それで、今日はどうしたんですか?
「それで、今日はいったいどうしたんですか?」
神主さんがお茶を淹れながら、そんな風に自然に尋ねてくる。意外にも通されたのは神主さんのプライベートな自宅みたいで、神社の祭事やお祓いなどの受付も兼ねた部屋とは別のようだった。
いいのかな、ご自宅なんかにお邪魔して。
ちょっと落ち着かない気持ちも抱えながら、俺はとりあえず、質問に答えることにした。
「いや、とくに用はないんですけど。ここなら悪い霊もいなくて、涼しそうだなって思って」
「ああ、そうか……。なんだか無茶して、しばらく霊力が使えないらしいですね。だからかな?」
「えっ、そんなことまで知ってるんですか!?」
神主さんの思わぬ返しに、思わずうろたえてしまった。あからさまに目が泳いだ俺を見て、神主さんは愉快そうに笑う。
「ごめんごめん、この前ウメさんが来てね、ひとしきり愚痴っていくものだから」
しかも、愚痴られてたのか。
「百合香さんが過保護だってご立腹でね。あんなモン一カ月も大事に庇うこたぁないんだよ、少々危ない目にあわせながら鍛えた方がつぶしが利く、って力説してましたよ」
「あ、そっち……」
「ウメさんはスパルタですよねぇ。百合香さんとしちゃ、雅人君は大事なお孫さんの友人だし、大切に育ててあげたいんでしょう」
にこにこと微笑みながら、神主さんは俺にもわかりやすく説明してくれる。厳しく見えた百合香さんが、実は俺を丁寧に指導してくれていることが感じられて、俺には嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちがないまぜになった、複雑な感情が湧いて来る。
退屈だのなんだの言って、ふて腐れたりして、俺もまだまだガキだな。百合香さんの気遣いを無下にしないよう、しっかりと霊力を回復しよう。
そう決心した時だった。
「…………」
突然、神主さんの動きが止まる。虚空を見上げて真剣な顔で頷いているところを見るに、どうやら白龍様となにやら会話しているみたいだ。
これまでの流れで分かってるから別にいいけど、これ、いきなり見たらびっくりするよな。
「雅人くん」
「はい」
「白龍様が、なんとかできるかも知れないって仰っているけど」
「え? 何がですか?」
いきなりの急展開で意味が分からない。何をなんとかできるかも知れないって?
「いや、さくらちゃんがね、雅人くんの霊力コントロールが正常に戻るまでお出かけもろくにできない、なんとかできないのかって白龍様に訴えたようでね」
「さくら!?」
白龍様に直談判とか、さくら、すげーな!