おでかけ、嬉しい!
嬉しい! 嬉しい!
雅人おにーさんとおでかけなんて、本っっっっっっっ当~~~~に久しぶり!
そりゃあね、ダイガクにもバイトにも、ちゃんと行ったよ? 近所のスーパーにお買い物にだって行った。でもね、こんな風にただのんびりと歩くだなんて、本当に久しぶりなんだもの。
んもう嬉しくって、ついつい体のあちこちが跳ねちゃうよ。
「おー、さくらご機嫌だなー」
なんて雅人おにーさんは笑うけど、だって嬉しいんだからしょうがない。
だってね、前はよくおうちから近い河原で、のんびり寝転がったりもしたの。人間がたっくさんいて賑やかなところにも、美味しいものがたくさんあるところにも、お魚がたくさんいるところにも行ったし、コウエンやウミにだって行ったんだ。
お水がたっくさんで、おっきくって青くってキラキラで、変わった匂いがして面白かったし、スナハマはあちってなったけど、肉球にあたる感触がとっても楽しかった。
雅人おにーさんは「忙しい、忙しい」って言いながら、それでも色んなところに連れて行ってくれて、あたし本当に嬉しかったの。
だって、あたし、そんな色々な面白そうなものが見てみたくって、山からこの町に降りてきたんだもの。
それが、百合香おばあちゃんに叱られてから、雅人おにーさんはずっとおうちに籠りっきりで。
どうしても必要なことじゃないと出歩かなくなってしまった。
聡が一生懸命に説明してくれたから、お外にでるのが危ないっていう事はあたしだって分かってるよ。
でもね。
雅人おにーさん、寂しそうなんだもの。
ノミカイにも行けないって、この前めずらしくグチってたもの。
雅人おにーさんからダダ洩れな霊力のおかげで、あたし、大分強くなってると思うんだ。だから、ちょっとおでかけしたって、大丈夫だと思うの。
なんか出たら、あたしが倒せばいいんだもの。
見上げたら、おにーさんと目が合った。
「暑いな、さくら。足の裏大丈夫か?」
夏の終わりではあるけれど、今日は陽射しが強いもんね。アスファルトからゆらゆら湯気みたいなの出ちゃってるし。
でも大丈夫。
あたし、こんなのでヤケドしたりなんかしないから。
それよりも、雅人おにーさんは大丈夫? たっくさん汗、かいてるけど。心配で小首を傾げて見上げれば、雅人おにーさんは優しく微笑み返してくれた。
うん、大丈夫そう。
へんな霊に取り憑かれたりもしてないみたい。
なんか来たら、ぜったいにあたしが倒すから!
そう思ってお耳もしっぽもピーンと立てて、やる気をみなぎらせたあたしの前に、なんか見た覚えのある風景があらわれた。
あれ? まさかここって。
「お、気づいた?」
雅人おにーさんが面白そうに笑う。
「白龍神社。ここならさすがに変な霊に憑かれるってこともないだろ?」
そ、そうかも知れないけど……。あたし、雅人おにーさんと、もっとまったりしたかったなぁ……。