッって汗が落ちてくるから、本当に暑いんだと思うの。
でも、あたしは雅人おにーさんとお外を歩けるだけで嬉しい。
神社から出たら白龍様の圧もなくなって、身も心も綿毛みたいに軽くなる。
テクテクとのんびり歩く雅人おにーさんの足の動きがなんでか楽しくって、上がる方の足に飛びついてはまた次に上がる足にじゃれつくのを繰り返す。まるで、追いかけっこをしてるみたい。
「さくら、元気だなぁ」
苦笑いする雅人おにーさんの足とじゃれてるうちに、いつのまにか百合香おばあちゃんのお家に辿りついていた。
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「うわ、それめっちゃ楽しそうじゃん! 大分まで旅行とかワクワクしかない。オレも一緒に行く!」
「遊びに行くんじゃねーぞ」
百合香おばあちゃんは「白龍様のご指示なら」って、もちろん機嫌良く許してくれたんだけど、なんだか聡が急にわがまま言いだしたの。
ああもう、面倒くさい。聡のヤツ、全力で駄々こねてる!
「オレも行くー!!!!」
「子供か」
「まったくもう、お前はいくつなんだい? 確か大学の入学祝いも渡した筈だけどね」
雅人おにーさんと百合香おばあちゃんからそうやって呆れられても、全然気にしてないみたい。聡ったら絶対行く、絶対行くってきかないの。
「行くのは勝手だが、旅費なんざあたしは出さないからね」
「いらねーよ! ちゃんと貯金あるし!」
百合香おばあちゃんがうるさいなーって顔で言ったのに、聡ったらドヤ顔で言い返してきた。雅人おにーさんも百合香おばあちゃんも一瞬黙っちゃったから、よっぽど驚いたんだと思うの。
「え、なんでそんな驚いてんの?」
「いや、意外すぎたっていうか」
「お年玉貯金とか普通だろ。第一オレ、家から通学してるからバイト代もちゃんと……ちょっとだけ貯めてるっつうの」
「まさかの堅実タイプ」
「心外だな。オレはいつだって計画的で頼れるナイスガイだ」
だから旅行に連れて行けって力説する聡に、さすがに雅人おにーさんも百合香おばあちゃんも黙っちゃった。お互い顔を見合わせて、しょうがないねって笑う。
せっかく雅人おにーさんと二人旅だって思って嬉しかったのに、つまんないの。
ちょっと拗ねたくなったけど……でもあたし、気がついちゃったんだもん。雅人おにーさんのためには聡がいたほうがきっといい。
だってあたしは他の人には見えないから、なにか素敵なものを見つけても、一緒にはしゃいだりなんてできない。だからきっと、聡がいてくれた方が旅行だって楽しくなると思うの……。
そう考えて、あたしはちょっとだけ、悲しくなってしまった。